セカンドキャリアとは?企業が持つべき視点や人材戦略のポイント
人生100年時代を迎え、仕事に対する考え方が変化する中、セカンドキャリアが関心を集めています。企業としても、人材のセカンドキャリアは無視できないテーマです。サポートと採用の視点から、セカンドキャリアについて考えてみましょう。
セカンドキャリアの基礎知識
元々セカンドキャリアという言葉は、スポーツ選手の引退後の職業や、ビジネスマンの定年退職後の職業を指すものでした。近年はどのような意味で使われているのか、まずはセカンドキャリアの意味を解説します。
セカンドキャリアとは
現代ではセカンドキャリアを、「ビジョンに基づいたキャリアチェンジやキャリアアップ」の意味で使います。第二の人生における職業ともいえるでしょう。
かつては20~30代の転職を失敗と捉える向きもありましたが、現在はキャリアビジョンに基づいた転職ならセカンドキャリアとして肯定的に捉える傾向があります。
終身雇用制度は崩壊に向かっており、今後は人材の流動性がますます高まっていくでしょう。現代は企業が従業員のセカンドキャリア支援に取り組み、他社への転職をもサポートする時代なのです。
セカンドキャリアが注目される理由
セカンドキャリアに関心が集まる背景にあるのが、社会の多様化です。さまざまな考え方や価値観が受け入れられるようになっている中、転職が当たり前になりつつあります。
かつては最初に入社した企業で定年まで働くのが一般的でしたが、近年は自分らしいキャリアを追求する人が増え、人生を大きく変えるセカンドキャリアに注目が集まっているのです。
年代別セカンドキャリアの考え方
セカンドキャリアに対する考え方は、年代により異なります。セカンドキャリアの年代別の特徴を把握し、会社として人材戦略を講じる際の参考にしましょう。
30代のセカンドキャリア
30代は自分のキャリアパスを振り返る時期です。まだまだ先が長い人生において、今の仕事を続けて理想のキャリアビジョンを描いていけるのか、悩む人も多いでしょう。
目の前の仕事に精いっぱい取り組みながら駆け抜けた20代を過ぎ、30代ではある程度の余裕も生まれます。また、結婚や出産でライフスタイルが大きく変わりやすいことも30代の特徴です。
より自分に合った職業を求めて、思い切ったキャリアチェンジに挑戦する人も多く、新たなスキルを習得するケースも見られます。
40代のセカンドキャリア
40代になるとスキルの専門性が高まり、仕事の経験も豊富に積んでいる状態になっています。大きな方向転換を考えるというより、これまで得た知識やスキルを生かしたセカンドキャリアを考える人が多いでしょう。
子育てにお金がかかりやすい時期である点もポイントです。より多くの収入を得たいとの思いから、経験を生かした転職やキャリアアップも視野に入れるようになります。
ファーストキャリアのゴールが見えてくる人も多いほか、ワーク・ライフ・バランスの重要性を感じ始める時期でもあるため、中には新たな仕事に挑戦する人もいます。
50代のセカンドキャリア
50代におけるセカンドキャリアのポイントは、定年後を見据えた準備です。子育てが一段落して自分の時間を確保しやすくなる中、経済的・時間的なゆとりを生かすためのキャリアチェンジを考え始める人が多くなります。
ただし、50代での転職は簡単ではないのが実情です。今までの経験を生かし、独立して新たなキャリアを築こうとする人もいます。
また、50代は老後の生活設計や親の介護問題に直面しやすい時期でもあります。一定の収入を確保しつつ、より良い人生を進めるために無理のない働き方を模索する人も多いでしょう。
企業のセカンドキャリア支援とは
近年はさまざまな事情による人員整理を行う際の対策として、従業員のセカンドキャリア形成を支援する企業が増えています。制度の概要や具体例を見ていきましょう。
従業員のセカンドキャリア形成の支援制度
企業のセカンドキャリア支援とは、従業員のセカンドキャリア形成をサポートする制度です。退職後も従業員が活躍できるよう、在籍中にさまざまな支援を行います。
セカンドキャリア支援は早期退職や希望退職の募集とセットで行われるのが一般的です。「首切り」のイメージが強くならないよう、企業の従業員に対する最大限の配慮の1つとして、セカンドキャリア支援制度を設ける企業が増えています。
早期退職や希望退職との違い
従業員が自主的に退職できる制度が早期退職優遇制度です。常時募集を受け付けているケースが多く、退職金を割り増しで渡すなどの優遇措置が取られます。
また、希望退職者募集制度は一時的な人員整理として実施される制度です。自己都合退職となる早期退職と違い、希望退職は企業都合退職として扱われます。
早期退職と希望退職のいずれも、従業員の意思で退職を選択することに変わりはありません。これらの制度とセカンドキャリア支援をセットにし、従業員の第二の人生を企業がサポートします。
企業のセカンドキャリア支援の例
企業が独自に行うセカンドキャリア支援には、次のようなものがあります。
- スキルアップのための休暇に対する給与の支給
- 資格取得に必要な費用の一部補助
- キャリアステージごとの研修実施
- 退職準備休暇や短時間勤務の提供
また、国も企業や個人向けのさまざまなセカンドキャリア支援制度を設けています。
- 早期再就職支援等助成金
- 両立支援等助成金
- キャリア形成サポートセンター
出典:早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)|厚生労働省
出典:広報誌「厚生労働」2020年9月号 PICK UP|厚生労働省
セカンドキャリア人材を採用するメリット
企業は既存従業員のセカンドキャリア支援の視点だけでなく、セカンドキャリア人材を採用する視点も持ち合わせておく必要があるでしょう。企業側の採用メリットについて解説します。
人材不足の解消につながる
近年はどの業界も人手不足が深刻化しており、多くの企業が人材確保に向けたさまざまな取り組みを進めています。セカンドキャリア人材を採用すれば、人材不足の解消につながるでしょう。
企業の経験値不足を補えることもポイントです。経験を積んだ人材を雇い入れることで、即戦力としての活躍を期待できるほか、新卒採用や若手社員にかかる教育コストも削減できます。
イノベーション創出を図れる
セカンドキャリア人材の多くは、異なる業界や業種での経験がある人材です。自社で採用することで、今までとは違う視点からの価値観をもたらすため、イノベーション創出への貢献を期待できます。
既存従業員から新しいアイデアがなかなか生まれない企業や、現在の事業運営に停滞感を覚えている企業は、セカンドキャリア人材を積極的に採用するとよいでしょう。
また、セカンドキャリア人材の中には管理職経験者もいるため、チームリーダーとして活躍してもらうことも可能です。若手社員の精神的なよりどころになれれば、組織の活性化にも寄与するでしょう。
企業イメージが向上する
近年はダイバーシティを推進する企業の価値が向上する傾向があります。ダイバーシティの推進とは、人種・性別・年齢・価値観を問わず多様な人材を受け入れることです。
セカンドキャリア人材を積極的に採用する企業は、ダイバーシティ推進に取り組んでいるケースが多く、多様な人材が活躍できる企業としてイメージが向上しやすくなっています。
かつては給与や労働条件の良さを企業イメージにつなげる傾向がありましたが、近年の応募者は仕事に対するやりがいやワーク・ライフ・バランスを重視する場合も多いため、企業イメージへの考え方も変えていかなければなりません。
セカンドキャリア採用のポイント
セカンドキャリア人材を採用する際は、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。セカンドキャリア採用の主なポイントを見ていきましょう。
労働環境を整備する
セカンドキャリア人材を採用する場合は、さまざまな人材が入社後もスムーズに働けるよう、労働環境の見直しを図る必要があります。
例えば、シニア層を受け入れるケースでは、体力的な負担を減らすためのシステム化やデジタル化が必要です。PCやスマホの扱いに慣れていない人のために、研修制度も充実させましょう。
また、結婚・出産後の女性従業員に対しては、多様な働き方を選べる仕組みづくりが有効です。短時間勤務やリモートワークに対応できるようにすれば、女性のセカンドキャリア人材がより働きやすい環境になるでしょう。
評価制度を見直す
セカンドキャリア人材を受け入れる場合、今までの評価制度では公平な評価を行えなくなる恐れがあります。セカンドキャリア採用に対応した新たな評価制度の構築が求められるでしょう。
管理職候補としてミドル・シニア層を採用するなら、マネジメントスキルやリーダーシップの評価が必須です。人間性やコミュニケーションスキルも評価軸の一つとして加えるとよいでしょう。
また、組織に新たな視点をもたらす場合も、イノベーション創出のポテンシャルを評価できます。このように、専門性や経験以外の要素も評価の対象として考慮することが大切です。
採用後のミスマッチを防ぐ
セカンドキャリア人材を採用する際のリスクとして挙げられるのが、入社後のミスマッチです。面接時に期待値や価値観を擦り合わせ、ミスマッチを回避する必要があります。
企業側が重視したいポイントは、自社が求める人物像を応募者にきちんと伝えることです。人材に求めるスキルやキャリアパスを明確に示しましょう。
また、応募者に自身のキャリアビジョンや現在のスキルを話してもらえば、判断材料の一つになります。自社についてどのくらい調査しているかもチェックしましょう。
セカンドキャリアを意識した人材対策を
近年はビジョンに基づく戦略的な選択をセカンドキャリアと捉える傾向があります。企業としてもセカンドキャリアを意識した人材戦略を行うことが大切です。
セカンドキャリア人材を採用すれば、人材不足の解消やイノベーションの創出を図れます。企業イメージの向上につながることもメリットです。
セカンドキャリアを意識した人材戦略について理解し、具体的な取り組みを検討しましょう。