人的リソースを最大限に活かすには?意味・課題・活用方法まで企業が知っておくべき基本を解説

人的リソースをどのように管理するかを考えるため、まずはその定義や重要性について解説します。

企業の成長や競争力強化の鍵を握るのは「ヒト」という経営資源です。人的リソース(人的資源)を最大限に活用できるかどうかが、これからの組織の将来を左右します。本記事では、人的リソースの定義から重要性、直面しがちな課題やリスク、効果的な最適化手法、さらに価値を高める取り組みまで、経営層・人事責任者が知っておくべき基本を網羅的に解説します。

人的リソースとは何か

少子高齢化による労働人口の不足や、多様性により人材をいかに管理するかが企業にとって大きな課題となっています。その流れで、近年は「人的リソース」の管理が重要視される風潮です。

人的リソースの基本概念

人的リソースとは、企業で働く従業員と、彼らが持っている技術や知識、経験などをまとめて表現する言葉です。

企業が持つ資源には大きく分けて「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つがあります。その中でも特に重要なのが、この「ヒト=人的リソース」です。

これはただ単純に社員の人数が多ければいい、という意味ではありません。一人ひとりの社員がどんなスキルや経験を持っているか、またそれをどれだけ仕事で生かせるかがポイントです。

企業にとって人的リソースは特に重要な投資対象であり、うまく育てることが会社全体の力を高める鍵になります。

人的リソースがなぜ重要なのか

人的リソースが重要なのは、企業の競争力を左右するのが「人の力」だからです。

例えば、新しい機械を導入したり、資金を豊富に持っていたとしても、それらを使いこなし価値を生み出すのは従業員一人一人です。

従業員が能力を発揮しやすい環境を整えれば、新しいアイデアが生まれたり、サービスが向上してお客さまとの信頼関係が強化されます。

逆に従業員を軽視してしまうと、モチベーションが下がり、優秀な社員が辞めてしまうリスクもあります。「企業は人なり」という言葉が示す通り、人材をしっかり育てて活用することが、企業が競争力を高める最も重要なポイントなのです。

人的リソースと人的資本の違い

最近、「人的リソース」と似た言葉で「人的資本」という言葉もよく使われています。この二つは似ていますが、従業員を見る視点が少し違っています。

「人的リソース(人的資源)」という言葉は、企業が持つ資源のひとつとして従業員を活用するイメージです。一方で、「人的資本」は、従業員の能力や可能性を伸ばすために企業が積極的に投資する対象と捉えています。

つまり、「人的リソース」は今ある能力をどう使うかに注目し、「人的資本」は将来的な成長を考えて教育や研修などに力を入れていく考え方です。

人的リソース不足がもたらすリスク

労働人口の減少や在宅ワークの普及などにより、人的リソースの管理が複雑化しています。気づかない間に、人的リソースが不足しており、業務が滞ることも珍しくありません。人的リソースが不足することで、企業はどのような問題に直面するのでしょうか?

生産性と売上の低下

必要な人手が足りないと一人当たりの業務負荷が増し、対応しきれない仕事が発生したり、作業の遅延が起こりやすくなります。

その結果、製品やサービスの提供スピードが落ち、品質管理も行き届かなくなるでしょう。

業務効率が下がればコストは増加し、最終的には売上の低下や機会損失につながります。

本来であれば取り組めた新規プロジェクトや顧客対応も、マンパワー不足で断念せざるを得ないケースが出てくるかもしれません。

また、対応しきれないことで顧客へのサービス低下を招けば、信用失墜や顧客離れによる売上減少というリスクも高まります。

人的リソースの不足は直接的に企業のパフォーマンス低下と業績悪化を引き起こす可能性があるのです。

離職率の増加と従業員満足度の低下

人的リソースが不足している職場では、残っている従業員に過度な負荷がかかりがちです。

慢性的な長時間労働やオーバーワークは、従業員の心身に大きなストレスを与えます。その結果、働きやすさややりがいを感じられなくなった社員は、他社への転職を検討するようになり、結果として離職率の増加という形で表面化します。

高い離職率は企業にとって損失です。優秀な人材を失うだけでなく、採用・育成にかけたコストも失われ、新たな人材の採用や育成に再び時間と費用を割く必要が生じます。

さらに、「人が次々辞めていく職場」という評判が広がれば、残った社員の士気低下や採用市場での企業イメージ悪化にもつながりかねません。

業務の属人化とリスクの増大

人材が慢性的に不足したり、人員配置が適切でない職場では、業務の属人化も進みやすくなります。属人化が進むと、万一そのキーパーソンが退職・異動したり長期休養をとった場合に、業務が滞る重大なリスクとなります。

引き継ぎがうまくいかず業務が停滞したり、対応できる人がいないために顧客対応やプロジェクトが頓挫する恐れもあるでしょう。

また、一人の負担が大きくなることでミスが見逃されたり、不正防止のチェック体制が甘くなるといったリスクも増大します。

属人化は組織の柔軟性を奪い、事業継続性や内部統制上の弱点を生み出す要因となるのです。人的リソースの不足によるこれらのリスクは、決して他人事ではありません。

人的リソースを最適化する方法

人的リソース不足の解消に、「新たな社員を募集する」という方法もありますが、育成に時間がかかりますし、教育やメンターのためにますます社内のリソースを割かれることにつながります。

そのため、人材募集もさることながら「人的リソースの最適化」も会社にとって重要な課題と言えるでしょう。

以下では、人的リソース最適化のために会社が取り組める方法をわかりやすく解説します。

人材配置の見直しと適材適所の実現

会社の中で人材を最大限に活用するためには、社員一人ひとりが自分の得意な仕事を任されることが大切です。

そのためにもまず、今の会社の人材配置に問題がないか見直しましょう。「この部署は忙しすぎるのに、あの部署は人が余っている」「営業が得意な社員が事務作業に追われている」といった状況はないでしょうか。

そうならないためには、社員一人ひとりがどんなスキルや経験を持っているかを確認して、最も力を発揮できる部署や役割に再配置することです。

また、人が足りない部署には他の部署から人材を異動させたり、派遣社員や外部人材の力を借りるのも良いでしょう。

業務の自動化とシステム導入による効率化

人が限られている会社では、仕事の効率化を図ることが非常に重要です。効率化には、手間がかかる単純な業務や繰り返し行う作業を「自動化」することが効果的です。毎月の売上レポートの作成や顧客データの入力作業を自動化すれば、社員の負担を大きく減らすことができます。

また、受発注や在庫管理、経費精算などの事務作業を業務管理システムで効率化することも有効です。さらに、社内の問い合わせ対応をAI搭載のチャットボットに任せるなど、新しいデジタル技術を使った工夫も進めてみましょう。

こうした業務のデジタル化や自動化を進めることで、社員は単純作業から解放され、より創造的で価値の高い仕事に集中できるようになります。

その結果、限られた人数でも十分な成果をあげることができるのです。

タレントマネジメントの導入

社員一人ひとりの能力を引き出し、会社全体の成長につなげるには、「タレントマネジメント」という考え方が役立ちます。

これは、社員を「才能(タレント)」として捉え、採用・配置・育成・評価・昇進を一貫して計画的に管理する方法です。

タレントマネジメントツールは、社員のスキルや強み、過去の仕事ぶり、キャリア目標などをデータとしてまとめておくことができます。

こうして社員の能力や希望を正確に把握することで、適切な人材配置や将来のリーダー候補の育成がしやすくなります。

その結果、社員が自分の能力を最大限に活かしやすくなり、会社としても強力な組織を作り上げることが可能になります。

人的リソース戦略が企業の成長を左右する

社員の能力ややる気は、ただ待っていても自然に伸びるものではありません。だからこそ会社は、社員が働きがいや意欲を持てる環境を作る必要があります。

そのためには、社員が「自分の力を活かせている」「自分は会社にとって大切な存在だ」と実感できるような取り組みを積極的に行うことが大切です。

具体的には、一人ひとりが自分の強みや得意なことを活かせる部署や仕事を任せること、面談などで社員の希望や課題をしっかり聞いて理解すること、そして業務を効率化して負担を減らすことが重要です。

社員が働きやすく、能力を発揮できる環境を整えることができれば、社員自身の満足度が上がるだけでなく、会社全体の成長にもつながります。「人の力」が企業の大切な財産であることを忘れずに、組織として真剣に取り組んでいきましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

働きがい」の他の記事を見る

TUNAG お役立ち資料一覧
TUNAG お役立ち資料一覧