ティール組織とは?進化型組織の特徴と、組織進化の過程を具体的に解説
ティール組織は、個人や組織が自律的・進化的に成長することを目指す、次世代型の組織モデルです。ティール組織の特徴や注目されている背景、組織進化の過程などを解説します。進化する組織の実現に必要な要素や、具体的な事例も押さえておきましょう。
ティール組織とは?主な特徴
急速に変化し続けるビジネス環境に対応するため、多くの企業が新しい組織の形・在り方を模索しています。その中で近年、次世代型の組織モデルとして「ティール組織」が注目を集めています。まずは、どのような組織モデルか、基本的なところを理解しておきましょう。
次世代型の組織モデルとして注目されている
ティール組織とは、従来のピラミッド型の組織とは異なり、一人一人の社員が意思決定権を有する組織です。上下関係を重視する従来型の組織に対し、構成員が自らの役割を主体的に果たしやすく、組織全体が自律的に機能するといわれています。
同モデルは、フレデリック・ラルー氏の著書「Reinventing Organizations(ティール組織)」で紹介されており、出版を機に広く知られるようになりました。組織目標と社員の個人目標が一致しやすいモデルで、日本でも柔軟な組織運営を目指す企業が関心を寄せています。
ティール組織が注目されている背景
組織モデルに関する研究や書籍が数多くある中で、とりわけティール組織は多くの企業に注目されています。その理由は、従来のマネジメントの常識を打ち破るものでありつつ、ティール組織を目指して成功した事例が出てきたためです。
企業が直面する課題は複雑化しており、従来の硬直的な組織体制では、対応しきれない場面が増えています。さらにIT技術の発展や市場の変化に対応するため、新たな組織の在り方を模索する経営者や起業家も多い中で、社員の創造性により成長できるモデルが注目された面もあるでしょう。
自律的に進化するのが特徴
ティール組織の最大の特徴は、自律性と進化性です。社員が、上司である管理者の指示に逐一頼るのではなく、一人一人がある程度の意思決定権を有し、自発的に行動することで問題の解決を図ります。社員が臨機応変に行動できるため、予期せぬ問題や変化にもスムーズに対処できます。
また、従来の硬直的な組織に比べて適応力が高く、市場での競争優位につながるチャンスに対しても、迅速に取り組めるのがティール組織の強みです。社員の成長が、そのまま組織としての成長につながりやすく、イノベーションも起こりやすいモデルといえるでしょう。
ティール組織に至るまでの組織モデル
ティール組織の概念は、それ以前のさまざまな組織モデルの進化を経て考え出されています。歴史的な視点から、ティール組織に至るまでのモデルを知っておきましょう。それぞれのモデルの特徴を理解することで、ティール組織の意義がより明確になります。
レッド(衝動型):力による支配
組織モデルの第一段階に当たるレッド組織は、トップが力と恐怖によって支配する、原始的な組織形態です。「オオカミの群れ」とも呼ばれる古い組織形態の一つであり、強力なリーダーによる命令を通じて組織を運営します。
短期的な成果を上げる場面では、有効な場面も多いモデルですが、長期的な発展には不向きといわれています。ただし組織の構成員が不満を持っているとは限らず、人によってはリーダーの指示に従うだけでよいため、楽だと感じているケースもあるでしょう。
アンバー(順応型):規律型組織
アンバー組織は、規律や秩序を重視する「軍隊型」の組織モデルといわれています。厳格なルールとヒエラルキーによって運営されており、上意下達の指示命令系統が徹底されているのが特徴です。
構成員の一人一人が役割を全うすることを求められ、役割分担が明確なため、長期的な目標も達成しやすい形態です。ただし安定性は高いものの、変化への対応が遅れてしまうケースが珍しくありません。
オレンジ(達成型):競争型組織
オレンジ組織は、目標の達成や競争を重視する現代的な組織形態です。アンバー組織と同様、ヒエラルキーは存在しますが、構成員の成果に応じて階級が入れ替わる場合もよくあります。
そのため内部で競争意識が芽生えやすく、組織の推進力が増す一方で、構成員の人間らしさの喪失につながる点がデメリットとされています。現状において、多くの企業がこのモデルを採用していますが、より柔軟性の高い組織形態にシフトする企業も珍しくありません。
グリーン(多元型):協力型組織
グリーン組織は、構成員同士の協力や、コミュニケーションを重視する形態です。「家族」とも比喩される組織モデルであり、人間関係を大切にする文化が特徴です。
企業の場合、雇用主と従業員という立場の違いは残っているものの、個人の特性や強み・主体性が尊重されやすく、風通しが良いと感じる人が多いでしょう。
一方で、構成員間の合意形成に時間を要するケースも多く、意思決定に時間がかかる場合も少なくありません。組織としてスピードが求められる場面では、不向きなこともあります。
ティール:進化型組織
ティール組織は、上記の各モデルの特徴や強みを生かしつつ、進化した組織形態です。構成員が自らの意思によってマネジメントを実現し、組織全体で進化を続けるのが特徴です。「生命体」と比喩されるモデルであり、構成員の主体性・自律性を原動力として成長し続けます。
リーダーや管理者などは基本的に存在せず、構成員同士の協力や信頼関係により、従うべきルールを創造しながら組織を運営します。一人一人が組織の目的を理解し、それぞれ最適と思われる意思決定を重ねるため、変化に柔軟に対応できるのが強みです。
ティール組織への到達に必要な3つの要素
ティール組織を実現するには、従来の組織構造や運営方法から、大きく転換を図らなければいけません。そのポイントとなるのが、以下の3つの要素といわれています。それぞれ確認していきましょう。
セルフマネジメント
セルフマネジメントは、ティール組織の中核となる概念です。従来のトップダウン型の管理ではなく、一人一人のメンバーが自己管理能力を発揮し、個別に意思決定を繰り返します。これにより、管理者に依存しない柔軟な組織運営が可能になります。
メンバーの意思決定を組織の基盤とするためには、信頼に基づいた環境づくりが欠かせません。それぞれが互いを信頼し、自主的に情報を共有することで、組織全体が円滑に機能するようになります。
進化する目的(存在目的)
ティール組織には固定的な目標ではなく、進化する目的が必要です。これは組織が社会や環境の変化に対応しながら、進化し続けるための指針となります。
いわば組織の存在目的であり、目的が存在する理由を全構成員が理解・共有することで、状況が変化しても同じ方向で活動し続けられます。
ホールネス
ホールネスとは、組織において個人が「全体性」を発揮できる環境を指します。構成員同士がフラットな関係を築き、それぞれの価値観や信念に基づいて、自らの強みを生かした意思決定を重ねられるのが、ティール組織の特徴です。
一人一人が自らの強みを生かすには、自分自身を隠すことなく、本来の姿で働ける環境でなければいけません。心理的安全性を担保し、必要に応じて互いに助け合える文化を醸成することが、ティール組織を目指すための第一歩です。
ティール組織の事例はある?
ティール組織の代表例としては、オランダの介護施設運営団体「Buurtzorg(ビュートゾルフ)」が有名です。同組織はスタッフの自主性を重視し、管理職を排除したことで、業界全体に大きな影響を与えました。
組織内には管理者のいない無数のチームが存在しており、それぞれ目的の実現に向けて自律的に活動しています。ITツールを活用しながら積極的に情報共有を行い、一人一人が自身の役割を全うしながらチーム全体の成果を追求しています。
これにより、Buurtzorgは介護の現場における効率性と、人間性を両立させるモデルケースとして注目を集めるようになりました。
日本国内では、ティール組織の事例はまだ少ないものの、徐々に広がりを見せています。特に、スタートアップや非営利団体などでは、ティール組織の原則を取り入れた組織構成が進んでいるようです。また、大企業でも一部の部署やプロジェクト単位で、導入を試みる事例が増えています。
ティール組織の実現を目指してみよう
ティール組織は、個人と組織がともに成長することを目指した、革新的な組織モデルといえます。その実現にはセルフマネジメントや存在目的、ホールネスといった要素が不可欠です。従来の組織モデルの特徴と比較しつつ、エッセンスを押さえておきましょう。
現段階において、オレンジ組織が多いといわれる日本企業の中にも、徐々にティール組織を目指すところが増えています。環境の変化に柔軟に対応できる組織を目指しているならば、ティール組織の在り方を参考にしてみましょう。