社内失業の原因と対策|人材配置とリスキリングで社員を再戦力化する方法

「人手が足りない部署がある一方で、特定の社員に任せる仕事が見当たらない」というアンバランスな状況が続いていないでしょうか?その原因はいわゆる「社内失業」の可能性があります。社内失業は本人だけの問題ではなく、組織全体に影響を及ぼします。この記事では、社内失業の定義や実態から、原因の見極め方、そして人材配置とリスキリングを組み合わせた解消策まで体系的に解説します。

社内失業とは何か

社内失業は、一見すると「サボっている社員の問題」として片づけられがちです。しかし実際には、配置・育成・マネジメントが絡み合った複合的な組織課題です。まずは正確な定義と実態を理解するところから始めましょう。

仕事がない状態で在籍する社員を指す

社内失業とは、企業に正社員として在籍して給与を受け取っているにもかかわらず、任される仕事がほとんどない状態を指します。かつての「窓際族」や、近年の「社内ニート」も、この社内失業と同義です。

社内失業者は出社しているものの、社内で時間を持て余しています。成果を出せず、スキルも蓄積されず、本人も周囲も疲弊していくという悪循環に陥りやすい状態です。

社内失業が増えている実態

エン株式会社(旧エン・ジャパン株式会社)が実施した調査によると、社内失業者が「いる」と回答した企業は全体の9%、「いる可能性がある」と答えた企業は20%に上りました。合計すると約3割の企業が、社内失業者またはその予備軍を抱えていることになります。

さらに注目すべきは、同調査で「人材不足の部署がある」と回答した企業が83%に達していたことです。ある部署では人手が余り、別の部署では不足しているという、適材適所の配置が機能していない実態が浮かび上がっています。

第156回 「社内失業について(2020年版)」|アンケート集計結果|人事のミカタ(powered by エン・ジャパン) 

社内失業が組織に与える影響

社内失業を放置すると、本人だけでなく組織全体にさまざまな悪影響が広がります。「その人が暇なだけで問題ない」と見過ごしている間に、組織の体力が少しずつ削られていきます。

社内失業が起きている実態

エン・ジャパンが実施した調査によると、社内失業者が「いる」と回答した企業は9%、「いる可能性がある」と回答した企業は20%でした。合計すると、約3割の企業が社内失業者またはその予備軍を抱えていることになります。

さらに同調査では、「人材不足の部署がある」と回答した企業が83%に上っています。

つまり、社内には仕事を十分に任されていない社員がいる一方で、別の部署では人手不足が起きているということです。これは、単純な人員不足ではなく、適材適所の配置が機能していない可能性を示しています。

社内失業は、特定の社員だけの問題ではありません。人材の見える化や配置転換、教育機会の設計が十分に行われていない組織で起こりやすい課題だといえます。

社内失業が組織に与える影響

社内失業を放置すると、本人だけでなく、周囲の社員や組織全体にも悪影響が広がります。「その人に仕事がないだけ」と軽く見るのではなく、組織の生産性や人材活用に関わる問題として捉えることが重要です。

人件費と生産性の損失が増える

社内失業者がいる状態では、十分な成果が生まれないまま人件費が発生し続けます。

正社員として雇用している以上、企業は給与や社会保険料などのコストを負担します。しかし、任せる業務が少なく、成果につながっていなければ、その人件費は生産性に結びついていません。

たとえば、年収600万円の社員が十分な役割を持たないまま5年間在籍すれば、単純計算で3,000万円の人件費が発生します。もちろん、社員一人ひとりを単純にコストとして見るべきではありませんが、組織運営上は無視できない損失です。

社内失業を放置することは、人材を活用できないまま組織の体力を削っていくことにつながります。

周囲の不公平感が強くなる

「仕事をしていないように見える社員がいるのに、自分たちは忙しい」。このような状態が続くと、周囲の社員に不公平感が生まれます。

真面目に働いている社員ほど、「なぜ自分だけ業務量が多いのか」「成果を出しても報われないのではないか」と感じやすくなります。結果として、仕事への意欲や組織への信頼が低下してしまう可能性があります。

また、特定の社員に仕事が回らず、別の社員に業務が集中している場合、負担が偏ります。忙しい社員ほど疲弊し、離職リスクが高まることもあります。

社内失業は、本人だけでなく、周囲のエンゲージメントにも影響する問題です。

本人のキャリア停滞を深刻化させる

社内失業が長期化すると、本人のキャリアにも深刻な影響が出ます。

仕事を任されない状態が続けば、新しいスキルや経験を得る機会が失われます。社内で再び活躍するための材料が増えず、転職を考えたとしても市場価値を示しにくくなります。

また、「自分は必要とされていないのではないか」「役に立てていないのではないか」という不安を抱えやすくなります。こうした状態が続くと、メンタル不調につながる場合もあります。

社内失業は、本人にとっても望ましい状態ではありません。早い段階で強みや適性を見直し、再び役割を持てるよう支援する必要があります。

業務効率と組織運営に悪影響が出る

社内失業者がいる組織では、業務の割り振りにもひずみが生まれます。

本来であれば複数人で分担できる仕事が、特定の社員に集中している場合があります。一方で、仕事を任されていない社員は経験を積めず、さらに業務を任せにくくなるという悪循環に陥ります。

その結果、業務の属人化や過重労働が起こりやすくなります。担当者が退職・休職した際に業務が回らなくなるリスクも高まります。

社内失業を放置することは、組織全体の業務効率や継続性にも影響します。

社内失業が起きる原因

社内失業は、一つの原因だけで起こるものではありません。スキル不足、配置ミス、教育不足、人間関係など、複数の要因が重なって発生します。対策を考える前に、まずは原因を見極めることが重要です。

スキル不足で任せられる仕事が減る

社内失業の原因として多いのが、社員のスキルと現在の業務ニーズが合わなくなることです。

業務のデジタル化や自動化が進むと、これまでの経験だけでは対応しにくい仕事が増えます。長年アナログ業務を担当してきた社員が、システム化によって従来の役割を失うケースもあります。

ただし、スキル不足を本人の努力不足だけで片づけるべきではありません。会社が必要な教育機会を提供してこなかった場合や、役割の変化を事前に伝えていなかった場合もあります。

業務環境が変われば、求められるスキルも変わります。組織として、社員が学び直せる機会を用意することが必要です。

配属ミスで適性と業務が合わない

社員の適性と業務内容が合っていない場合も、社内失業につながります。

たとえば、人との調整が得意な社員を一人で完結する業務に配置したり、管理能力のある社員を単純作業中心の業務に置いたりすると、本来の力を発揮しにくくなります。

適性と業務が合わない状態が続くと、成果が出にくくなり、周囲から仕事を任されにくくなります。その結果、本人の仕事量が減り、社内失業に近い状態へ進んでしまうことがあります。

配属ミスは、本人の努力だけでは解決しづらい問題です。人事や上司が本人の強み、経験、志向を把握し、適切な役割へつなげる必要があります。

教育不足で成長機会が不足する

教育や研修の機会が不足していることも、社内失業の原因になります。

新しい業務や役割に対応するには、必要な知識やスキルを学ぶ機会が欠かせません。しかし、研修制度が整っていない、OJTが属人的になっている、特定の社員が教育対象から漏れているといった状態では、任せられる仕事の幅が広がりません。

中途入社者や異動後の社員に対するオンボーディングが不十分な場合も注意が必要です。「経験者だから大丈夫だろう」「異動したら自然に覚えるだろう」と放置してしまうと、本人が新しい環境になじめず、仕事を任されない状態に陥ることがあります。

教育不足は、社内失業の予備軍を生み出す要因になります。

人間関係や評価で仕事が偏る

職場の人間関係や上司の主観によって、仕事が特定の社員に偏ることもあります。

「あの人に頼むと時間がかかる」「説明するのが面倒」「以前うまくいかなかったから任せにくい」といった先入観から、特定の社員に仕事が回らなくなるケースです。

一度仕事が回らなくなると、本人は経験を積めません。経験が少ないためにさらに任せられなくなる、という悪循環が起こります。

このような状態は、本人の能力だけでなく、マネジメントの問題として捉える必要があります。上司が仕事の配分や育成責任を果たしているかを見直すことが大切です。

社内失業を見極める組織診断

社内失業に対応するには、まず実態を把握する必要があります。「仕事がなさそう」「やる気がなさそう」といった印象だけで判断すると、原因を見誤ります。データと対話の両面から、状況を丁寧に確認しましょう。

業務量と役割の偏りを可視化する

まずは、社員ごとの業務量や役割の偏りを可視化します。

週あたりの実稼働時間、担当している業務の種類、案件数、成果物の量や質などを確認します。業務量が極端に少ない社員や、担当業務が長期間変わっていない社員がいる場合は、社内失業またはその予備軍の可能性があります。

あわせて、特定の社員に業務が集中していないかも確認しましょう。社内失業は「仕事がない社員」だけを見るのではなく、「仕事が偏っている組織」として捉えることが重要です。

1on1ツールや人事システム、業務管理ツールを活用すれば、継続的に状況を把握しやすくなります。

関係者ヒアリングで原因を特定する

業務量を可視化したら、上司、同僚、本人へのヒアリングを行います。数値だけでは、仕事が少ない理由までは分かりません。

たとえば、本人のスキル不足なのか、上司が仕事を任せていないのか、部署内の人間関係に課題があるのかによって、必要な対策は異なります。

ヒアリングでは、「なぜ仕事が少ないのか」と責めるように聞くのではなく、「どのような業務で力を発揮できているか」「困っていることは何か」「今後挑戦したいことはあるか」といった建設的な問いかけを意識しましょう。

原因を正しく把握することで、配置転換やリスキリングの方向性も見えやすくなります。

本人の強みとキャリア意向を把握する

社内失業を解消するには、本人の強みやキャリア意向を把握することが欠かせません。

「何ができていないか」だけを見ると、本人の可能性を見落としてしまいます。これまでの経験、得意な業務、周囲から評価されたこと、本人がやりがいを感じた仕事などを丁寧に確認しましょう。

また、本人が今後どのような仕事に挑戦したいのか、どのようなスキルを身につけたいのかを把握することも重要です。

強みと希望が分かれば、再配置やリスキリングの方向性を具体化しやすくなります。定期的なキャリア面談やキャリアシートを活用すると、本人の意向を継続的に把握できます。

配置ミスマッチの有無を確認する

現在の業務内容と、本人の適性・スキル・キャリア希望が合っているかも確認しましょう。

採用時や過去の配属時には合っていた仕事でも、事業環境や本人の状況が変われば、ミスマッチが生じることがあります。組織再編や業務内容の変化によって、本人の強みを生かしにくくなっている場合もあります。

配置を見直す際は、単に空いている部署へ異動させるのではなく、「どの業務でこの人の力が生きるか」という視点で考えることが大切です。

配置ミスマッチを解消することは、社内失業者の再戦力化に向けた重要な第一歩です。

人材配置とリスキリングで社内失業を解消する

社内失業の原因が見えてきたら、具体的な解消策を実行します。ポイントは、配置の見直しとリスキリング(新しい業務や役割に対応するために、必要なスキルを学び直す取り組み)を別々に行わないことです。新しい役割と必要な学習をセットで設計することで、再戦力化につながりやすくなります。

適性に合う異動・配転を設計する

社内失業の解消において、最も直接的な手段の一つが異動や配置転換です。

本人のスキル、強み、キャリア希望を把握したうえで、受け入れ先部署の業務ニーズと照らし合わせます。本人が力を発揮できる業務と、組織が必要としている役割を結び付けることが重要です。

ただし、「とにかく別の部署へ動かす」だけではうまくいきません。本人が納得しているか、受け入れ先が育成やフォローの準備をしているかを確認する必要があります。

異動後も、定期的な1on1やフォロー面談を行い、業務量や適応状況を確認しましょう。配置転換は実施して終わりではなく、定着まで支援することが大切です。

リスキリング対象者と目的を決める

社内失業を解消するためのリスキリングでは、「誰に、何を、何のために学んでもらうのか」を明確にする必要があります。目的が曖昧なまま研修だけを実施しても、実務につながらず効果が出にくくなります。

対象者としては、現在のスキルと業務ニーズの差が大きい社員、今後役割変更が見込まれる社員、異動後に新しい知識が必要になる社員などが考えられます。

重要なのは、学習の目的を本人にも共有することです。「このスキルを身につければ、次にこの業務を任せられる」と分かれば、学習意欲も高まりやすくなります。

学習後に新しい業務へつなげる

リスキリングでよくある失敗は、「学んだものの、生かす場がない」という状態です。

研修やeラーニングを受けても、その後に任される業務が変わらなければ、学習は実務に結びつきません。本人も「何のために学んだのか分からない」と感じてしまいます。

そのため、リスキリングを設計する段階から、学習後に任せる業務や役割を決めておくことが重要です。たとえば、データ分析を学んだ後に業務改善プロジェクトへ参加する、ITスキルを学んだ後にシステム運用補助を担当する、といった形です。

学習と業務をセットで設計すれば、社員は新しい役割に移りやすくなります。企業側も、リスキリングの成果を確認しやすくなるでしょう。

教育・研修制度を再設計する

社内失業を繰り返さないためには、一時的な研修実施ではなく、教育・研修制度そのものを見直す必要があります。以下の観点で制度を再設計することが有効です。

  • 定期的なスキルアセスメント:個人のスキルと業務ニーズのギャップを定期的に計測する
  • キャリア別の学習パスの整備:職種・役職・ステージに応じた学習コースを用意する
  • 学習機会の公平な提供:特定の社員が教育から漏れないよう、仕組みとして担保する
  • OJTと研修の組み合わせ:座学だけでなく、実務を通じた学習機会を設ける

制度の整備は時間がかかりますが、社内失業の根本的な予防策として、中長期の視点で取り組む価値があります。

キャリア面談で再戦力化を進める

配置やリスキリングを機能させるためには、社員一人一人との継続的な対話が欠かせません。キャリア面談は、その中心的な手段です。形式的な評価面談とは異なり、本人の未来志向の対話として設計することが重要です。

形式的な面談ではなく対話を行う

多くの企業でキャリア面談が形骸化している原因は、「制度として実施している」という目的化にあります。本来のキャリア面談は、社員が自分のキャリアを語り、会社がそれを受け止めて育成・配置に反映させるための対話の場です。

面談者(上司・人事)は、評価や指摘をする立場ではなく、社員の話を引き出し支援策を考えるファシリテーターとして臨む必要があります。

キャリアビジョンと強みを整理する

キャリア面談では、「3年後・5年後にどうなりたいか」という将来のビジョンと、「今の自分がどのような強みを持っているか」を整理することが核になります。

この問いに自分で答えられる社員は多くありません。だからこそ面談の場で丁寧に引き出すことが重要です。過去の成功体験・やりがいを感じた瞬間・苦手だと感じる業務などを掘り下げることで、本人も気づいていない強みが浮かび上がることがあります。

面談後に教育や配置転換へつなげる

キャリア面談を実施するだけで終わらせないことが、再戦力化の成否を分けます。面談で把握したキャリア意向や強みを、具体的な教育計画・配置転換の検討に反映させる仕組みが必要です。

面談後は合意した内容をドキュメント化し、次回面談までのアクションを明確にします。「この面談が何かにつながった」という実感が、社員の行動変容を後押しします。

外部コンサルタントで導入支援を受ける

キャリア面談の設計・運営に慣れていない組織では、外部のキャリアコンサルタントや支援機関の活用も選択肢の一つです。厚生労働省が推進するキャリアコンサルティング制度では、企業が費用の一部を補助を受けながら外部専門家を活用できる仕組みが整備されています。

外部の専門家を活用することで、社内では話しにくい本音を引き出しやすくなるメリットもあります。まずは一部の社員に試験的に導入し、効果を測定しながら展開範囲を広げるアプローチが現実的です。

社内失業は再配置と育成支援で解消できる

社内失業は、個人の怠慢や能力不足だけで生じるものではありません。配属ミス・教育の空白・キャリア意向の未把握・マネジメントの不備といった、組織側の課題が複合的に絡み合って発生します。

だからこそ、解決策も組織として取り組む必要があります。業務量の可視化から始まる組織診断、本人の適性に合わせた再配置、スキルと業務をセットで設計するリスキリング、そして継続的なキャリア面談、これらを一体で進めることで、社内失業者を再び組織の戦力として活躍させることが可能になります。

「この社員に任せられる仕事がない」と感じたとき、それは組織への問いかけです。「なぜこうなったのか」「何を変えれば変わるのか」を丁寧に追うことが、根本解決への第一歩となるでしょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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