組織開発とは何か?意味・手法・進め方・成功のポイントを分かりやすく解説

変化の激しいVUCA時代において、従業員エンゲージメントの低下や組織の一体感の希薄化が多くの企業で課題となっています。こうした背景から「組織開発」が注目されつつあるものの、具体的な進め方が分からない経営者・人事担当者もいるでしょう。本記事では、組織開発の意味や代表的手法、導入ステップ、成功のポイントまでを実務に即して分かりやすく解説します。

組織開発とは何か

企業の成長を支えるアプローチとして「組織開発」があります。しかし、言葉は知っていても意味についてきちんと理解していなければ、効果的な組織開発は実行できません。

そのためにも、 まずは組織開発の定義や目的を押さえ、企業にとってなぜ重要なのかを見ていきましょう。

組織開発の定義

近年、リモートワークの普及や多様な働き方の浸透により、従業員同士が直接顔を合わせる機会が減り、チームの一体感や部門間の連携が希薄になりがちです。

社内コミュニケーションの不足やセクショナリズム(部署間の縦割り)の深刻化は、多くの企業で課題となっています。 

こうした課題を解決に導く手法として注目されているのが「組織開発(Organization Development)」です。

組織開発とは、従業員同士や部署間の関係性を改善し、信頼関係と協力体制の土台を築くことで、組織全体の柔軟性や生産性を高める取り組みを指します。 

組織開発の具体的な施策として、例えば次のような取り組みが挙げられます。

  • 定期的な1on1ミーティングを通じて上司と部下の対話を促進する
  • チームビルディング研修によって部署横断のつながりを強化する
  • 社内SNSの導入やフィードバック文化の醸成により情報共有を活性化する

これらを継続的に実施していくことで、社内の風通しが良くなり、部門間に存在する壁が取り払われて協力しやすい体制が築かれます。

社員同士が信頼し合い、協力できる組織風土が醸成されれば、変化に強く生産性の高い組織へと近づくでしょう。

人材開発との違い

企業の成長を促す施策には、「組織開発」と「人材開発」の2種類があります。一見似ているようですが、目的やアプローチは次の通り異なります。

  • 人材開発:個人のスキルや能力向上が目的です。研修の受講や資格取得支援などを通じて従業員一人ひとりの専門性を高め、それによって企業全体の競争力を底上げします。

  • 組織開発:組織全体の構造や文化、コミュニケーションを改善し、組織として持続的に成長し続けることが目的です。部署間の連携強化や組織風土の改革などを通じて、変化に対応できる強い組織づくりを目指します。

これらの違いを正しく理解し、自社の状況や目標に応じた手法を選択することが大切です。

組織開発の主要な手法

組織の課題を解決し成長を促す方法としては、大きく「診断型組織開発」と「対話型組織開発」の2つのアプローチがあります。

自社にどちらの手法が適しているかを見極めることが、組織開発を成功させるポイントです。本章では、それぞれの特徴と具体的な進め方を詳しく説明します。

診断型組織開発

診断型組織開発は、調査やアンケートなどを用いて組織の現状をデータで把握し、その分析結果に基づいて組織改善を行うアプローチです。

代表的な手法に「サーベイ」があります。これは従業員に対する調査を実施して定量・定性的な意見を収集し、得られたデータを上司と部下やチーム内で共有して対話を行うものです。

 このプロセスでは、浮き彫りになった現状の課題を関係者が真摯に受け止め、議論を深めることで解決策の創出を目指します。

データに裏付けされた事実を基に話し合うため、従業員のエンゲージメント向上につながるだけでなく、組織の意思決定プロセスの透明性を高める効果も期待できるでしょう。

対話型組織開発

対話型組織開発は、事前に大規模なデータ収集を行わず、参加者同士の対話を通じて組織の現状認識と理想像を描いていくアプローチです。

代表的な手法として「アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)」が知られています。これは課題の原因追及ではなく、組織の強みや価値に焦点を当てながら、メンバー全員で理想の未来像を探求していく手法です。 

対話型の場では、参加者がお互いの考えを深く理解し合うことで組織変革への当事者意識が醸成されます。

また、自由に意見を出し合える対話を重ねることでメンバーの納得感や主体性が高まり、その後の継続的な改善活動につながっていきます。

組織開発を進めるステップ

組織開発は一過性の取り組みではなく、段階的なプロセスを通じて成果を出す必要があります。

ここからは、現状分析の段階から施策の導入、そして定着化・継続的な改善に至るまで、組織開発を推進するための具体的な手順を順を追って解説します。

組織開発の目的を明確にする

最初のステップは、「なぜ組織開発を行うのか」を明文化することです。

たとえば「部署間の連携を強化したい」「離職率を下げたい」など、目的を共有することで、従業員の理解と協力が得やすくなります。

目的が不明確なままでは、途中で方向性がぶれるリスクがあるため、最初に共通認識を持つことが重要です。

現状把握と課題抽出を行う

理想像が明確になったら、次に現状とのギャップを分析し、解決すべき具体的な課題を特定しましょう。

SWOT分析(自社の強み・弱み・機会・脅威の分析)やKPI(重要業績指標)の測定結果を活用すると、組織の課題を客観的に洗い出すことができます。

分析の結果、「次世代リーダーの育成が不足している」「部署間の協力体制が弱い」など、優先的に対処すべき課題が浮かび上がってくるはずです。

課題が明確になったら、それぞれに対する具体的な解決策を検討します。この際、すぐに実行できるものから優先的に着手すると良いでしょう。

例えば、管理職向けのリーダーシップ研修を実施してマネジメント力を強化する、定期的な部門横断ミーティングを開催して部署間の連携を促進するといった施策が考えられます。

キーパーソンを巻き込み、組織内の合意を取る

組織開発は一部の担当者だけで進めても効果が出にくく、影響力のあるキーパーソンの巻き込みが成功の鍵となります。

たとえば、部署横断のプロジェクトチームを結成し、各現場の声を集約・反映することで、実行段階での抵抗を抑えることができます。

社内の合意形成には時間がかかりますが、合意を得ずに実施しても反発を招いてしまいます。丁寧にアプローチを行い、理解を得てから実行しましょう。

スモールスタートでアクションプランを実施する

いきなり全社規模の変革に着手すると、現場への負担が大きくなりすぎて混乱や反発を招く恐れがあります。 

そこで、効果を検証しながら段階的に進めるために、次のような小規模な取り組みから始めてみましょう。

  • 管理職のうち約10名を対象に1on1ミーティングを導入し、その効果を検証する
  • 特定のチームでピアレビュー(相互評価)の制度を試験的に導入し、フィードバック文化を醸成する

このように一部で試した施策で効果が確認できたら、徐々に適用範囲を広げて全社展開していきます。小さな成功体験を積み重ねながら範囲を拡大することで、現場に無理のない形で変革を浸透させることができます。

検証とフィードバックを繰り返し、全社に展開する

小規模な実施で得た知見を元に、施策をブラッシュアップし、全社へ段階的に広げていきます。

その際には、定期的な振り返りや関係者からのフィードバックを取り入れ、柔軟に改善を重ねていくことが不可欠です。

PDCAを意識した継続的な改善が、組織開発の効果を最大化させます。

組織開発を進める際のポイント

組織開発は一度実施して終わりというものではなく、時間をかけて継続的に取り組む姿勢が求められます。

そのためには、経営層が主導して組織開発にコミットし、状況の変化に応じて手法を柔軟に組み合わせていくことが重要です。ここでは、組織開発を成功に導くために押さえておきたい具体的なポイントを見ていきましょう。

経営層の積極的関与の重要性

経営層が組織開発の必要性を理解し、自ら動く姿勢を示すことが、社内への強いメッセージとなります。

たとえば、トップ自らが対話の場に参加する、施策の方向性を定期的に発信するなど、行動で示すことが求められます。

経営層の関与が薄いと、現場での優先順位が下がり、浸透しにくくなるため注意が必要です。

組織の現状に合わせた柔軟なアプローチ

組織開発のために全く新しいプロジェクトを立ち上げることもできますが、既存の社内改革に組織開発の視点を取り入れるほうがスムーズです。

そのほうが現場の抵抗感も少なく、組織全体に負荷をかけずに変化を促すことができます。 

組織開発を独立した単発のプロジェクトとして進めるのではなく、こうした既存のDX推進や業務改善の流れに組み込むことで、変革がより自然に全社へ定着していくでしょう。

適切なDXツールの導入

組織開発を効果的に進めるためには、組織の状態を客観的に捉え、課題を可視化する仕組みが欠かせません。とくに近年では、エンゲージメントサーベイをはじめとしたデジタルツールの活用が、組織課題の早期発見や継続的な改善に役立つ手段として注目されています。

株式会社スタメンでは、基本無料で使えるエンゲージメントサーベイツール「TERAS(テラス)」を提供しています。

TERASでは、従業員のモチベーションやエンゲージメントを定期的に測定し、「チーム間の連携不足」「リーダーシップ不在」などの組織課題をデータに基づいて可視化できます。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 初期費用・月額費用が不要で、何人でもサーベイを実施可能
  • 設問設計から結果のレポート化まで一貫して簡単に操作できる
  • データをもとに課題を把握し、改善の優先順位を明確にできる

ツールはあくまで手段ですが、現状把握→施策立案→改善のPDCAを回していくうえで、こうした仕組みは大きな推進力となります。

まずは小さな一歩として、組織の状態を可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。

組織改善に特化したエンゲージメントサーベイ|TERASの詳細はこちら

組織開発で持続的に成長する組織づくりを

組織開発は、企業が変化の激しい市場環境に適応し、持続的に成長し続けるために欠かせない取り組みです。

単なる業務プロセスの改善や従業員のスキル向上にとどまらず、組織全体の文化や仕組みを根本から見直し、変化に強い組織を構築することを目的としています。 

そのためには、データに基づいて現状を客観視する「診断型」の手法と、対話によって理想像を描き出す「対話型」の手法を自社の状況に応じて適切に組み合わせていくことが重要です。

組織開発をうまく実施できれば、環境の変化に柔軟に対応できる強い組織が実現し、激しい市場変化の中でも競争力を維持して持続的な成長を遂げることができるでしょう。 

ぜひこの機会に組織開発に取り組み、社内に変革を根付かせることで持続的な成長を遂げる強い組織を目指してみてください。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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