新入社員の3年離職率が高い原因とは?企業が今すぐできる改善策まとめ
新卒で入社した新入社員が「3年以内」に会社を辞めてしまう割合(3年離職率)は依然として高止まりしています。早期離職は人材育成に費やしたコストが無駄になるなど深刻な影響を及ぼします。本記事では、新入社員の離職率の現状と主な原因を整理し、離職率改善に向けて企業が今すぐ取り組める具体策をまとめます。
新入社員の離職率はどのぐらい?
まずは客観的な統計データに基づき、新入社員の離職率の現状を確認しておきましょう。
入社後に早期離職するケースがどの程度発生しているのか、傾向を正しく把握することは採用活動や人材育成の見直しにおいて重要な指針となります。
離職のタイミングやその理由を読み解くことで、組織側がどのような対策を取るべきかが見えてきます。
入社3年内の離職率は約3割
厚生労働省が公表したデータによると、2021年3月に卒業した新規学卒就職者のうち、就職後3年以内に離職した割合は以下の通りです。
- 中学卒:50.5%(前年比2.4ポイント減)
- 高校卒:38.4%(前年比1.4ポイント増)
- 短大等卒:44.6%(前年比2.0ポイント増)
- 大学卒:34.9%(前年比2.6ポイント増)
産業別に見ると、離職率には顕著な偏りがあり、特にサービス業や教育・学習支援業、医療福祉、小売といった業種での離職傾向が目立ちます。
高校卒の離職率が最も高かったのは「宿泊業・飲食サービス業」で65.1%、次いで「生活関連サービス業・娯楽業」が61.0%、「教育・学習支援業」が53.1%、「医療・福祉」が49.3%、そして「小売業」が48.6%という結果でした。
大学卒でも同様の傾向が見られます。
このように、労働環境や業務内容が厳しい業種では、定着率の改善が依然として大きな課題であり、企業側には職場環境の見直しや育成体制の強化が求められています。
特に新卒者の受け入れを行う業種では、早期離職を前提としない育成設計が急務です。
3年離職率が注目される理由
なぜ「3年以内の離職率」がとりわけ注目されるのでしょうか。
その背景には、日本企業の新卒一括採用文化と長期的な人材育成スタンスがあります。新卒社員は将来の中核人材と期待されて採用されるため、3年未満での離職は組織にとって想定外の損失です。
教育や育成への投資が回収できず、人手不足や職場の混乱も招きかねません。
さらに、日本では「3年続けば一人前」という考え方が根強く、新卒定着率の重要な指標とされています。
近年は特段高い水準ではない
3年離職率が話題になると、「最近の若者はすぐ辞める」といったイメージで捉えられがちです。しかし実は、近年の3年離職率は過去と比べて特別高いわけではありません。
1999~2005年ごろの就職氷河期には大卒新入社員の3年離職率が35%前後まで悪化しましたが、その後景気回復とともにやや改善し、2010年以降はおおむね32%程度で安定しています。
直近数年間でわずかな上昇傾向はあるものの、それも誤差範囲といえる程度で、現在の約3割という水準は例年並みだと考えられます。
つまり、「ここ数年で急激に若手の離職が増えた」というより、以前から新入社員の3割程度が早期離職してしまう状態が続いているのです。
新入社員が離職する理由
新入社員が早期に離職してしまう理由には、いくつか共通したパターンがあります。さまざまな統計や調査から浮かび上がる代表的な離職要因を押さえ、なぜ新人たちが会社を去るのか傾向を理解しましょう。
離職理由のトップは人間関係
新入社員の離職理由として最も多く挙げられるのが「職場の人間関係」です。
エン・ジャパン株式会社が2024年に実施した「本当の退職理由」調査によると、退職時に会社に伝えなかった本当の退職理由の第1位は「人間関係が悪い」であり、46%の回答者がこれを挙げています。
また、退職時に本当の理由を会社に伝えなかった理由として、「話しても理解してもらえないと思ったから」が最も多く、これらの結果から、職場の人間関係の問題が新入社員の離職に大きく影響していることが明らかです。
出典:「本当の退職理由」調査(2024) | エン・ジャパン(en Japan)
給与の低さや将来性
同じくエン・ジャパン株式会社による同資料では、退職時に会社に伝えなかった本当の退職理由の中で、「給与が低い」「将来性がない」といった待遇面への不満が上位に挙げられています。
特に、生活基盤が安定していない若手社員にとって、給与の問題は心理的にも実務的にも大きなストレス源となり得ます。
また、将来的なキャリアパスが見えない場合、「このままここにいても意味がない」と感じてしまうのも無理はありません。報酬と将来性の2点は新卒定着の鍵といえるでしょう。
キャリアプランやチャレンジの比率は多くはない
一方で、「他にやりたいことが見つかった」「新しいチャレンジをしたい」といった前向きな理由で退職する新入社員は実はそれほど多くありません。
エン・ジャパン株式会社の調査によると、退職時に会社に伝えた理由の第1位は「別の職種にチャレンジしたい」(22%)でしたが、実際の本当の退職理由としては第9位(6%)に過ぎません。
このように、前向きな理由を表向きに伝える一方で、実際には職場の人間関係や待遇面への不満が主な離職理由であることが多いのです。
新入社員の離職は、個人のキャリア志向だけでなく、職場環境や企業文化の改善が求められる課題であるといえるでしょう。
離職率改善に向けた具体的な施策
新入社員の早期離職は「仕方のないこと」ではなく、企業側の取り組み次第で改善できる課題です。
とりわけ、入社後の数カ月間は新入社員が職場に適応できるかどうかの分岐点であり、この時期のサポート体制やコミュニケーションが定着率を大きく左右します。
ここでは、離職率を下げる上で有効とされる具体策を取り上げ、現場で導入しやすい方法を中心に紹介するので、自社の状況に合わせて段階的に実施していきましょう。
コミュニケーションを改善する取り組み
職場内のコミュニケーションを活性化させることは、離職率改善の第一歩です。新入社員が「話しかけやすい」「相談しやすい」と感じられる環境をつくることが、信頼関係の構築と孤立防止につながります。
例えば、社内SNSの導入により、部門を越えた日常的な情報共有が活性化します。また、部署横断の交流ランチやカジュアルな懇親会なども、社員間の距離を縮める手段となるでしょう。
さらに、上司や経営層から定期的にビジョンや感謝を伝える仕組みを設ければ、組織の一体感も高まります。「ここには居場所がある」と感じる職場こそ、新入社員が長く働きたいと感じる場所なのです。
メンター制度や1on1によるフォローアップ
新入社員の離職を防ぐには、初期段階での丁寧なフォローが欠かせません。中でも効果的なのが、メンター制度の導入です。
メンター制度とは、新人に対し年次の近い先輩社員を相談役としてつける制度で、業務の質問はもちろん、職場に慣れるまでの不安や悩みを日常的に相談できるようにする仕組みです。
上司には言いづらい悩みも、年齢の近い先輩なら話しやすく、心理的な安全性が保たれます。
加えて、定期的な1on1ミーティングを導入することで、業務進捗だけでなくメンタル面のサポートも可能になります。
こうした日常的なフォローアップは、離職リスクを早期に察知する上でも有効です。新人を孤立させず、「いつでも味方がいる」状態をつくることが定着率向上のカギになります。
コミュニケーションを改善しエンゲージメントを高める「TUNAG(ツナグ)」
ここまで述べたように、社内のコミュニケーション活性化や関係構築は離職率改善の鍵になります。そうした課題を感じている企業にこそ、有効なのが社内エンゲージメント向上プラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」の活用です。
TUNAGは社内コミュニケーションの促進と従業員エンゲージメントの向上を支援するクラウドサービスで、多くの企業が離職率低減のために導入しています。
ここでは、TUNAGがなぜ離職率改善に効果的なのか、その理由と特徴を解説します。また、TUNAGと併せて活用できるエンゲージメントサーベイ「TERAS」による離職兆候の早期発見についても紹介します。
TUNAGが離職改善に効果的な理由
TUNAGが離職率改善に寄与するのは、社内のコミュニケーション基盤を整え、従業員のエンゲージメントを高められるからです。
例えば、TUNAG上では経営陣からのメッセージ発信や社内報の配信により、経営と現場の距離を縮めることができます。
また、社員同士で感謝や称賛を送り合う「サンクスカード」機能などを通じて社員同士の交流や称賛文化の醸成を促すことも可能です。
こうしたエンゲージメントの見える化によって社員のモチベーションが向上し、結果として離職率の改善・定着率の向上につながったという導入企業の声も多く報告されています。
さらにTUNAGは社内制度の案内や福利厚生情報の共有など情報一元管理ツールとしても機能するため、新入社員が「社内のことが分からず不安」という状態を防げます。
TERASなら離職兆候の早期発見が可能
離職率改善のためには問題を事前に察知し、先手を打つことも重要です。
TUNAGが提供するエンゲージメントサーベイ「TERAS(テラス)」を活用すれば、従業員の離職兆候を早期に発見することが可能になります。
TERASは定期的に社員のエンゲージメント状態を可視化するサーベイツールで、組織全体や部署ごとの健康度合いをスコアで把握できます。
エンゲージメントスコアが低下している部門や個人がいれば、それは離職の兆候かもしれません。
TERASで継続的にサーベイを実施することで、社員の変化をキャッチし「最近モチベーションが下がっている人がいる」といった気付きが得られます。
そして離職リスクが高まる前に早期にフォローや面談を行うことで、退職を未然に防ぐ対策が打てるのです。
TERASは部署単位での課題分析も可能なため、特定チームだけ離職率が高いといった組織課題の原因特定にも役立ちます。
TERASで社員の声を定期的に収集・分析することで、離職のサインを見逃さず手を打てる体制を整えましょう。
離職率の改善は全社的に取り組むことが重要
新入社員の離職は、多くの企業が直面する共通課題です。しかしその原因を正しく把握し、対策を丁寧に講じることで、離職率は確実に改善できます。
人間関係や労働環境への不満を放置するのではなく、メンター制度や1on1ミーティング、エンゲージメントを高めるツールなどを活用し、社員が安心して働ける基盤を整えていきましょう。
新人にだけ我慢を強いるのではなく、会社全体が「人を育て、支える文化」を築くことが、定着率の向上に直結します。一人一人の努力が積み重なった先に、「辞めない職場」「働き続けたくなる組織」が実現されるのです。
今日から始められる小さな一歩を大切にし、全社で新人育成と職場改善に取り組んでいきましょう。