人手不足が深刻化する日本の現状。業界別の背景と企業の施策を解説
「自社に合う人材が確保できない」「離職者が多い」など、人材の確保に悩む企業は少なくありません。日本はあらゆる業界で人手不足が進行しており、事業存続の危機にさらされている企業もあります。業界別の現状と原因、企業が取るべき施策を解説します。
日本の人手不足の現状を知ろう
近年は、人手不足が社会問題となっています。少子高齢化による労働力人口の減少が主な原因ですが、企業規模・業界・職種などによって事情が異なります。人材の確保に苦慮している企業は、人手不足の現状と原因を把握することが重要です。
中小企業ほど問題が深刻化
日本ではあらゆる業界で人手不足が進んでいますが、企業規模でいえば、大手企業よりも中小企業の方が不足感は強いといえます。
「中小企業白書(2024年版)」によると、中小企業の6割以上が人材不足を感じていることが分かりました。中でも、組織や事業を支える「中核人材」は、7割以上の企業が「不足感がある」と答えています。
厚生労働省では、労働力需要と労働力供給の差である「労働力需給ギャップ」を調査しています。2017年以降は幅広い産業で労働力不足が見られ、賃金アップを通じて労働者を引きつける企業が増えているのが現状です。
人手不足が解消されない場合、事業の縮小や撤退を余儀なくされる企業が増加するでしょう。若者の都心部流出も進んでおり、地域経済が衰退する恐れもあります。
出典:中小企業白書 小規模企業白書|2024年版中小企業庁編
正社員の不足感が強い
雇用形態別で見ると、パート・アルバイトなどの非正社員よりも、正社員の方が不足感が強い現状がうかがえます。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」によれば、正社員の不足を感じている企業の割合は53.4%にも上っています。
特に、正社員の人手不足割合が最も高いのが「情報サービス業」の72.5%で、企業のデジタル化やDXを担う「システムエンジニア(SE)」の不足が顕著です。建設業や運輸・倉庫業でも、正社員の不足割合が高く、今後は正社員採用や非正社員の正社員化がさらに増加すると考えられます。
出典:人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)|株式会社 帝国データバンク[TDB]
人手不足の原因は多岐にわたる
人手不足の原因は業種・業界によって異なりますが、全体に共通しているのは、少子高齢化による労働力人口の減少です。
日本は人口そのものが減少しているのに加え、高齢化率が上昇しています。とりわけ、技術・専門知識が求められる職種においては、若手の働き手不足が深刻な問題となっています。
人々の価値観が多様化し、働き方の選択肢が増えたことも原因の一つです。かつては、終身雇用・フルタイム勤務が一般的でしたが、近年は副業・兼業をする人や時短勤務を希望する人、フリーランス志向の人が増加傾向にあります。
ワークライフバランスを重視する風潮もあり、柔軟な働き方や労働環境の整備が進まない企業は、人材確保が困難な状況に陥るでしょう。
人手不足が顕著な業界は?
厚生労働省の労働経済動向調査(2024年11月)によると、人材不足が顕著な業界は、「医療・福祉業」「運輸業・郵便業」「建設業」です。業界別の現状と人材の確保が困難な理由を解説します。
医療・福祉業
医療・福祉業で人手不足が深刻化する主な原因は、高齢化です。近年は、医療の進歩で平均寿命が延びており、医療従事者や介護の担い手のニーズは右肩上がりに増えているのが現実です。
ほかの業界に比べ、医療・福祉業は肉体的・精神的な負担が大きいといわれています。特に、介護士は社会のニーズに対して待遇が十分とはいえず、低賃金・重労働のイメージを持つ人も少なくありません。
また、日本は世界に比べて医師の絶対数が少なく、1人当たりの業務量が増加しています。高齢化が進展すれば、医師不足に拍車がかかるでしょう。
運送業・郵便業
日本では、新型コロナウイルス感染拡大を機に「オンライン消費」が増加し、運送業・郵便業では、人手不足が加速しました。コロナ収束後も、オンライン市場の拡大は続いており、宅配の需要は今後も減らないものと予想されます。
一方で、物流業界への就労希望者は伸び悩んでいるのが現状です。運輸業・郵便業の所定外労働時間は全産業の中でも際立って高く、低賃金・重労働のイメージが定着しています。
経済産業省の資料によると、トラック運送事業の有効求人倍率は全職業平均の約2倍です。全職業平均に比べ、労働時間は2割ほど長いのにもかかわらず、年間賃金は5~15%ほど低い結果となっています。
ドライバーの平均年齢の上昇や若年層の担い手不足により、将来は人手不足がさらに深刻化するかもしれません。
建設業
日本では、高度経済成長期に大量に建てられた建造物の老朽化が進んでいます。近年は、災害に強いインフラ整備を行う自治体も多く、建設業のニーズは増加傾向にあります。
国土交通省の資料によると、建設業に従事する技能者のうち、60歳以上の技能者は全体の25.7%、29歳以下の技能者は全体の約12%です。(総務省の労働力調査・2021年平均を基に国土交通省が推計)。
ベテラン技能者が引退する10年後は、人手不足が一気に加速するため、若手の確保・育成を急がなければなりません。
建設業は、ほかの業界に比べて年間賃金が低いのに加え、長時間・重労働になりがちです。労働環境の改善やICTによる業務効率化を急がなければ、社会インフラ整備にも悪影響が及ぶでしょう。
従業員の離職率が高い業界は?
人材不足を解消するには、新たな人材の確保に力を入れるだけでは不十分です。福利厚生の充実や労働環境の整備などを通じて、既存の人材が他社に流出しないようにすることも重要です。従業員の離職率が高いのは、どのような業界なのでしょうか?
生活関連サービス業・娯楽業
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、離職率が最も高いのは、「生活関連サービス業・娯楽業(20.8%)」です。この業界には、個人に日常生活に関連したサービスを提供する以下のような事業者が含まれます。
- 洗濯業
- 美容・理容業
- 旅行業
- 葬儀業
- 結婚式場業
- スポーツ施設提供業
生活に密着した業界は、営業時間が長く、勤務日も不規則になりがちです。サービス業全般は、ほかの業種に比べて賃金が安く、「労働時間に見合った収入が得られない」と感じる人は少なくありません。立ち仕事が多いことから、「体力面が持たない」という理由で辞める人もいます。
宿泊業・飲食サービス業
「宿泊業・飲食サービス業」も離職率の高さが目立ちます。この業界には、ホテル・旅館・レストランなどのほか、配達飲食サービス業や持ち帰り飲食サービス業、ナイトクラブ業などが含まれます。
宿泊業で離職率が高い原因としては、不規則な勤務形態や長時間労働などが挙げられるでしょう。ホテルは24時間営業のため、スタッフは2交代制(早番・遅番)または3交代制(早番・中番・遅番)で勤務するのが一般的です。
インバウンド需要の影響もあり、宿泊業・飲食業は人手不足になりやすく、店舗によっては希望する日に休みが取れないケースもあるようです。
人手不足の解消に向けた主な施策
日本の人材不足は慢性的であり、一朝一夕で解決できるものではありません。企業は、人材確保に力を入れると同時に、既存の人材の定着率を上げる工夫をする必要があります。人材不足の解消に向けた主な施策を紹介します。
幅広い人材の活用
深刻化する人手不足に対応するには、新卒の若手だけでなく、女性・シニア・外国人などを幅広く採用することが肝要です。
実際、短時間シフト勤務を導入したり、文理・男女・国籍を問わない採用方針を掲げたりして、採用の間口を広げる企業が増えています。
看護師や介護士など、国内には「就業していない潜在的有資格者」が一定数存在します。人材の掘り起こしと有効活用が人材不足を解消する鍵となるのは明らかです。
必要なスキルを持つ人材がいなければ、新たに採用するのではなく、既存の人材を育成してスキルを身に付けてもらう手も有効です。時代とともに求められるスキルは変わるため、リスキリングや学び直しの制度の導入も検討しましょう。
働きやすい職場づくり
人材を外から確保するだけでなく、既存の人材に長く働いてもらうことも重要です。デジタル化に伴い、近年は働く人のライフスタイルや価値観が多様化しています。特に、若手従業員の離職を防ぐには、柔軟な働き方を取り入れたり、福利厚生を充実させたりする工夫が欠かせません。
また、職場の労働環境の良しあしは、人材の定着率に直結します。以下のような対策を通じて、働きやすい職場づくりを心掛けましょう。
- 長時間労働の是正
- 有給休暇の取得促進
- ハラスメントの撲滅
- 社内コミュニケーションの活性化
- 公正で透明性の高い人事評価制度の確立
「TUNAG」でエンゲージメントを強化
人材の離職率が低い組織は、「従業員エンゲージメント」が高い傾向があります。企業と従業員、または従業員間の絆を意味し、絆が深まれば深まるほど、生産性の向上や離職率の低下、事業の成長といったプラスの効果がもたらされます。
従業員エンゲージメントを強化するには、組織に存在するさまざまな課題を解決し、従業員が働きやすい環境をつくることが欠かせません。組織改善クラウド「TUNAG」を活用すれば、業務の効率化と従業員エンゲージメントの向上の両方が改善されます。
以下、TUNAGを用いてエンゲージメントを高め、離職率を改善した事例です。
物流業界ならではのコミュニケーションや離職率の課題を改善 - 株式会社ダイセーセントレックスのTUNAG活用事例 | TUNAG(ツナグ)
アルバイト定着率が30%改善、3ヶ月で300名採用:BPが「友達に紹介したくなるバイト先」を作るまで | TUNAG(ツナグ)
TUNAGを活用して離職率を改善した要因として、以下の点が挙げられます。
- 従業員同士の承認文化の醸成:サンクスカードの導入により、社員間で感謝や称賛を伝える文化を育成し、モチベーションを向上させました。
- 経営層からの情報発信強化:経営陣が定期的にメッセージを発信することで、従業員との一体感を高め、組織への帰属意識を向上させました。
- 社内コミュニケーションの活性化:社内SNSとしてのTUNAGを活用し、拠点間や部門間の情報共有を促進。従業員同士の交流を深め、組織全体の連携を強化しました。
- ペーパーレス化による業務効率化:紙媒体での情報共有をデジタル化し、業務の効率化を実現。従業員が必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整備しました。
これらの施策により、従業員のエンゲージメントが向上し、離職率の改善につながりました。離職率の高さやエンゲージメントの低さに悩む組織において、TUNAGは効果的なソリューションを提供します。
TUNAG(ツナグ) | 組織を良くする組織改善クラウドサービス
人手不足が経営に及ぼす影響は大きい
日本の人材不足は、何年も前から問題になっていますが、ここ数年はデジタル化の進展で若者の価値観が多様化し、組織に属さない働き方を選択する人も増えています。労働力人口の減少が進む中、人材が確保できない状態が続けば、経営の屋台骨が揺らぎかねません。
人材不足を解消するには、「この会社に貢献したい」という人材を増やす必要があります。採用の強化も重要ですが、既存の人材を大切にする組織風土や仕組みをつくることが求められます。まずは、従業員エンゲージメントを見える化し、課題を洗い出すところから始めましょう。