ホテル業界の離職率はなぜ高い?主な理由と改善に成功した事例を紹介
ホテル業界は全産業の中でも離職率が高い業界です。労働時間・有給休暇取得率・平均賃金も産業別に見ると低水準になっており、定着率を向上させるためのポイントといえるでしょう。ホテル業界の離職率の現状や高い理由、改善の方法を解説します。
ホテル業界の離職率の現状
ホテルの経営に携わる人の中には、離職率が高いことに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。まずは、ホテル業界の離職率の現状を知り、自社だけが高いわけではないことを理解しましょう。
2023年の離職率は全産業中2位
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果」を見ると、産業別の離職率が分かります。2023年における「宿泊業・飲食サービス業」の離職率は26.6%で、全産業中2位です。
厳密には飲食サービス業も含まれるため、宿泊業が単独で全体2位というわけではありません。ただし、産業別で見ると離職率が高い業界であることは分かるでしょう。
なお、ホテル業界は業界内での転職が多いことでも知られています。同調査によると、「宿泊業・飲食サービス業」の入職率は32.6%で、離職率と同じく全産業中2位です。
ホテル業界の離職率が高い理由
ホテル業界は仕事がハードな上に労働時間が長く、休みも取りづらい傾向があります。また、賃金水準が低いこともポイントです。公的なデータも参考にしながら、ホテル業界の離職率が高い理由について詳しく解説します。
業務負担が大きい
ホテルの仕事は多岐にわたり、従業員はさまざまな業務をこなしています。分業が確立しているホテルもありますが、1人で複数の業務を掛け持ちするケースも少なくありません。
また、ホテルには多くの宿泊客が訪れるため、不特定多数の人とやり取りする必要もあります。通常業務をこなしながら接客もしなければならず、精神的なストレスもたまりやすいでしょう。
近年はどの業界も人材不足が深刻化しており、ホテル業界も例外ではありません。少ない人員で業務を回しているホテルも多く、従業員1人あたりの負担はより大きくなっています。
労働時間が長い
ホテル業界の離職率が高い理由の1つに、労働時間が長いことが挙げられます。長時間労働が常態化する主な理由は次の通りです。
- 採用したスタッフがすぐに辞めるため、次の採用まで穴埋めをする
- 仕事の合間に長めの休憩を取る「中抜けシフト制」を採用しているホテルが多い
- 繁忙期に業務が増加するため残業が増える
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、「宿泊業・飲食サービス業」は「生活関連サービス業・娯楽業」と並び、週所定労働時間が最も長くなっています。
休みを取りづらい
ホテルは基本的に年中無休で営業しているため、従業員の休みも少なくなりがちです。人材が不足しているホテルの場合は、余計に休みを取りづらいでしょう。
有給休暇の取得率が低いこともポイントです。ぎりぎりの人員で業務を回しているホテルでは、自分だけ有給休暇を取るのがはばかられるケースも多いのではないでしょうか。
「令和5年就労条件総合調査」では、産業別の有給休暇の取得状況が分かります。「宿泊業・飲食サービス業」は有給休暇の取得率が49.1%で、全産業のうち唯一50%を下回っています。
賃金が低い
ホテル業界は賃金水準が低い傾向があり、収入の少なさも離職率の高さに影響を与えていると考えられます。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」によると、「宿泊業・飲食サービス業」の2023年における平均賃金は全産業中最も低く、1カ月あたり約26万円です。
なお、2023年における全労働者の平均賃金は約30万6,000円、産業別に見て最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の約41万円となっています。
ホテル業界の離職率を改善するポイント
離職改善を図るためには、どのような取り組みを行えばよいのでしょうか。ホテル業界で定着率を上げるためのポイントを解説します。
待遇を見直す
これまで解説してきたように、ホテル業界の離職率の高さには、ハードな業務内容や低水準の労働時間・有給休暇取得率・平均賃金が大きく影響していると考えられます。
したがって、ホテル業界の定着率を高めるためには、何よりもまず待遇を見直すことが重要です。業界全体の水準に合わせていては、いつまで経っても離職率は改善しないでしょう。
待遇の見直しに関する具体的な施策としては、給与水準の引き上げや働き方改革の推進などが挙げられます。
人材教育に力を入れる
ホテルで採用される人の大半は、専門学校で学んでいたり他のホテルで経験を積んでいたりと、即戦力として働いてもらいやすい人材です。
裏を返せば、教育をしなくても仕事ができると判断されやすいため、ホテル独自の業務の進め方が分からずにミスが発生しやすくなります。パワハラや人間関係の悪化も生じやすいでしょう。
このような理由から離職する人を増やさないよう、人材教育に力を入れることが重要です。マニュアルを作成したり研修制度を整えたりすれば、安心して働いてもらえるようになります。
DXを推進する
DX推進に取り組むことで、離職率の低下につながる可能性があります。デジタル化によりさまざまな業務が効率化され、従業員の大幅な負担軽減を図れるためです。ホテル業界のDX事例をいくつか紹介します。
- 顧客予約システムで自動チェックイン・アウトを実現
- 清掃ロボットの導入で従業員の清掃コスト削減
- 観光コンシェルジュロボットの設置で人的コストを削減
ホテルでDX推進に取り組むなら、エンゲージメント向上プラットフォーム「TUNAG」の導入もおすすめです。組織エンゲージメントを高めながら、情報とコミュニケーションの一元化にも役立ちます。
エンゲージメント向上プラットフォーム「TUNAG」の導入事例
TUNAGを導入して一定の効果を得られた企業の事例を紹介します。自社でどのように活用できるのか検討する際の参考にしましょう。
情報共有の課題を改善「炭平旅館」
株式会社炭平旅館は、明治元年に創業した老舗旅館です。現在は旅館以外の事業も運営しています。
TUNAGを導入する前は、事業拡大に伴いベテランと新人の意思疎通がうまくいっていないことや、私用のチャットツールを業務で使っていたことに課題を感じていました。
TUNAGの導入後は若いスタッフが運用を牽引し、年配のスタッフも積極的に活用しているそうです。世代や部署を超えたコミュニケーションの活性化に貢献しているほか、引き継ぎや業務連絡の効率化にも役立てています。
出典:旅館業ならではの情報共有の課題を改善 - 創業の精神「相手のことを一心に考え尽くす」を体現する、炭平旅館のTUNAG活用法 | TUNAG(ツナグ)
TUNAGが離職者80%減に貢献「株式会社夢現」
京都府で整骨院・鍼灸院を運営している株式会社夢現では、社内コミュニケーションがうまくいかないことにより離職が止まらないという問題を抱えていました。本部と現場の意思疎通に問題があり、会社から大切にされていないと感じる従業員が多かったようです。
TUNAGを導入してからは社長自らが積極的に情報を発信し、店舗・スタッフ間でのコミュニケーションの質も向上しました。導入前の組織診断では課題が多く見つかっていましたが、導入後は結果が改善し、離職率も約80%減少したそうです。
出典:『離職者8割減少』につながったコミュニケーション施策とは。「現場のためになる事をとにかく実行する」 | TUNAG(ツナグ)
10%を切る離職率を実現「トランコムDS株式会社」
運送業界は昔から人材不足が深刻化している業界です。個人宅配事業を展開しているトランコムDS株式会社も、人材が定着しない問題に長い間悩み続けてきました。
ミスなく配達するのが当たり前との認識が強い運送業界では、減点方式での評価が一般的です。怒られるばかりで褒める文化がない業界の常識を変えようという思いから、エンゲージメント向上を目指してTUNAGの導入に踏み切りました。
導入後は従業員から感謝の言葉をもらう機会が増え、経営と現場の距離感がぐっと縮まったと実感したそうです。導入前は毎年30%ほどの従業員が離職していましたが、導入後は10%を切る離職率を実現しています。
出典:運送業界の当たり前を変え、『離職率10%未満』を実現した取り組みとは - 「経営と現場の距離が縮まった」 | TUNAG(ツナグ)
ホテル業界の離職率をTUNAGで改善
ホテル業界は他の産業に比べて離職率が高い傾向があります。ハードな仕事内容や待遇の悪さが、従業員の定着率を下げる主な原因です。
ホテル業界で離職率を改善したいなら、待遇の見直しや人材教育の強化を図る必要があります。また、TUNAGでエンゲージメント向上を目指す施策も、離職改善に貢献するでしょう。