店舗DXとは?推進事例5社や6つの課題、メリット4選を解説

店舗DXとは、従来の店舗運営にデジタルテクノロジーやデータを組み込むことで、顧客体験や効率を向上させる取り組みです。 この記事では、店舗DXのメリットや推進する際の課題、さらには推進事例5選を交えて、店舗DXの重要性とその実施方法について詳しく解説します。

店舗DXとは

店舗DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、従来の店舗運営にデジタルテクノロジーやデータを組み込むことで、顧客体験や効率を向上させる取り組みです。

DXと似た意味を持つデジタル化という単語がありますが、デジタル化は手作業でおこなっていたタスクをコンピューターやソフトウェアによって自動化することを示し、「アナログからデジタルに置き換えること」を表します。デジタル化を手段として、新たな価値を想像するのがDX化です。

店舗DXでは、POSシステムや顧客データ分析、オンライン・オフライン連携などを活用し、顧客のニーズを把握し、適切な商品提供やサービスをおこなうことを重視します。AIやIoT、モバイルアプリなどの技術を活用し、顧客との接点を拡大し、購買体験を個人に適したものに変革することを目指します。これにより、顧客満足度の向上や売上の増加、効率的な在庫管理などが実現され、競争力を強化することが可能です。

店舗DXには、「店舗運営のDX」と「店舗体験のDX」の二つの側面があります。以下では、それぞれの概要を紹介します。

店舗運営のDX

店舗運営DXとは、業務プロセスの効率化、自動化、改善を通じて店舗全体の効率性を向上させることを目指します。具体的に以下のような施策があります。

  • 在庫管理と物流の最適化:デジタルテクノロジーを使用して在庫のリアルタイムモニタリングや需要予測をおこない、在庫を適切に調整し過剰在庫や品切れを防ぎます。在庫管理システムや倉庫管理システムなどが該当ツールです。
  • 労働力の最適化:スタッフのスケジュール調整やタスク割り当てを最適化するために、デジタルツールを活用し効率的な人材管理を実現する。勤怠管理システムやタレントマネジメントシステムなどが該当ツールです。
  • データ分析に基づく意思決定:データを収集・分析して得られる洞察を活用して、戦略的な意思決定や改善策の実行を支援する。顧客管理できるPOSレジなどが該当ツールです。

店舗体験のDX

店舗体験DXは、顧客が店舗での体験をより魅力的でパーソナライズされたものにするためにデジタルテクノロジーやデータを活用するアプローチです。具体的、以下のような施策があります。

  • パーソナライズされたサービス:顧客のデータをもとに、個人に合わせたオファーや推奨を提供することで、顧客のニーズに適切に応えます。マーケティングオートメーションシステムが該当ツールです。
  • デジタルインタラクション(digital interaction)の強化:インタラクションとは、人間が何かしらのアクションを起こした時に機械やサービスなどが反応することを指します。これにより顧客とのデジタルなコミュニケーションを促進します。スマートディスプレイやモバイルアプリなどの活用やARアプリやリアルタイムチャットツールが該当ツールです。
  • フィジタルコマース(Phygital commerce)の統合… フィジタルとはリアル世界とデジタル世界を融合させることです。オンラインとオフラインのショッピング体験をシームレスに統合し、顧客は両方のチャネルで一貫した顧客体験ができます。オムニチャネル統合プラットフォーム、QRコードやバーコードスキャン、モバイル支払いアプリなどが該当ツールです。

飲食店におけるDXの動向

上記のような店舗DX施策に関して、飲食業界では前向きに検討している店舗も増えている様子です。2022年におこなわれた株式会社ぐるなびが313店舗に対して行った調査では、76%の飲食店が店舗運営のデジタル化を進めることは必要と考えているという結果になりました。2022年のホットペッパーグルメ外食総研によると、コロナ禍を経てデジタルツールに興味を持つ飲食店経営者は、前年調査と比べて2.8ポイント上昇していることもわかっています。

さらにデジタルツールの導入により、顧客満足度が向上した事例が多数出てきており、デジタルツールを取り入れたお店づくりは、人手不足が問題視される業界において、ますます重要性を増していくと考えられています。

▼参考
飲食店のDX化に関する調査 | ぐるなび
飲食店経営者のDXに対する興味・関心と導入状況の実態調査(2023年3月調査) | 株式会社リクルート

店舗DXの推進事例5選

飲食店や小売業のDX化が実際におこなわれている事例4選をまとめました。店舗運営や店舗体験の問題を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

店舗運営のDX事例

1. 株式会社ドトールコーヒーの店舗とアルバイトのマッチングシステム導入

コーヒー豆の輸入から卸売・販売、喫茶店チェーン「DOUTOR」事業を展開する株式記者ドトールコーヒーでは、各店舗のヘルプ募集時間や充足時間を見える化し、アルバイトの希望とマッチングするためシステムを導入しました。アルバイトの自主性を生み出すとともに、調整時間にかかる工数も削減しています。

参考:「店舗と店舗の間に”道”ができた。」ドトールコーヒーが描く未来型店舗運営への挑戦。

2. タビオ株式会社のタブレットPOSレジ導入

靴下の企画・製造・販売を行い、「靴下屋」や「Tabio」等のブランドを国内外に展開するタビオ株式会社では、タブレットPOS導入をきっかけに、ウェブストアとリアル店舗をつなぐ仕組みを作っています。リアル店舗とWEBストアのスタンプカードのポイント統合をおこない、オムニチャネル化に成功しました。

参考:靴下専門店 Tabio | クラウドPOSレジならスマレジ

3. 株式会社木曽路のパート・アルバイトを含めた情報共有

しゃぶしゃぶ・日本料理の「木曽路」をはじめ、焼き肉店や居酒屋など、関東から九州まで約190店舗を展開する株式会社木曽路では、社内ポータル・SNSの「TUNAG」を活用したアルバイトやパートを含めた従業員の情報共有のDXに取り組んでいます。

同社では、1店舗につき調理場と接客合わせて60名ほどの、勤務形態の異なる従業員が働いています。その中で、アルバイトやパートを含めた従業員へ情報を共有することが難しいという課題を抱えていました。

TUNAG導入後は、店舗で強化してほしいことをパート・アルバイト用と社員用で分けて発信することで、必要な人にダイレクトに情報が届く仕組みを作っています。また、エリアマネージャー主導で各店舗の好事例を紹介し合う店舗間でのコミュニケーション設計や動画マニュアル・写真マニュアルの活用による教育体制の強化など、情報共有にとどまらない活用で組織を活性化させています。

導入事例記事:「不規則なシフトでも情報が行き渡る」木曽路が実践する、パート・アルバイトを含めた情報共有 | 社内ポータル・SNSのTUNAG

店舗体験のDX事例

4. スターバックスコーヒージャパン株式会社のモバイルオーダー&ペイ

米国発祥の喫茶店チェーン「スターバックス」を国内に展開するスターバックスコーヒージャパンでは2020年末から、モバイルオーダーサービスを導入しています。以前から待ち時間の長さに多くの不満が寄せられていたが、持ち帰り客の待ち時間を減らし、利便性向上を実現しています。

参考:スタバ、モバイルオーダー&ペイを都内で開始 2020年末には全国で - 産経ニュース

5. 株式会社ニトリのVR活用バーチャルショールーム

家具・インテリア用品の企画・販売を行う株式会社ニトリでは、実店舗のコーディネートルームを再現したVR空間「ニトリバーチャルショールーム」を実施しています。店内を360度見渡しながらショールーム内を移動し、好みのコーディネートを探すことができます。実際の店舗を歩いているような臨場感で、気に入った商品をECサイトで購入することが可能です。

参考:ニトリがVR活用のバーチャルショールームで実店舗のような買い物体験を実現 | ネットショップ担当者フォーラム

店舗DXを進める際の6つの課題

店舗DXを進めるなら、導入前後でどのようなことに気をつけたら良いでしょうか。以下の6つの課題に対して、計画的な導入と運用管理が不可欠です。確かな基盤を築いて店舗DXをおこないましょう。

1. 適切なシステムの選定

まずは自店舗の問題を洗い出し、どのシステムが店舗DXの目標に合致し、顧客体験の向上や効率化に貢献するかを検討する必要があります。システムも一気に導入するのではなく、どの問題が一番解決すべき優先度が高いかを店舗スタッフと話し合い、それらを解決できる機能を持ったシステムを選びましょう。

2. 導入コストの見積もりと予算の確保

新たなシステム導入にはコストがかかるため、十分な予算を確保する必要があります。また、導入後の運用コストやメンテナンス費用も考慮する必要があります。

しかしながら、コストが安くても重要度の高い店舗の課題を解決するシステムでなくては、不必要な投資になりかねません。初期導入のコストや運用コストを見比べるだけではなく、導入によってどのような効果があるのかの投資対効果を算出することが、適切なシステム選定につながるでしょう。

3. 従業員研修

新たなシステムの導入に伴い、従業員の研修も課題として挙げられます。デジタルツールは便利な反面、慣れていない従業員にとっては大きな負担になります。人手不足解消のためにツールを導入したのに、店舗運営が上手く回らずに、従業員の離職率が高まってしまっては本末転倒です。

特に導入初期は、システムの使い方や機能に関するトレーニングを実施し、従業員の理解とスキル向上を支援する必要があります。導入後もシステムのアップデート等が入る可能性があるため、定期的な研修とマニュアル等の教育の仕組み化が必要です。

4. 顧客フィードバックと改善

店舗体験のDXにおいては、システム導入後に顧客の行動やフィードバックなどの一次情報を収集し、顧客のニーズや不満を把握することが大切です。これに基づいてシステムやサービスの改善をおこない、持続的な顧客満足度の向上を図る必要があります。

5. セキュリティ対策

システムのセキュリティ対策は重要です。特に個人情報を扱うシステムを導入する際は、個人保護を確保するための取り組みが求められます。

システム運営会社のセキュリティ対策への取り組みも重要ですが、導入側の運用知識やリスク対策も同様に重要になります。セキュリティに詳しい従業員がいない場合こそ、システム運営会社と密にコミュニケーションをとり、セキュリティリスクへの対策を策定することが重要になるでしょう。

6. トラブルシューティングとサポート

システムに障害や問題が発生した場合に備え、適切なトラブルシューティングとサポート体制を確立しておく必要があります。障害が早期に解決されることで、顧客体験の悪化を防ぐことができます。

店舗DXを推進する4つのメリット

小売業DXや飲食店DXを推進した際のメリットをお伝えします。以下のように、店舗DXはビジネスに大きな価値をもたらすことが期待できます。

1. 顧客体験の向上

顧客ごとに最適化されたサービスや非接触決済などのスムーズな支払い、店舗と顧客の双方向性のある情報提供などにより、顧客はより便利で満足度の高い体験を得ることができます。満足度の高い体験を提供することで、顧客のロイヤリティを高め、リピーターの増加や口コミでの広がりに繋げることが可能です。

関連記事:店舗運営のQSCとは?QSCAとの違い、向上施策3選を解説 | 社内ポータル・SNSのTUNAG

2. 売上の増加

顧客ごとに最適化されたキャンペーン案内やクーポン配布などを実施し、購買意欲を高めることで、売上を増加させることが可能です。また、オンラインストアと連携することにより、顧客はオンラインとオフラインで大きな隔たりなく、ショッピング体験を楽しむことができます。

3. 店舗運営の効率UP

デジタル化により在庫管理やレジ業務などが効率化されます。特に店長や現場社員は事務作業に多くの時間を要すこともあり、店舗運用コストの削減とスタッフの生産性向上が期待でき、人手不足の解消が期待できます。

4. データドリブンな意思決定

デジタル化により膨大なデータが生成され、これを活用することで顧客の嗜好や購買パターンを理解しやすくなります。データに基づく意思決定をおこない、効果的なマーケティング戦略や商品企画を策定することができるようになるでしょう。

店舗DXが進む4つの背景

店舗DXが進む背景として、近年の情勢で大きく関わっているのは新型コロナウイルスの影響です。以下の事例のなかでもほとんどがコロナの影響を受けていると言えます。

1. 店舗系ビジネス・サービス業の人手不足

帝国データバンクが2022年10月におこなった調査「人手不足に対する企業の動向調査」によると、飲食業の人手不足企業の割合は以下の結果でした。
・正社員……64.9%
・非正社員……76.3%
これを全業種平均の人手不足企業の割合(正社員が51.1%、非正社員が31.0%)と比較すると、とりわけ人手不足の企業が多いことがわかります。
労働条件が厳しいことや給与待遇が低いことなどを理由に、飲食業界の人手不足は慢性的に続いています。ここへコロナ禍の休業による離職者が増えたことで、人手不足が加速してしまったのが実情です。

参考:人手不足に対する企業の動向調査(2022年10月) | 帝国データバンク
関連記事:飲食店が人手不足に陥る4つの理由や対策7選を解説 | 社内ポータル・SNSのTUNAG

2. ECサイトの利用率増加

コロナ感染拡大防止のため、自宅待機や社会的距離の確保要請によりEC利用が急速に拡大しました。2021年に野村総合研究所が生活者1万人を対象におこなった調査によると、過去1年間のECサイト利用者は平均68%でした。年代別で見ると、20代が80%、30代が86%、40代が78%、50代が66%でした。

ECサイトの利用者が増えている中で、店舗の新しい販路であるオンラインショッピングの開設や体験を向上させる動きが、店舗DXを後押ししていると考えられます。

参考:生活者1万人アンケート(9回目)にみる日本人の価値観・消費行動の変化 | 株式会社野村総合研究所

3. 決済手法のキャッシュレス化

2021年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングがおこなった調査によると、2021年のキャッシュレス決済比率は32.5%でした。2010年から毎年おこなわれている調査で、右肩上がりに比率が伸びています。利便性や効率性、セキュリティの向上によってキャッシュレス化が進んできました。さらにコロナ禍で感染リスクの低いキャッシュレス決済が増えたことや、国が推進していることも理由のひとつと言えます。

参考:キャッシュレス決済の動向整理 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング

4. デジタルテクノロジーの急速な進化

AIが普及しているように、近年はデジタルテクノロジーが急速に発展しています。AIは大量のデータから自律的にパターンを学習する機械学習が可能です。これにより、店舗売り上げや在庫量の予測などもAIに任せることで、さらに高精度かつより効率的な運営が期待できるでしょう。

参考:DXとAIの関係性は?AI導入の進め方・事例も解説|サービス|法人のお客さま|NTT東日本

まとめ

店舗DX化は、顧客ニーズへの適切な対応と売上拡大に向けた一大プロジェクトであり、ビジネスの成長と発展に向けた重要な一歩と言えます。メリットを理解し、自店舗の目標にあった適切なシステムを利用することで、店舗DX化を目指しましょう。

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