組織が機能するために必要な要素とは?機能不全に陥る原因や構造的な解決法

企業活動の中核を担う「組織」が正しく機能しなければ、十分な成果を生み出すことは難しいでしょう。実際、企業の成長鈍化や低迷の原因をたどっていくと、組織内部の「機能不全」が原因であることは少なくありません​。だからこそ、組織の構造や人間関係に目を向け、機能不全に陥る原因とその改善策を構造的に考えていく必要があります。

組織が機能するための基本要素

組織が健全に機能し、高い成果を生み出すには、構成員が「何のために働くのか」「どう連携するか」「どのように力を発揮するか」という三つの観点を共有していることが不可欠です。

アメリカの経営学者チェスター・バーナードは、組織の成立と持続には「共通目的」「コミュニケーション」「貢献意欲」の三要素が必要だと提唱しました。

これらがそろってはじめて、個人の活動が組織としてまとまり、成果につながるのです。ここでは、それぞれの要素が持つ意味と重要性について、改めて確認していきましょう。

共通目的

共通目的とは、組織に属する全ての人が理解し、共有すべき「存在意義」や「目指す方向性」のことです。

共通の目的が明確であれば、業務の判断軸や行動方針がぶれにくくなり、部署や職種が異なっても同じゴールを目指して動けるようになります。

一方で、共通目的が曖昧なままでは、社員が自分の仕事の意味を見いだせず、ただ与えられた業務をこなすだけの「指示待ち」状態になりがちです。

全社で価値観を共有し、ミッションが浸透するよう日常的に言語化・発信していくことが、組織の一体感を醸成する第一歩となります。

コミュニケーション

どれだけ優れた戦略やビジョンがあっても、社内に十分に共有されていなければ、実行に移すことはできません。

組織におけるコミュニケーションとは、単に「話す・聞く」だけでなく、相手の意図を正しく理解し、自分の考えを分かりやすく伝えるという双方向のやりとりを意味します。

報連相(報告・連絡・相談)が機能していない職場では、業務の重複や情報伝達の遅れが生じ、トラブルの温床になりかねません。

また、上下関係や部署間で「話しかけにくい雰囲気」があると、ささいな不安や課題が表に出てこず、意思決定のスピードや質にも悪影響を及ぼします。

日頃から風通しの良い環境をつくり、雑談やオンライン朝礼などカジュアルな場面でも気軽にやりとりできる関係性を築くことが、組織を強くする鍵となります。

貢献意欲

貢献意欲とは、メンバーが「自分の力を組織のために使いたい」と感じ、自発的に動こうとする意志のことです。

この意欲が高い人材は、成果のために工夫を凝らしたり、周囲と協力して困難に立ち向かったりと、組織を前向きにけん引してくれます。

貢献意欲は「自分の役割が認められている」と実感できる環境があると自然に育まれます。例えば、仕事の成果を適切にフィードバックされたり、ちょっとした努力が上司や同僚に評価されたりすることで、「もっと頑張ろう」という気持ちが強くなるのです。

逆に、貢献が軽視されていたり、評価されなかったりすると、モチベーションは著しく低下してしまいます。メンバーの想いや努力に光を当てる仕組みをつくることが、貢献意欲の維持・向上に不可欠です。

組織が機能不全に陥る原因とは

では、一見うまく回っているように見える組織が、なぜ機能不全に陥ってしまうのでしょうか。ここでは、組織を停滞させる主な原因を探ってみます。

昇進により成果が出せなくなる

優秀な社員が昇進後に成果を出せなくなる現象は、「ピーターの法則」として知られています。これは、多くの組織で見られる深刻な問題です。

プレイヤーと管理者では求められるスキルセットがまったく異なるため、昇進が「適材適所」ではなくなった瞬間、当人の能力が十分に生かされなくなるのです。

現場でよく見られるケースとしては、営業成績が抜群であった社員を管理職に抜擢したところ、本人がプレイヤーとしての仕事にこだわりすぎてマネジメント業務を十分にこなせなくなる例があります。

このような状況が続けば、本人のモチベーションは低下し、チーム全体にも悪影響が波及します。

人事制度の仕組み次第で、組織全体の力が損なわれるリスクがあることを、経営陣は改めて認識する必要があるでしょう。

市場との乖離が組織の成長を阻害する

組織が内部のことばかり見ていると、外の変化や市場の動きを見逃しやすくなります。その結果、いつの間にか顧客の求めるものと実際に提供しているサービスとの間にズレが生じてしまいます。

よくある例として、営業や現場担当者が「お客様のニーズが変わっている」と気づいても、経営陣が現状維持を優先し、その声を軽視してしまうことがあります。特に組織が大きくなるほど判断が遅れがちで、イノベーションや新しい取り組みができなくなります。そうすると、気付いたときには競合他社に追い抜かれ、市場での競争力を失うことにもなりかねません。

経営陣が現場の声や市場の変化に早めに気づき、スピーディーに戦略を調整することが、会社が成長を続けるための重要なポイントなのです。

組織文化の問題が内部環境を悪化させる

組織文化とは、日々のコミュニケーションや意思決定のあり方、価値観や行動様式に表れる「見えない空気」です。

この文化が健全でなければ、いくら制度や戦略を整えても、組織は本来の力を発揮できません。

また、短期的成果ばかりが重視される文化では、社員の主体性や協調性が損なわれ、離職につながる恐れもあります。

組織文化は一朝一夕に変えられるものではありませんが、トップの姿勢や日々の対話を通じて、少しずつ軌道修正していくことが可能です。

組織の機能を高めるための具体的施策

では、組織の機能不全を回避し、健全に機能する状態を保つには何が必要なのでしょうか。ここからは、経営層や人事責任者が取り組むべき具体的施策を紹介します。

エンゲージメントの調査と向上施策

まず着手すべきは、従業員エンゲージメントの「可視化」です。

社員が組織にどれだけの愛着や貢献意欲を持っているのか、どんな課題や不満を抱えているのかを定量的に把握するには、エンゲージメントサーベイの実施が有効でしょう。

数値化によって課題の優先順位が明確になり、場当たり的ではない、戦略的な打ち手を講じやすくなります。

その上でPDCAを回しながら、継続的な改善を図ることが組織の活性化につながります。

TERAS(テラス)は、従業員の声を収集・可視化し、エンゲージメント向上施策を自社内でスピーディーに実行できるクラウドサービスです。基本無料で始められるため、初めてのサーベイ導入にも最適です。

エンゲージメントの第一歩は、現状を知ることから。課題の見える化と改善の仕組みを備えたTERASを、ぜひご活用ください。

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管理職・リーダーの育成と役割の明確化

組織の要となる管理職やリーダー層の育成は、組織のパフォーマンスに直結する重要な施策です。

責任範囲や求められるスキルを役職ごとに明文化し、昇進・昇格時には本人に丁寧に伝えることが、ミスマッチによる機能低下を防ぎます。

また、管理職のスキルアップには体系的な研修やトレーニングが有効です。

例えば、コーチング・1on1・フィードバック力を高めるための実践型研修や、360度評価による内省支援などが挙げられます。

管理職が「人を育て、チームを導く」意識と技術を持てば、現場の士気や連携力は大きく高まり、組織全体の機能向上にもつながります。

社員の働きやすい環境を構築する

職場環境の整備は、社員が本来の力を発揮するための土台づくりです。

リモートワークやフレックスタイム制度など、柔軟な働き方の導入は、ライフステージに合わせた就業を可能にし、仕事と生活の両立を支援します。

快適な作業スペース、集中できるツールの整備、気軽に休めるリフレッシュエリアなど、物理的な快適さは心理的な安心感にもつながります。

さらに、心理的安全性の確保、公正な人間関係、挑戦を後押しする風土を育むことで、社員がのびのびと自分の力を発揮できる「働きがいのある組織」へと近づいていきます。

組織の「構造」に向き合うことが持続的成長の第一歩

組織の課題を本質的に解決し、持続的な成長を実現するためには、個々の頑張りや場当たり的な対症療法に頼るのではなく、「組織構造そのもの」に目を向ける視点が欠かせません。

経営学者チェスター・バーナードも、組織の持続性には「内部の安定(メンバーの納得と貢献意欲)」と「外部との適応(顧客や市場への価値提供)」の両立が不可欠であると説いています。

これはまさに、組織内部の構造と外部環境への対応力の双方を整えることの重要性を示す考え方です。

属人的な対応に頼るのではなく、組織そのものを「構造的に強くする」こと。それが、真に機能する組織への第一歩であり、持続的な成長を可能にする土台となるのです。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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