健康経営で企業イメージが向上?注目される背景と実施のポイント

従業員の健康管理を経営戦略の一つとして捉える「健康経営」に注目が集まっています。生産年齢人口の減少で人手不足が深刻化する中、健康経営は企業に多くのメリットをもたらすでしょう。企業イメージへの影響や取り組み例、実施のポイントを解説します。

企業イメージの向上につながる「健康経営」とは?

企業イメージは、業績や採用活動に大きな影響を与える要素です。健康経営に取り組む企業は、社内外に「従業員を大事にする企業」というプラスのイメージを与えます。健康経営の定義や重要性、具体例について理解を深めましょう。

健康経営の定義

健康経営は、アメリカの心理学者であるロバート・H・ローゼン博士が1990年代に提唱しました。従業員の健康管理と経営をひも付けた取り組みであり、「健康な従業員がいる会社ほど生産性が高い」という考え方がベースです。

経済産業省では「従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています。経済産業省の資料によると、健康経営の推進に対する全社方針を社内向けに明文化している企業は、2014年度では53.3%でしたが、2021年度では92%にも上っています。

出典:健康経営(METI/経済産業省)

健康経営の推進について|経済産業省ヘルスケア産業課

健康経営優良法人認定制度の仕組み

経済産業省では2016年、優良な健康経営を実践している企業を顕彰する「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。健康経営優良法人に認定された企業は、自治体や金融機関でインセンティブが受けられるほか、HPなどで健康経営優良法人ロゴマークを使えるようになります。

経済産業省では、健康経営優良法人に連続認定された企業にアンケートを実施しました。認定後の変化について、「株主からの評価が上がった」「従業員の貢献意識が高まった」などの声があり、ステークホルダーとの関係性構築や企業イメージ向上に一定の効果があることが分かっています。

出典:健康経営の推進について|経済産業省ヘルスケア産業課

健康経営の具体例

健康経営の内容は企業ごとに異なりますが、多くの企業では健康経営優良法人認定制度の認定基準に基づいた取り組みを実施しています。以下は、取り組みの一例です。

  • 定期健診の受診率100%を目指す
  • 健康に関する従業員向けのセミナーを行う
  • ストレスチェックシステムを導入する
  • 受動喫煙対策を徹底する
  • 有給休暇の取得を推奨する


取り組み内容を検討するに当たり、自社の健康課題の洗い出しを行います。他社の取り組みをそのまま用いるのではなく、自社の課題や現状に合わせることが重要です。

出典:健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定要件

健康経営が重要視される背景

これまでは、自分の健康は自分で管理するのが当たり前でしたが、近年は経済産業省を中心に健康経営を推進する動きがあります。その背景には、少子高齢化や社会保障給付費の増大といった日本ならではの課題があります。

少子高齢化に伴う人手不足

日本では、少子高齢化によって生産年齢人口が減少し、多くの中小企業では人手不足が生じています。今後も採用難は続くと予想されており、今いる従業員に長く働いてもらうことの重要性が高まっているのが実情です。

健康経営優良法人に認定されれば、「従業員の健康に配慮した職場」というプラスのイメージにつながります。従業員の離職率が低下するだけでなく、「この会社で働きたい」という応募者が増える可能性があるでしょう。健康経営は企業の採用面を強化する役割もあるのです。

価値観の多様化と働き方改革の推進

健康経営が重視される理由には、価値観の変化が関係しています。かつてはがむしゃらに働くのが美徳とされ、残業をするのが当たり前だった時代もありました。

しかし近年は、価値観の多様化や働き方改革の広がりにより、ワーク・ライフ・バランスを重視する人が増えています。

従業員が健康で生き生きと働ける企業は高く評価される一方、従業員に厳しい労働条件を強いるブラック企業は世間から厳しい目を向けられます。企業が成長を続けていくためにも、時代の流れや価値観の変化に合った経営を行う必要があるでしょう。

社会保障給付費の増大

日本では、少子高齢化や現役世代の減少により、医療費や介護費などの社会保障給付費が増大しています。社会保障給付費とは、医療・介護・年金などに割り当てられるお金のことで、現役世代が納める保険料や税金などが財源です。

増加し続ける社会保障費を少ない現役世代が支える構図になるため、このまま高齢化社会が進展すれば、国民皆保険の維持自体が危ぶまれる恐れがあります。国としては、健康経営の取り組みを後押しすることで国民の健康を増進し、社会保障給付費の増大を抑えたい考えです。

健康経営を行う主なメリット

従業員の健康管理を経営的な視点で考えることは、企業に多くのメリットをもたらします。企業イメージが向上するほかに、どのようなプラスの効果が見込めるのでしょうか?

労働生産性が向上する

健康経営の具体的な取り組みには、有給休暇の取得の推進や労働時間の見直し、ストレスチェックの実施などが挙げられます。

これらの取り組みを継続的に行うことで、従業員の心と体の健康が維持されます。仕事に対するモチベーションの向上や労働生産性の向上がもたらされ、結果的に企業の業績アップにつながるのがメリットです。

また、健康経営によって労働環境の整備が進めば、従業員は安心して長く働けます。採用難が続く中でも優秀な人材が集まるようになるため、企業のさらなる発展が期待できます。

労働災害が減少する

労働者の安全と健康の確保が企業の義務です。企業は職場環境の整備を行い、労働災害を未然に防ぐ努力をしなければなりません。

健康経営を実施すると、健康に不安がある労働者が減り、労働災害のリスクが大幅に減少するのがメリットです。長期の欠勤や体調不良によるミスも減るため、生産性も向上します。

逆に、従業員へのケアが行き届いていない企業では、長時間労働が常態化したり、膨大なタスクに追われてストレスがたまったりする人が増加します。事故を引き起こすリスクも高く、労災保険料や治療費といった労災コストが高くつくでしょう。

医療費負担の軽減につながる

健康経営により、会社側の医療費負担が軽減されるのもメリットです。社会保険適用事業所の場合、条件を満たす従業員を社会保険に加入させる義務があります。

病気やけがなどに備える「健康保険」の保険料は、従業員と会社が折半で支払っており、病院にかかる回数が増えれば、それだけ企業の社会保険料負担も増加することを意味します。

健康経営に取り組むと、体調を崩したり、けがをしたりして病院にかかる従業員が減少するため、企業の負担も軽減されるのがメリットです。

従業員エンゲージメントが高まる

福利厚生の充実や労働環境の整備は、従業員の働きやすさにつながります。自分の個性や能力を生かしながら、日々の業務に生き生き取り組めるようになり、この会社で働いて良かったと感じる従業員が増えるでしょう。

企業への貢献意欲や帰属意識は、「従業員エンゲージメント」と呼ばれます。従業員エンゲージメントが高い会社は生産性が高く、離職率も低い傾向があるようです。経済産業省の資料によると、健康経営優良法人の離職率は、離職率の全国平均よりも低いことが分かっています。

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出典:健康経営の推進について|経済産業省ヘルスケア産業課

健康経営を実現するためのポイント

多くの企業にとって、健康経営は中・長期的な取り組みです。全ての従業員に目的を周知した上で、専門の推進チームを立ち上げましょう。健康経営を成功させるためのポイントを解説します。

健康経営のための体制を構築する

まずは、健康経営を推進するためのチームを立ち上げる必要があります。チームメンバーに「健康経営アドバイザー」や「健康経営エキスパートアドバイザー」の資格取得を促すなどして、推進者としての知識・スキルを身に付けさせましょう。

メンバーの知識やノウハウが不足している場合は、産業医や保健師などの外部の専門家に協力を仰ぐことをおすすめします。職場環境の改善や健康の保持・増進に関して、医学的な立場からのアドバイスが得られます。

従業員に健康経営の重要性を理解してもらう

健康経営は、経営層が主体となって推し進めるものですが、従業員の協力なしには実現できません。中には、「健康情報を知られたくない」「健康は自分で管理したい」などの意見を持つ従業員もいるでしょう。

取り組みを始める前に、健康経営の目的や背景、メリットなどをトップメッセージとして発信し、全ての従業員に重要性を理解してもらうことが重要です。

実際に取り組みがスタートすると、推進チームをはじめとする関連部署の従業員の作業負荷が増大します。通常業務に支障が出たり、残業が増えたりしては元も子もないため、施策の優先順位を絞るなどの工夫が必要です。

健康経営が企業の未来を決める

従業員を企業の重要な資本と見なし、健康に配慮した経営を行う企業は年々増加傾向にあります。健康状態と労働生産性は不可分の関係であり、健康リスクが高い従業員を多く抱えるほど、組織のパフォーマンスは下がります。

少子高齢化による人手不足が深刻化する中、健康経営が企業の未来を左右するといっても過言ではありません。健康経営に取り組むだけでも多くのメリットがありますが、健康経営優良法人に認定されれば、企業イメージ向上や採用力の強化などのプラスの効果が得られます。

著者情報

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