ミッションドリブン経営とは、企業の存在意義であるミッションを、経営判断や従業員の行動の基準にする考え方です。経営から現場まで共通の軸を持つことで、部署や役職が違っても同じ方向を向いて仕事を進めやすくなります。
ただし、ミッションを掲げただけでは、従業員の日々の判断や行動にはつながりません。経営の想いが十分に伝わっていなかったり、実際の業務と結びついていなかったりすると、理念だけが形骸化することがあります。
本記事では、ミッションドリブンの意味やMVVとの違い、組織にもたらす効果、浸透させる7つのステップ、よくある課題、企業事例まで順番に解説します。ミッションを掲げるだけで終わらせず、実際の組織づくりへ生かす際にお役立てください。
ミッションドリブンとは、企業の存在意義であるミッションを起点に、経営や現場の意思決定を行う考え方です。
理解するうえで押さえておきたいのは、次の4点です。
ミッションドリブンとは、企業の使命や存在意義を意味する「ミッション」を、組織を動かす中心に据える考え方です。
経営層だけがミッションを意識するのではなく、現場の従業員も日々の仕事で「ミッションの実現につながるか」を判断基準として使える状態を目指します。
ミッションドリブンが浸透している組織では、次のような判断が現場で生まれます。
このように、迷ったときに立ち返る基準があることで、上司の指示を待つだけではなく、従業員自身が考えて行動しやすくなります。
一方で、ミッションは一度発表しただけで、従業員全員が継続して意識できるものではありません。経営の考えや、ミッションにつながる社内の取り組みを繰り返し伝えることも必要です。
こうした情報を社内へ届ける方法の一つが社内報です。社内報とは何か、目的や作り方、活用方法についてはこちらで詳しく紹介しています。
ミッションが企業の存在意義を示すのに対し、ビジョンは目指す未来、バリューはその実現に向けて大切にする価値観や行動を示します。
それぞれの違いは、次のように整理できます。
概念 | 意味 | 具体例 |
ミッション | 企業の存在意義。なぜこの会社が存在するのか、社会にどんな価値を提供するのかを示すもの | 「すべての人に移動の自由を提供する」「情報へのアクセスを民主化する」 |
ビジョン | 将来のありたい姿。ミッションを実現した先にどんな未来を創りたいのかという目標 | 「2030年までに業界トップシェアを獲得する」「世界中で最も信頼されるブランドになる」 |
バリュー | 日々の行動指針。ミッションやビジョンを実現するために、どのような価値観や行動を大切にするのかを定めたもの | 「顧客第一」「チャレンジ精神」「誠実さ」「多様性の尊重」 |
ミッション、ビジョン、バリューは別々に考えるものではありません。何のために存在し、どこを目指し、そのためにどのように行動するのかをつなげることで、企業の方向性が分かりやすくなります。
ミッションドリブン経営を考える前に、MVVそれぞれの役割や関係を整理しておくと、何を組織の判断基準にするのかも明確になります。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の意味や違いについてはこちらで詳しく紹介しています。
イシュードリブンが目の前の課題を起点にするのに対し、ミッションドリブンは企業の存在意義を起点に判断します。
両者の違いは、次のとおりです。
イシュードリブン | ミッションドリブン | |
起点 | 目の前の課題や問題 | 企業の存在意義 |
重視する視点 | 短期的な成果や効率性 | 長期的な価値創造と持続的な取り組み |
意思決定の基準 | 今解決すべき課題は何か、最適な解決方法は何か | このミッションの実現に向けて何をすべきか |
具体例 | 「売上が低迷している。最も効果的な販促施策は何か」 | 「顧客の生活を豊かにするという使命のもと、どんな価値を提供すべきか」 |
両者は、どちらか一方を選ぶものではありません。ミッションによって大きな方向性を決め、その方向に進むために解決すべき課題をイシュードリブンで考えるという使い分けができます。
ミッションという共通の軸があれば、複数の課題が見つかったときにも、どこから優先して取り組むべきかを判断しやすくなります。
ミッションドリブンは、誰に対する価値を中心に考えるかによって、社外的と社内的の2つに分けられます。
社外的ミッションドリブンは、顧客の課題解決や社会への貢献を中心に据え、外部のステークホルダーに向けた活動を進める考え方です。
一方、社内的ミッションドリブンでは、従業員の成長や働きがい、組織文化などに目を向けます。
どちらか一方だけを見るのではなく、顧客や社会へどのような価値を届けるかと、その価値を生み出す従業員がどのように働くかの両方を考えることが大切です。
ミッションを組織共通の判断基準にすることで、従業員が自分で判断しやすくなり、部署を越えた連携や仕事への納得感にも変化が生まれます。
主に次の5つの効果が考えられます。
共通のミッションがあれば、従業員は細かな指示がない場面でも、自分で判断しやすくなります。
迷ったときに「この選択はミッションの実現につながるか」という基準を持てるためです。
例えば、顧客から想定外の要望があったときや、部門間で判断が分かれたときも、上司の承認だけを判断材料にするのではなく、ミッションを共通の基準として話し合えます。
役職に関係なく、自分の仕事がミッションへどうつながるのかを考える機会が増えることで、従業員が主体的に動きやすい環境をつくれます。
共通のミッションは、部署や職種が異なる従業員同士が、同じ目的に向かって協力するための軸になります。
それぞれの部門が自分たちの目標だけを優先すると、部門間で判断が食い違うことがあります。ミッションという共通言語があれば、「会社として何を実現したいのか」というところまで戻って議論しやすくなります。
結果として、部門を越えた情報共有や協力が進み、それぞれの役割を理解しながら仕事を進めやすくなります。
自分の仕事が企業のミッションとどうつながっているかを理解できると、仕事の意味や役割を捉えやすくなります。
日々の業務が単なる作業ではなく、「何のために行っているのか」まで理解できれば、仕事への納得感を持つきっかけになります。
ただし、ミッションを掲げるだけでエンゲージメントや離職率が改善するとは限りません。実際の仕事内容や職場環境、人間関係なども影響するため、ミッションへの共感と働く環境の両方を確認することが必要です。
ミッションに沿った事業や顧客対応を続けることで、企業が何を大切にしているのかを社外へ伝えやすくなります。
例えば、顧客の課題解決を重視するミッションを掲げている企業であれば、短期的な売上だけでなく、実際の顧客対応にもその姿勢を反映することが必要です。
掲げているミッションと実際の行動が一致していれば、顧客や取引先にとっても、企業の考え方を理解する材料になります。
ミッションという変わりにくい軸があれば、環境に合わせて事業の進め方や手段を変更しやすくなります。
市場環境や技術が変わったときに、過去の方法を守ること自体を目的にするのではなく、「ミッションを実現するには今どの方法を選ぶべきか」と考えられるためです。
何を大切にするかは変えず、その実現方法を柔軟に変えることが、環境の変化へ対応するうえでの一つの考え方になります。
ミッションドリブンな組織は、ミッションを策定するだけではつくれません。認知、共感、行動、評価まで段階的につなげていくことが必要です。
主な流れは次の7ステップです。
最初のステップは、経営層だけで言葉を決めず、実際に働く従業員の考えも取り入れてミッションをつくることです。
ヒアリングやワークショップを通じて、現場が感じている課題や、自社の強み、大切にしている考えを集めます。
また、ミッションは難しい言葉で飾る必要はありません。従業員が意味を理解でき、日常の仕事と結びつけて考えられる表現にすることが大切です。
策定した後は、まず従業員がミッションの内容と、その言葉が生まれた背景を理解できる機会をつくります。
入社時のオリエンテーションや社内ポータルへの掲載、オフィスへの掲示など、従業員が繰り返し目にする場を設ける方法があります。
経営層による説明会や部署ごとの勉強会では、言葉だけを伝えるのではなく、「なぜこのミッションなのか」まで説明すると理解しやすくなります。
内容を理解した後は、ミッションと自分の仕事とのつながりを考える機会をつくります。
ミッションを体現した仕事や顧客とのエピソードを共有すれば、抽象的な言葉が実際の行動としてイメージしやすくなります。
従業員同士がミッションについて話すワークショップなどを設け、自分の言葉で考えられる機会をつくる方法もあります。
ミッションへの理解や共感を実際の行動へつなげるには、日常の業務や評価制度と結びつけます。
例えば、人事評価にミッションやバリューに沿った行動を確認する項目を設けたり、個人やチームの目標とミッションの関係を整理したりする方法があります。
採用や育成でもミッションとの関係を意識することで、日常の人事施策と企業が目指す方向をそろえやすくなります。
ミッションを社内へ根付かせるには、経営層が継続して自分の言葉で伝えることが大切です。
社内報や全社会議などを使い、現在の事業や経営判断がミッションとどうつながっているのかを伝えます。
一方的に発信するだけでなく、従業員から質問や意見を受け取れる場を設けることで、経営と現場の認識のずれも確認しやすくなります。
ミッションを日常の仕事にまで浸透させるには、ミッションに沿った行動を従業員同士で見つけ、共有できる仕組みをつくる方法があります。
例えば、サンクスカードにバリュー項目を設定すれば、どのような行動が自社の価値観につながっているのかを具体的に共有できます。
言葉だけで理解するのではなく、実際の行動を通じてミッションやバリューに触れる機会を増やすことがポイントです。
ミッションは策定して終わりではなく、事業や社会環境の変化に合わせて、現在の組織に合っているかを確認します。
存在意義そのものを頻繁に変える必要はありませんが、表現や伝え方、浸透施策が現在の組織に合わなくなることはあります。
従業員の理解度や、実際の意思決定で使われているかも確認しながら、必要なところを見直していきます。
ミッションドリブン経営がうまく進まない原因は、ミッションそのものより、策定後の伝え方や日々の仕事との結びつきにある場合があります。
主な課題は、次の4つです。
ミッションドリブン経営で起こりやすいのが、言葉を作っただけで、その後の仕事に使われていない状態です。
従業員がミッションを知らない、意味を理解していない、実際の判断で使っていない場合は、策定しただけでは組織の行動は変わりません。
形骸化を防ぐには、ミッションを継続して伝えるだけでなく、日々の業務や評価、社内での称賛などと結びつけることが必要です。
組織が大きくなると、経営層が考えていることを現場へ直接伝える機会が減り、ミッションの背景まで共有されにくくなります。
中間管理職を経由する中で情報が十分に伝わらなかったり、反対に現場の声が経営層へ届かなかったりする場合もあります。
こうした情報の断絶を防ぐには、経営層が直接発信する機会と、従業員が意見を返せる機会の両方を設けることがポイントです。
ミッションを理解していても、日常業務との関係が分からなければ、実際の行動にはつながりにくくなります。
特に、店舗や現場で働く従業員にとって、経営層が掲げる言葉と目の前の仕事との関係が見えなければ、ミッションを自分の判断基準として使うのは難しくなります。
部署や職種ごとに「自分たちの仕事ではどのような行動がミッションにつながるのか」を整理し、評価や称賛にも反映すると、実際の行動との距離を縮めやすくなります。
自分の仕事が何のためにあるのか分からない状態が続くと、仕事の意味や組織への貢献を感じにくくなる場合があります。
ただし、モチベーションや離職には、業務負荷、人間関係、待遇などさまざまな要因が関係します。ミッションの浸透だけで解決できるものではありません。
ミッションとのつながりを確認するとともに、従業員が実際にどこで働きにくさを感じているのかも確認することが必要です。
こうした課題に対しては、経営からの発信、従業員同士のコミュニケーション、称賛などを継続して運用できる環境を整える方法があります。その選択肢の一つが、社内SNSや組織改善クラウドです。
ミッションを浸透させている企業では、理念を発信するだけでなく、情報共有や経営との対話、従業員同士の称賛などと組み合わせています。
ここでは、TUNAGを活用して組織づくりを進めた次の4社を紹介します。
株式会社活美登利は、本部から店舗への情報共有を見直し、アルバイトスタッフまで情報を届けられる環境づくりを進めました。
同社は、東京、神奈川、千葉に10店舗を展開し、ハワイにも店舗を持つ回転寿司チェーンです。
本部からの重要な情報が店長レベルで止まり、アルバイトスタッフまで十分に伝わらないことや、店舗間の情報共有に課題がありました。
そこで、社内コミュニケーションプラットフォーム「TUNAG」を導入し、日常業務の報告や緊急連絡などを共有できる環境を整えています。
TUNAG上で双方向のコミュニケーションや称賛にも取り組み、現在も本部と店舗のつながりをつくる施策を運用しています。
事例記事はこちら>>店長で止まっていた情報が、アルバイトまで行き届く。回転寿司店が現場DXを推進し、称賛文化の醸成に取り組む
株式会社ダイセーセントレックスは、離れて働くドライバー同士と本部をつなぎ、経営理念や社内情報を共有する環境を整えました。
同社は、食品や日用品の輸配送を行う物流会社で、全国に10拠点を展開しています。
単独で働くことの多いドライバー同士のコミュニケーション機会が限られており、経営情報や理念を現場へ届けることにも課題がありました。
そこでTUNAGを導入し、スマートフォンから社内情報や経営層のメッセージを確認できるようにしています。
同社の事例では、導入後の変化として1年で離職率が約10%改善したことも紹介されています。
事例記事はこちら>>物流業界ならではのコミュニケーションや離職率の課題を改善-株式会社ダイセーセントレックスのTUNAG活用事例
中央ロジテック株式会社は、勤務時間がそろいにくいドライバーへ情報を届けるため、TUNAGを社内の情報プラットフォームとして活用しています。
同社では、運送業という業態上、ドライバーの空き時間が異なり、朝礼など全員が集まる場を設けにくいことが課題でした。
そこで、組織や健康、教育、業界に関する情報をTUNAGへ集約しています。
社長メッセージは毎週月曜日に配信し、コメントした従業員一人ひとりへ社長が返信する運用も行っています。現在では、約8割の従業員が社長メッセージへコメントするようになったと紹介されています。
エンゲージメント向上の第一歩は「会社・人・事業」を知ること:コミュニケーションを活性化し、自走できる組織へ|TUNAG(ツナグ)
株式会社銀の葡萄は、バリューとサンクスカードを結びつけ、どのような行動が自社の価値観に合っているかを日常的に共有しています。
同社では、アルバイトだけでなく、正社員への理念浸透にも時間がかかっているという課題がありました。
そこでTUNAGのサンクスカード機能を導入し、6つのバリューから該当する項目を選んで感謝を伝える仕組みをつくっています。
サンクスカードを多く受け取ったアルバイトを食事会へ招待し、正社員登用を打診する表彰制度にもつなげています。
同社では、サンクスカードを始めてからアルバイトから正社員や準社員を希望する従業員が現れ、実際に5名ほどの採用につながったと紹介されています。また、採用単価も正社員・アルバイトともに半分ほどになったとしています。
採用単価が半分に。「鶏soba座銀」がアルバイトからの正社員登用を仕組み化するまで|TUNAG(ツナグ)
ミッションドリブン経営で大切なのは、ミッションを掲げることではなく、従業員が日々の判断や行動で使える状態まで浸透させることです。
まずは、現在のミッションが従業員にどの程度理解され、仕事の中でどのように使われているかを確認してみてください。知られていないのであれば発信方法を見直し、意味は理解されていても行動につながっていないのであれば、評価や称賛、日々の業務との結びつきを考えます。
拠点や雇用形態が異なり、情報発信や社内コミュニケーションを継続する仕組みが必要な場合は、組織改善クラウドを活用する方法もあります。TUNAGでは、経営からの発信や従業員同士のコミュニケーション、ミッションに沿った行動の共有などを一つの環境で運用できます。
ミッションを言葉だけで終わらせず、経営と現場が同じ判断軸を持って行動できる組織づくりにつなげていきましょう。