経理業務とは?基本から効率化・属人化の解消まで徹底解説
経理業務の非効率や属人化に悩む企業は少なくありません。本記事では、経理業務の基本から、効率化・属人化解消までを徹底解説します。SaaSやクラウド会計の活用で、経理業務を劇的に変える方法を探りましょう。
経理とはどんな業務かを理解する
まずは経理業務の基本を理解することから始めましょう。経理とは何か、そして経理担当者に求められる役割について解説します。
経理の基本業務
経理とは、企業の金銭の出入りを記録・管理・報告する業務のことです。具体的には、以下のような業務が含まれます。
主な業務内容 | 頻度・特徴 | |
日常的な経理業務 | ・請求書 ・領収書の処理 ・入出金管理 ・仕訳作業 ・現金出納管理 ・小口現金の管理 | 日次〜週次で発生 定型的な処理が多い |
月次・年次の経理業務 | ・月次決算処理 ・年次決算処理 ・帳簿の作成と管理 ・税務申告の準備 | 月末や決算期に集 中正確性が特に重要 |
管理・報告業務 | ・経営層への財務報告 ・監査対応 ・金融機関対応 | 不定期〜定期 対外的なコミュニケーションが必要 |
会計・財務との違い
経理、会計、財務はよく混同されがちですが、それぞれ役割が異なります。
主な役割 | 代表的な業務 | 時間軸 | |
経理 | 日々の金銭の出入りを記録・管理 | ・請求書処理 ・伝票入力 ・入出金管理 ・仕訳処理 | 過去〜現在(実績記録) |
会計 | 企業の財政状態を把握・分析 | ・財務諸表作成 ・原価計算 ・予実分析 ・監査対応 | 過去〜現在(実績分析) |
財務 | 企業の資金調達や運用を最適化 | ・資金繰り計画 ・投資判断 ・資金調達 ・為替リスク管理 | 現在〜将来(計画立案) |
中小企業では、これらの業務を明確に分けずに「経理財務部」として一括で担当することが多いですが、業務の性質を理解しておくことで、効率化の方向性も見えてきます。
経理担当者に求められるスキルと資格
経理担当者には、以下のようなスキルや知識が求められます。具体的には、以下のようなものです。
【求められるスキル】
- 数字への正確性と注意力
- 法令や会計ルールの基本知識
- PCスキル(特にExcel)
- コミュニケーション能力
【役立つ資格】
- 日商簿記(3級〜1級)
- 税理士
- 公認会計士
- ファイナンシャルプランナー
経理は単なる数字の処理ではなく、従業員とのコミュニケーションスキルやPCスキルなども求められます。ビジネスを数字で表現する仕事なのです。
なぜ経理業務は属人化しやすいのか
多くの企業で、経理業務の属人化が課題となっています。その理由と問題点を探ってみましょう。
担当者依存になりやすい理由とは
経理業務が属人化する根本的な理由は、組織文化と業務特性の両面に潜んでいます。
経理業務が属人化しやすい企業は「経理は専門職」という認識から、他部門が介入しづらい空気が自然と醸成されています。
経理担当者自身も「自分しかできない」という意識を持ちやすく、知識を独占することで自分の価値を高めようとする心理が働くこともあるのです。
また、経理業務の複雑性と重要性から、ミスを恐れて「確実にできる人」に任せ続ける組織的判断も影響しています。
こうした心理的・組織的要因が複合的に絡み合うことで、「経理業務の問題や改善策を誰も指摘できない」といったことが起こり得るのが、属人化する最大の理由といえるでしょう。
経理がブラックボックス化すると起きる問題
経理業務がブラックボックス化すると、まず恐ろしいのは「業務停滞のリスク」です。
担当者の病気や退職で支払いが滞り、取引先との関係悪化や遅延損害金の発生につながりかねません。
また、チェック機能が働かないため、単純ミスが長期間放置されたり、最悪の場合は不正が見過ごされたりする危険性も生じます。
加えて、「いつもの方法」が疑問視されないため、非効率な業務が改善されないまま何年も続くという生産性の停滞も深刻です。
組織の成長に伴い、こうした問題はさらに複雑化・深刻化するため、早期の対策が不可欠になります。
属人化を防ぐためにできること
経理業務の属人化を防ぐ第一歩は「見える化」です。業務フローを図式化し、誰が見ても理解できるマニュアルを作成しましょう。
そして、一人で抱え込まず、複数の担当者で業務を分担する体制を構築することが重要です。例えば、月次決算と日常業務で担当を分けたり、定期的に役割をローテーションしたりする方法があります。
属人化解消は一朝一夕には実現しませんが、小さな一歩から始めることが大切です。
経理業務を効率化するにはどうするか
経理業務の属人化解消と並行して取り組みたいのが効率化です。ITを活用した効率化方法を見ていきましょう。
SaaSやクラウド会計の導入が効果的
経理業務の効率化において、クラウド会計ソフトやSaaSの導入は大きな転換点となります。従来の経理業務のボトルネックは、場所と時間の制約、そして手作業による転記ミスでしたが、クラウドツールはこれらの課題を一気に解決します。
請求書や領収書のデータ化が簡単になり、銀行口座との連携で入出金情報が自動取得できるため、二重入力の手間も軽減され、税制改正にも自動で対応するため、常に最新の会計ルールに準拠した処理が可能になります。
導入のコストを心配する声もありますが、人件費削減や経営判断の迅速化といった目に見えない効果も含めれば、投資対効果は十分に見込めるでしょう。
経理業務を分解して見直す
新しいシステムやツールを導入する前に立ち止まり、経理業務そのものを見直す作業は不可欠です。多くの企業では、長年にわたって積み重なった業務プロセスが「当たり前」として固定化され、その中に潜む非効率や無駄が見えなくなっています。
例えば、紙の請求書を複数箇所に保管したり、同じデータを複数のシステムに手入力したりする作業が、誰も疑問を持たないまま続けられているケースは少なくありません。
こうした「見えない非効率」を洗い出さないまま新しいシステムを導入しても、古い業務プロセスを電子化するだけで、根本的な効率化は実現できません。
経理業務の分解と見直しは、限られた経営資源を最適配分するための必須プロセスといえるでしょう。
AI・RPAによる自動化で省力化を実現する
経理業務の効率化の次なるステップは、AIとRPAを活用した自動化です。
AIは請求書や領収書の内容を自動で読み取り、データ化する「AI-OCR」や、過去の仕訳パターンを学習して自動提案する「自動仕訳」などで活躍します。
一方、RPAは定型的な業務を自動実行するロボットで、月次決算処理や売掛・買掛突合などの繰り返し作業に効果を発揮します。
ただし、自動化の成功には段階的なアプローチが鍵です。いきなり全てを自動化するのではなく、効果の高い部分から始め、業務フローをあらかじめ整理しておくことが重要になります。
例外パターンへの対応策も事前に検討しておくと、導入がよりスムーズに進むでしょう。
経理の変革は組織の未来を支える
経理部門が日常業務に追われる状態から脱却することで、より戦略的な役割を担えるようになります。例えば、資金繰り予測の精度向上、投資判断に役立つ財務分析、事業部門へのタイムリーな経営情報の提供など、企業の意思決定を支える機能が強化されるのです。
また、属人化が解消されればコンプライアンスリスクも低減します。複数の目でチェックする体制が整うことで、不正やミスの早期発見が可能になり、ガバナンスが強化されるからです。
業務の可視化から始め、クラウドツールを活用しながら段階的に進めることで、確実に成果を上げることができます。まずは自社の経理業務の現状を把握し、小さな改善から着手してみてはいかがでしょうか。v