組織課題を根本解決する方法とは?具体例やリスク、効果的な対策法を紹介
離職率の上昇、生産性の低下、コミュニケーション不足など、多くの組織がさまざまな課題に直面しています。これらの問題は単発的な事象ではなく、根本的な組織課題の表れかもしれません。本記事では、組織課題の種類から発見方法、具体的な解決ステップまで、体系的に解説していきます。
組織課題の種類
組織課題は大きく「顕在課題」と「潜在課題」の2つに分類されます。それぞれの特徴を理解することで、自社の状況を正確に把握し、適切な対策を講じることができるでしょう。
顕在課題
顕在課題とは、既に表面化している組織の問題です。数値やデータで確認でき、関係者が問題として認識している状態を指します。
顕在課題の特徴は以下の通りです。
- 数値データで客観的に把握できる
- 組織内で問題として共通認識されている
- 比較的対策を立てやすい
- 放置すると更なる悪化を招く可能性が高い
顕在課題の具体例
組織で発生しやすい代表的な顕在課題として、以下の2つが挙げられます。
人材流出の急増
- 前年度5%から今年度15%への離職率上昇
- 採用コストの増大
- 技術継承の断絶による競争力低下
- 特に専門技術を持つ中堅社員の離職が顕著
生産性の著しい低下
- 残業時間の慢性的な増加(月60時間超)
- 製造業:不良品率の上昇、設備稼働率の低下
- サービス業:対応時間の長期化、顧客満足度の低下
これらの顕在課題は月次の経営会議や部門別レビューで定期的に確認できるため、早期発見と対策実施が可能です。
潜在課題
潜在課題とは、まだ表面化していないものの、将来的に組織運営に大きな影響を与える可能性がある問題です。早期発見と対策が重要となります。
潜在課題の特徴は以下の通りです。
- 数値では把握しにくく、感覚的な要素が強い
- 組織内で問題として認識されていない場合が多い
- 発見が困難だが、対策の効果は大きい
- 放置すると顕在課題に発展する可能性が高い
潜在課題の具体例
組織に潜在している主要な課題は、日常業務では気づきにくいものの、将来的に大きな問題に発展する可能性があります。
情報共有の不十分さによる問題
- 各部門の独自判断による類似プロジェクトの重複実施
- 重要情報の伝達漏れによる判断ミス
- 部門間連携不足による業務の非効率化
- 顕在化時にプロジェクト失敗や顧客クレームとして表面化
企業理念・ビジョンの理解不足
- 経営方針と現場業務の乖離
- 従業員の業務意義の喪失
- 組織全体の一体感の欠如
これらの潜在課題を早期に発見するためには、従業員満足度調査や360度評価といった定性的な手法が効果的です。
組織課題を放置することで起こるリスク
組織課題を放置すると、企業の根幹を揺るがす深刻な問題に発展する可能性があります。ここでは、組織課題が引き起こす4つの主要なリスクについて詳しく解説していきます。
人材流出の加速と採用コストの増大
組織課題を放置する問題が解決されないまま放置されると、従業員の不満が蓄積し最も深刻なリスクの一つは、企業の将来を担う人材の流出が加速することです。特に、経験豊富な中堅社員や専門スキルを持つ人材が、より良い環境やキャリアを求めて離職するケースが増加します。転職を選択する人が増加します。特に市場価値の高い専門人材や中核を担う管理職層の離職は、組織の競争力を著しく低下させる要因となります。
人材流出による財務的影響は想像以上に大きいものです。例えば、就職みらい研究所の調査によれば、2019年度の正社員1人あたりの平均採用コストは約103.3万円とされています。仮にこのデータに基づくと、200人規模の企業で離職率が5%(10人)から15%(30人)に上昇した場合、追加で20人の採用が必要となり、採用コストだけで年間約2066万円もの追加費用が発生する計算になります。
経営層としては、人材流出を単なる人事問題ではなく、経営の根幹に関わる重要課題として認識する必要があります。従業員が安心して長く働き続けられる環境を整えることは、企業の重要な社会的責任です。そして、その責任を果たすことこそが、結果として企業の持続的成長を支える基盤となるのです。
生産性低下による業績悪化と収益減少
組織課題が解決されないまま放置されると、従業員のモチベーション低下や業務効率の悪化により、生産性が大幅に低下します。製造業では不良品率の上昇や設備稼働率の低下、サービス業では顧客対応時間の長期化や契約更新率の低下といった形で表れるでしょう。
生産性低下の連鎖的な影響も無視できません。同じ業務に要する時間が増加すれば、新規案件への対応が遅れ、ビジネスチャンスを逃すことになります。品質低下によるやり直し作業の増加は、さらなるコスト増と納期遅延を招き、顧客の信頼を損なう結果となります。
意思決定の遅延は市場への対応スピードを鈍らせ、競合他社に先を越される要因となるでしょう。
従業員エンゲージメントの悪化と組織の士気低下
組織課題の放置は、従業員エンゲージメントの著しい悪化を引き起こします。従業員が自らの仕事に誇りを持ち、主体的に貢献したいと思えるような職場環境でなければ、エンゲージメントは向上しません。結果として、個々人が持つ素晴らしい能力や可能性が十分に引き出されなくなってしまいます。
エンゲージメントの低下は、顧客満足度にも直接的な影響を及ぼします。従業員が会社に対してネガティブな感情を持っていると、それが顧客対応の質や商品・サービスの品質に反映されるためです。営業担当者の熱意不足は成約率の低下を招き、カスタマーサポートの対応品質低下はクレームの増加につながります。
人事部門や経営層は、エンゲージメントを、従業員一人ひとりの働きがいや幸福に繋がる重要な指標として捉える必要があります。従業員が満たされてこそ、その活気が顧客対応やサービスの質に反映され、結果として企業業績にも結びついていくと捉える必要があります。定期的なエンゲージメントサーベイの実施、改善施策の実行、効果検証のサイクルを確立することで、組織の活力を維持し、持続的な成長を実現することができるのです。
企業競争力の低下と市場での劣位に陥るリスク
組織課題を放置し続けると、最終的には企業の競争力そのものが失われ、市場での地位が危うくなります。人材流出、生産性低下、エンゲージメント悪化という負の連鎖は、イノベーション力の低下、顧客離れ、新規事業機会の喪失という形で企業の将来性を著しく損なうことになるでしょう。
競争力低下の影響は、財務面にも顕著に表れます。売上高の減少、利益率の悪化、株価の下落といった形で企業価値が毀損され、資金調達コストの上昇や投資余力の低下を招きます。優秀な人材の採用も困難になり、組織力の更なる低下という悪循環に陥る可能性が高いでしょう。
最悪の場合、事業継続が困難になり、他社への事業譲渡や廃業を余儀なくされるケースも存在します。経営層は、組織課題の放置が企業の存続そのものを脅かす重大なリスクであることを認識し、早期かつ抜本的な対策を講じる必要があります。組織課題への対応は、単なるコストではなく、企業の未来への投資なのです。
なぜ組織課題が発生するのか
組織課題は偶発的に発生するものではありません。多くの場合、組織の成長過程や外部環境の変化に対する適応不足が根本的な原因となっています。
ここでは、組織課題が発生する4つの主要な要因について詳しく解説します。
組織の成長段階と変化への対応不足
企業の成長に伴い、組織構造や管理体制を適切にアップデートできないことが、多くの組織課題の根本原因となっています。成長段階に応じた組織変革が必要な理由を理解しましょう。
例えば、従業員数が50人を超えた企業では、創業者が全従業員と直接コミュニケーションを取ることが困難になります。中間管理職の育成や情報伝達システムの整備を怠ると、経営方針が現場に伝わらず、組織の一体感が失われる結果となるでしょう。
成長期から成熟期への移行では、さらに複雑な課題が発生します。市場シェアの拡大や事業領域の多角化に伴い、組織の専門性と効率性が求められるようになります。
この段階で適切な組織改革を行わないと、意思決定の遅延や部門間の連携不足といった問題が深刻化します。
コミュニケーション構造の複雑化と情報伝達の問題
組織が大きくなるにつれて、コミュニケーション構造は必然的に複雑化します。この複雑化に対する適切な対策を講じないと、情報伝達の問題が組織課題として顕在化します。
具体的な例として、営業部門が顧客から受けた要望が、開発部門に正確に伝わらないケースが挙げられます。また、部門間の連携不足により、同じような業務を複数の部署が重複して行っているケースも見受けられます。
人事部とIT部門が別々に従業員の勤怠管理システムを検討していたり、営業部門とマーケティング部門が類似の顧客分析を独立して実施していたりする状況です。
管理部門や経営層は、組織内のコミュニケーション構造を定期的に見直し、情報伝達の最適化を図る必要があります。
経営層と現場の認識ギャップと意思決定の課題
例えば、経営層が「顧客満足度向上」を最優先課題として掲げた場合を考えてみましょう。しかし、現場では人手不足により一人当たりの業務負荷が過大になっており、品質向上に取り組む余裕がない状況だったとします。
この場合、経営層の方針と現場の実情に大きなギャップが生じ、施策が効果的に実行されないでしょう。
また、現場からの改善提案が経営層に届きにくい組織構造も問題となります。例えば、中間管理職が多忙さやプレッシャーから現場の声を十分に吸い上げられなかったり、あるいは声を上げても経営層に届かないような文化があったりする場合、従業員のモチベーション低下と組織の改善機会の喪失につながります。
外部環境変化への適応力不足と組織の硬直化
現代のビジネス環境は急速に変化しており、この変化に適応できない組織はさまざまな課題に直面します。特に、デジタル化の進展や働き方改革、グローバル化などの大きな変化に対する適応力不足が深刻な問題となっています。
外部環境変化への適応力不足が引き起こす問題は以下の通りです。
- 新しい技術やツールの導入に対する抵抗感
- 従来の業務プロセスに固執する組織文化
- 市場ニーズの変化に対する感度の低下
- 競合他社の動向を把握できない情報収集体制の不備
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応も重要な課題です。競合他社がデジタル技術を活用して業務効率化や新サービス開発を進める中、従来のアナログな業務プロセスに固執する組織は競争力を失っていきます。
特に、意思決定権を持つ経営層や管理職が新しい技術に対して理解不足の場合、組織全体の変革が困難になるでしょう。
組織課題の発見方法
組織課題を効果的に解決するためには、まず課題を正確に発見することが重要です。ここでは、組織課題を体系的に発見するための5つの具体的な方法について詳しく解説します。
社内アンケート調査で課題を可視化する
社内アンケート調査は、組織課題を定量的に把握する最も基本的で効果的な方法の一つです。従業員の声を直接聞くことで、経営層では気づきにくい現場の課題を発見できます。
アンケートで聞くべき主要な項目としては、職場満足度、上司とのコミュニケーション、業務負荷、キャリア開発機会、会社への愛着度などが挙げられます。
また、アンケート結果は数値だけでなく、自由記述欄のコメントからも貴重な情報が得られます。具体的な声から、業務プロセスや組織構造の改善点を発見できるでしょう。
1on1面談による深層課題の発見テクニック
1on1面談は、アンケート調査では把握しきれない深層的な課題を発見するための重要な手法です。個別の対話を通じて、従業員の本音や潜在的な不満を引き出すことができます。
効果的な1on1面談を実施するためのテクニックは以下の通りです。
- 安心して話せる環境づくりを心がける
- オープンエンドな質問で深掘りする
- 傾聴の姿勢を保ち、判断や評価を避ける
- 定期的に実施して信頼関係を構築する
例えば、ある従業員が「最近チームの雰囲気が悪い」と発言した場合、その背景には業務分担の不公平さや、特定のメンバーの態度の問題、プロジェクトの進め方への不満などが隠れている可能性があります。1on1面談を通じてこれらの深層課題を明らかにすることで、表面的な対策ではなく根本的な解決策を検討できるでしょう。
組織サーベイツールを活用した客観的診断
組織サーベイツールは、科学的なアプローチで組織の状態を客観的に診断できる有効な手段です。特に、専門的な分析フレームワークを用いることで、組織課題の全体像を体系的に把握できます。
組織サーベイツールでおすすめなのが「TERAS(テラス)」です。TERASは、エンゲージメントに大きく影響を与える8つのカテゴリーで診断結果を解析し組織課題を発見するのに役立ちます。
社内会議とブレインストーミングの実践
従業員同士の意見交換を通じて組織課題を発見する方法も重要です。多様な視点からの意見を集めることで、個人では気づかない課題や、部門を横断する問題を発見できます。
効果的な会議やブレインストーミングの進め方は以下の通りです。
- 部門横断のメンバーで構成する
- 批判を避けて自由な発言を促す
- ファシリテーターを配置して議論を整理する
- 出された意見を体系的に分類・整理する
会議では、「現在の業務で最も困っていることは何か」「理想的な職場環境とは何か」「他部門との連携で改善したい点は何か」といったテーマで議論を進めます。異なる部門のメンバーが参加することで、普段は見えない部門間の課題や、組織全体の問題が浮かび上がってきます。
データ分析とITツールによる課題の客観的把握
現代の組織では、さまざまなITツールが業務で活用されており、これらのツールから得られるデータを分析することで、客観的に組織課題を発見できます。定性的な調査だけでは見えない課題を、数値データから読み取ることが可能です。
例えば、勤怠データを分析すると、特定の部門や職種で残業時間が突出している、有給休暇の取得率が著しく低いといった問題が明らかになります。
人事データの分析では、離職の傾向やパターンを把握できます。入社3年以内の離職率が高い、特定上司の部下の離職率が突出している、昇進機会の少ない職種で離職が多いといった傾向が見えてくれば、採用・育成・評価制度の見直しが必要な課題として認識できます。
組織課題解決の実践的な6ステップ手順
組織課題を効果的に解決するためには、体系的なアプローチが不可欠です。ここでは、多くの組織で実証されている6つのステップに沿って、実践的な課題解決手順を詳しく解説します。
Step1:課題の洗い出しと現状把握
組織課題解決の第一歩は、現状を正確に把握することです。前章で紹介したさまざまな方法を活用して、組織内に存在する課題を包括的に洗い出しましょう。
この段階では、判断や評価を行わず、事実をありのまま収集することが重要です。例えば、「営業部の離職率が20%」「顧客満足度が前年比10%低下」といった具体的な数値データを収集します。
現状把握の際は、組織図や業務フロー図を作成し、情報を可視化することも効果的でしょう。どの部門で、どのような課題が、どの程度の規模で発生しているかをひと目で理解できるようになります。
Step2:課題の共有と全社的な認識統一
洗い出した課題について、組織全体で共通認識を構築することが次のステップです。
課題共有の場では、収集したデータを分かりやすく整理して提示します。グラフや図表を活用し、視覚的に理解しやすい形で情報を伝えることが重要です。
また、課題の背景や経緯についても説明し、なぜその課題が発生したのかについて関係者の理解を深めます。単に「営業部の離職率が高い」と伝えるだけでなく、「業務負荷の増加」「評価制度への不満」「キャリアパスの不明確さ」といった具体的な要因についても共有しましょう。
Step3:根本原因の分析と要因特定
課題の共有が完了したら、それぞれの課題の根本原因を分析し、真の要因を特定します。表面的な現象だけでなく、その背景にある構造的な問題を明らかにすることで、効果的な解決策を立案することが可能です。
根本原因の分析では、複数の要因が複合的に影響している場合が多いことを認識する必要があります。離職率の上昇という課題の背景には、評価制度の不公平感、キャリア開発機会の不足、上司のマネジメント能力不足、業務負荷の偏りなど、さまざまな要因が絡み合っています。これらの要因間の関係性を明確にすることで、優先的に対応すべきポイントが見えてきます。
分析の過程では、現場の声を重視し、データだけでは把握できない実態を理解することが重要です。従業員へのヒアリングや現場観察を通じて、根本原因の仮説を検証し、確度の高い要因特定を行います。この段階での的確な分析が、後の解決策の有効性を大きく左右するのです。
Step4:優先順位付けと解決計画の策定
根本原因が特定できたら、限られた経営資源の中で最大の効果を得るために、課題の優先順位を決定し、具体的な解決計画を策定します。
優先順位付けの判断基準は以下の通りです。
- 課題の緊急性(すぐに対応が必要か)
- 課題の重要性(経営への影響度の大きさ)
- 解決の実現可能性(利用可能な資源と実行の容易さ)
- 解決による波及効果(他の課題への好影響)
優先順位が決定したら、解決計画を策定しましょう。施策の内容やそれに必要なリソース、スケジュール、マイルストーンなどを明らかにします。
Step5:具体的な解決策の実行
計画が策定できたら、実際に解決策を実行に移します。この段階では、計画通りに進めることと同時に、実行過程で発生する問題や変化に柔軟に対応することが重要です。
実行過程では予期しない問題が発生することもあるため、週次や月次での進捗会議を設定し、計画通り進んでいない部分があれば原因を分析し、必要に応じて実施方法やスケジュールを調整します。
Step6:効果検証とPDCAサイクルの実践
解決策の実施後は、その効果を客観的に検証し、継続的な改善につなげることが重要です。これにより、組織課題解決の取り組みを継続的に発展させることができます。
効果検証のポイントは以下の通りです。
- 事前に設定した成功指標での定量的評価
- ステークホルダーへのヒアリングによる定性的評価
- 予期しない効果や副作用の確認
- 改善余地の特定と次の改善サイクルへの反映
効果検証の結果は、組織全体に共有することも重要です。改善の成果を可視化することで、課題解決に取り組む組織文化を醸成し、次の改善活動への参加意欲を高める効果が期待できます。
組織課題解決に役立つフレームワークと継続改善
組織課題の解決を効率的かつ効果的に進めるためには、実績のあるフレームワークを活用することが重要です。ここでは、多くの組織で成果を上げている4つの主要なフレームワークについて詳しく解説します。
マッキンゼーの7Sモデルによる包括的分析
マッキンゼーの7Sモデルは、組織を7つの要素から包括的に分析し、組織課題の全体像を把握するための強力なフレームワークです。各要素が相互に影響し合うことを前提として、バランスの取れた改善策を検討できます。
7つの要素は以下の通りです。
- Strategy(戦略):組織の方向性と競争優位の源泉
- Structure(組織構造):部門編成と権限・責任の分担
- Systems(システム):業務プロセスと情報システム
- Shared Values(共通価値観):組織文化と行動規範
- Style(スタイル):リーダーシップと管理方法
- Staff(人材):人的資源と能力開発
- Skills(スキル):組織に蓄積された能力と知識
7Sモデルは特に、大規模な組織変革や事業統合の際に有効です。各要素の現状と理想状態のギャップを分析することで、優先的に対応すべき領域が明確になります。
ハード面(戦略、構造、システム)とソフト面(共通価値観、スタイル、人材、スキル)のバランスを考慮しながら、段階的な改革計画を立案することが成功の鍵となるのです。
KPI設定による進捗管理と効果測定
組織課題解決の取り組みを成功させるためには、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定と継続的な測定が不可欠です。KPIを設定することで、改善の進捗を客観的に把握し、必要に応じて軌道修正を行うことができます。
効果的なKPI設定のポイントは以下の通りです。
- SMART原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限明確)に基づく設定
- 結果指標(アウトカム)と活動指標(アウトプット)の組み合わせ
- 短期・中期・長期の時間軸での指標設定
- 定期的な見直しと改善による指標の最適化
KPIの測定結果は、定期的に関係者に共有し、データに基づいた議論を促進することが重要です。目標未達の指標については、その原因を分析し、追加施策や実施方法の見直しを行います。
成功している指標については、その要因を分析し、他の領域への水平展開を検討することで、組織全体の改善スピードを加速させることができるのです。
タックマンモデル
タックマンモデルは、チームや組織の発展段階をステージ別に説明するフレームワークです。ブルース・タックマンが1965年に提唱した4段階モデルに、1977年にAdjourning(散会期)が追加され、現在は5段階モデルとして広く活用されています。
5つのステージは以下の通りです。
- Forming(形成期):メンバーが集まり、チームの目的や役割を理解する段階
- Storming(混乱期):意見の対立や役割の競合が発生する段階
- Norming(規範期):チームのルールや働き方が確立される段階
- Performing(実行期):チームが高いパフォーマンスを発揮する段階
- Adjourning(散会期):目標達成後、メンバーごとにフィードバックを行う段階
各ステージでは異なる課題が発生するため、ステージに応じた支援が必要です。
形成期では、チームの目的や役割の明確化、メンバー同士の相互理解促進が重要です。混乱期では、対立を建設的な議論に転換するためのファシリテーションや、コミュニケーションルールの設定が効果的でしょう。
規範期では、確立されたルールの定着とチーム文化の醸成に注力し、実行期では高いパフォーマンスの維持と継続的な改善に取り組みます。
例えば、新しくプロジェクトチームを立ち上げた際に、メンバー間の対立が頻発している場合、そのチームは混乱期にあると判断できます。この段階では、対立の原因を分析し、建設的な議論を促進するルールづくりや、メンバー間の理解を深めるための取り組みが必要になります。
フューチャーサーチ
フューチャーサーチは、組織の未来像を共同で描き、そこに向けた行動計画を立案するためのワークショップ手法です。多様なステークホルダーが参加し、対話を通じて組織課題の解決策を見つけ出すことができます。
フューチャーサーチは通常2〜3日間のワークショップとして実施され、以下のステップで進められます。
- 過去の振り返り:組織の歴史や個人の経験を共有し、現在に至るまでの背景を理解します
- 現在の状況把握:組織の強みや課題、外部環境の変化について多角的に分析します
- 未来像の描画:理想的な組織の状態を具体的にイメージし、共有します
- 行動計画の策定:未来像の実現に向けた具体的なアクションを計画し、実施体制を決定します
例えば、部門間の連携不足という組織課題を解決するためにフューチャーサーチを実施する場合、各部門の代表者が参加し、理想的な連携状態を共同で描きます。
その過程で、これまでの連携阻害要因が明らかになり、解決に向けた具体的なアクションが参加者の合意のもとで決定されるでしょう。
フューチャーサーチの成功には、多様性の確保と心理的安全性の担保が不可欠です。階層や部門を超えた参加者構成により、組織の全体最適を目指した議論が可能になります。ファシリテーターの適切な介入により、建設的な対話を促進し、実現可能な行動計画へと導くことで、組織変革への強力な推進力を生み出すことができるのです。
組織課題の発生を予防する「TERAS」「TUNAG」
組織課題の解決と同じくらい重要なのが、課題の発生を未然に防ぐ予防策です。ここでは、継続的な組織診断と改善施策の実行により、組織課題の予防を支援するツールについて解説します。
定期的な組織診断とモニタリング体制の構築
組織課題を予防するためには、組織の状態を継続的に監視し、問題の兆候を早期に発見することが重要です。TERASは、科学的なアプローチで組織の健康状態を定期的に診断し、課題の予防に役立てることができます。
TERASによる組織診断では、以下の要素を総合的に評価します。
- 組織風土と文化の健全性
- リーダーシップの発揮状況
- チームワークとコミュニケーションの質
- 従業員のエンゲージメント度
- 業務プロセスの効率性
定期的な診断により、組織の変化を時系列で把握し、悪化の兆候があれば早期に対策を講じることができます。例えば、四半期ごとの診断で従業員満足度が徐々に低下している傾向が発見された場合、大きな問題に発展する前に原因を調査し、適切な改善策を実施できるでしょう。
組織診断の結果は、経営層だけでなく管理職や一般従業員にも適切に共有することが重要です。組織の現状について共通認識を持つことで、課題予防に向けた協力体制を構築できます。
TERASで発見した課題をTUNAGで解決する
TERASで発見された組織課題や改善点は、TUNAGを活用して効果的に解決することができます。TUNAGは、組織課題の解決に必要なさまざまな機能を統合的に提供し、継続的な組織改善を支援します。
TUNAGの主要な機能と効果は以下の通りです。
- コミュニケーション機能:部門間や階層間の情報共有を促進
- 制度運用機能:人事制度や社内制度の効率的な運用をサポート
- 情報共有機能:組織の知識やノウハウの蓄積と活用
- エンゲージメント機能:従業員の参加意欲と組織への愛着を向上
例えば、TERASの診断で「部門間のコミュニケーション不足」が課題として発見された場合、TUNAGのコミュニケーション機能を活用して改善を図ることができます。部門横断のプロジェクトチームを組成し、定期的な情報交換の場を設けたり、他部門の業務内容を理解するための勉強会を開催したりすることが可能です。
また、「従業員エンゲージメントの低下」が課題の場合は、TUNAGのエンゲージメント機能を使用して、従業員の声を収集し、改善提案を募集することができます。従業員が主体的に組織改善に参加できる仕組みを作ることで、エンゲージメントの向上と課題解決を同時に実現できるでしょう。
TUNAGでは、改善施策の実施状況や効果についても継続的に測定できるため、PDCAサイクルを回しながら組織改善を進めることができます。TERASとTUNAGを組み合わせることで、組織課題の発見から解決、効果検証まで一貫したアプローチが可能になります。
組織課題はデジタルツール「TUNAG」で対策・予防を
現代の組織運営において、デジタルツールの活用は組織課題の効果的な解決と予防に欠かせない要素となっています。TUNAG(ツナグ)は、組織を良くする組織改善クラウドサービスとして、さまざまな組織課題に対する包括的なソリューションを提供しています。
TUNAGの最大の特徴は、組織課題の解決に必要な機能を統合的に提供していることです。従来は複数のツールやシステムを組み合わせて対応していた組織改善の取り組みを、一つのプラットフォーム上で効率的に実行できます。
TUNAGの導入により、組織課題の解決だけでなく、課題の発生を予防する文化が組織に根付きます。従業員が主体的に組織改善に参加し、継続的な改善活動が日常業務の一部として定着することで、強い組織力を構築できるでしょう。
組織課題は、適切な診断と体系的なアプローチによって解決への道筋を見出すことが可能であり、その取り組みは企業の未来にとって重要な投資と言えるでしょう。TUNAGのようなデジタルツールを活用することで、効率的かつ効果的な組織改善を実現し、持続的な企業成長の基盤を築くことができます。
組織課題でお悩みの経営者や人事担当者の方は、ぜひTUNAGの活用をご検討ください。