「制度を変えたい」と思っても、評価・等級・給与が複雑に絡み合っているため、一部だけを直してもうまく機能しないことがあります。大切なのは、目の前の不満に個別に対処するだけでなく、自社の人事制度を全体で捉え直すことです。本記事では、人事制度の基本構造を整理しながら、どこに課題があるのかを見極め、設計・運用・見直しへつなげる考え方を解説します。
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本資料では、評価に対する従業員の納得感を高め、日々の成長につなげるための人事評価制度のノウハウを凝縮して解説します。 「主体性」の評価基準の設計例や、自社の現状がわかるチェックリスト付きで、今の制度状況をすぐに確認できます。
▼本資料でわかること
・評価制度が機能不全に陥る「4つの構造的原因」
・経営戦略を評価基準に落とし込む方法
・評価基準の設計例:「主体性」をどう評価する?
人事制度を考える上では、評価や給与だけを見るのでは不十分です。等級や配置、育成なども含めて、制度全体がどのようにつながっているのかを押さえる必要があります。
ここでは、人事制度の基本的な仕組みと人事評価制度との違い、経営戦略との関係を整理します。
人事制度とは、従業員の配置や育成、評価、処遇などについて定めた仕組みです。会社がどのような人材を採用し、どう育て、その働きにどう報いるかをルールにしたものといえます。
広い意味では、福利厚生や研修制度、就業規則に定める働き方のルールなども含まれます。一方、実務では、社員の処遇を決める「等級制度・評価制度・報酬制度」の3点を中心に、人事制度と呼ぶこともあります。
人事制度に関わる主な領域は、次の通りです。
このように、人事制度は社員の入社から退職まで、幅広い場面に関わります。見直しを始める際は、関係者の間で「今回はどこまでを対象とするのか」をそろえておくと、議論を進めやすくなります。
人事制度と人事評価制度は、「全体」と「一部」の関係にあります。人事制度が人材管理の仕組み全体を指すのに対し、人事評価制度は、社員の成果や能力、行動などを評価するための仕組みです。
項目 | 人事制度 | 人事評価制度 |
位置づけ | 人材管理の仕組み全体 | 人事制度を構成する要素の一つ |
主な範囲 | 等級・評価・報酬など | 成果・能力・行動の評価 |
目的 | 経営に必要な人材の確保や育成、適切な処遇につなげる | 社員の貢献や成長を公正に評価する |
主な成果物 | 等級表・賃金表・各種規定 | 評価シート・評価基準 |
社員から評価への不満が出ていても、原因が評価制度にあるとは限りません。「高い評価を受けたのに給与が変わらない」という不満であれば、報酬への反映方法を確認する必要があります。
評価基準だけを変えても、こうした問題は解消しないでしょう。どこに原因があるのか、等級や報酬との関係も含めて確かめることが大切です。
経営戦略を実現するには、事業に必要な人材を育て、力を発揮してもらう必要があります。人事制度は、そのために会社が期待する役割や行動を社員へ伝える仕組みでもあります。
新規事業を広げたい企業であれば、新しい提案や挑戦を評価することが考えられます。品質の安定を重視する企業なら、手順を守る姿勢や、不具合を防ぐための改善活動などが評価の対象になるでしょう。
反対に、会社が挑戦を求めているのに、失敗のない仕事だけを高く評価していれば、社員は新しいことに取り組みにくくなります。経営方針と、実際に評価・処遇される行動が一致しているかを確認する必要があります。
人的資本経営でも、人材育成の方針と経営戦略のつながりが重視されています。人事制度を見直す際は、評価項目や給与額だけでなく、「この制度で、どのような人材を育てたいのか」まで立ち返って考えましょう。
人事制度の中心となるのが、等級制度・評価制度・報酬制度です。等級で社員に期待する役割などを定め、評価でその働きを確かめ、報酬へ反映するという関係にあります。
等級制度とは、社員の能力や担当する仕事、役割などに応じて、社員を複数の段階(等級)に区分する仕組みです。各等級に求める水準を示し、評価や報酬を決める土台とします。
等級ごとの要件が明確であれば、社員は現在の自分に何が期待されているかを理解できます。上位等級の要件を見れば、次の段階へ進むために身に付けたい能力や経験も分かります。
代表的な等級制度には、次の3種類があります。
種類 | 区分の基準 | 主な特徴 |
|---|---|---|
職能資格制度 | 仕事を遂行するための能力 | 能力の蓄積を処遇に反映する。運用によっては年功的になりやすい |
職務等級制度 | 担当する職務の内容や難易度 | 仕事の内容と報酬の関係を明確にしやすい |
役割等級制度 | 担う役割や責任の大きさ | 期待する役割に応じて等級を決める |
さまざまな部署で経験を積み、幅広い業務に対応できる人材を育てたい企業では、職能資格制度がなじむ場合があります。一方、専門的な職務ごとに採用や処遇を決めたい企業では、職務等級制度が選択肢になります。
制度の名称だけで選ぶのではなく、自社でどのように人材を育て、仕事を任せたいかに合わせて検討しましょう。
評価制度とは、社員がどのような成果を上げ、どのように仕事に取り組んだかを確かめる仕組みです。評価結果は、昇格や報酬を決めるだけでなく、本人の強みや育成課題を把握するためにも使います。
主な評価の観点は、次の3点です。
売上や契約件数などの成果は、数値で比較しやすい半面、担当する顧客や市場環境にも左右されます。また、成果だけでは、周囲への支援や業務改善といった貢献を十分に捉えられないこともあるでしょう。職種や等級に応じて、複数の観点を組み合わせる必要があります。
評価項目に加え、評価する期間や担当者、手順も明確にしておきましょう。「何を、いつ、誰が、どのように評価するのか」が分かれば、社員も日々の仕事で意識すべきことをつかみやすくなります。
報酬制度とは、基本給や諸手当、賞与、退職金などの決め方を定める仕組みです。等級や評価結果を踏まえて、社員の役割や貢献にどう報いるかを具体化します。
基本給は等級ごとに一定の範囲を設け、その範囲内で評価に応じて昇給額を決める方法があります。賞与に、その期の個人の成果や会社の業績を反映する方法もあるでしょう。
大切なのは、どのような働きが、どの報酬に結び付くのかを説明できることです。高い評価を受けても処遇との関係が分からなければ、社員は評価の意味を感じにくくなります。
また、社内での公平性だけでなく、採用市場での報酬水準も確認する必要があります。自社の水準が市場水準を大きく下回っている場合は、採用や定着に影響していないかを確かめましょう。
人事制度を整える目的は、給与や昇格の決め方を統一することだけではありません。会社が必要とする人材を育て、社員が納得して働ける環境をつくることにもあります。
事業を進める上で必要な能力や行動を人事制度に示すと、社員は何を学び、どのような経験を積めばよいかを理解しやすくなります。
DXを進めたい企業であれば、デジタルツールを導入するだけでは十分ではありません。データを使って課題を見つけたり、業務を改善したりできる人材を育てる必要があります。そうした能力や行動を等級要件や評価項目に盛り込むことで、社員にも会社の期待が伝わります。
ただし、制度で要件を示すだけでは、必要な能力は身に付きません。研修や実務経験の機会も用意し、学んだことを仕事で試せるようにすることが大切です。
昇格や昇給の基準が明確になると、社員は将来の働き方を考えやすくなります。今の仕事を続けた先に、どのような役割や処遇があるのかを見通せるためです。
上位等級の要件に後輩指導が含まれていれば、「次は新人の育成を担当したい」と具体的な目標を立てられます。その取り組みが評価や処遇にも反映されれば、成長の手応えを得やすくなるでしょう。
反対に、昇格の理由が分からない状態では、努力の方向を決められません。社員が自分の成長と処遇のつながりを理解できることが、意欲を支える上で重要です。
人事制度には、上司の好みや、その場の判断によって処遇が左右されることを防ぐ役割もあります。共通の基準と手順を設けることで、判断のばらつきを抑えやすくなります。
ただし、ルールを作るだけで、社員が評価に納得するわけではありません。どの成果や行動が評価され、何が不足していたのかを、具体的な事実に基づいて説明する必要があります。
社員が結果について質問したり、認識の違いを伝えたりできる機会も大切です。基準の明確さと丁寧な説明の両方が、会社や上司への信頼につながります。
他社で成果を上げた制度でも、事業や組織の状況が異なれば、同じように機能するとは限りません。自社の方針と課題を確認した上で、制度の中身を考えていきましょう。
最初に確認したいのは、会社が目指す姿と、その実現に必要な人材です。ここが曖昧なままでは、評価項目や等級を決める際の判断軸が定まりません。
経営層と人事部門で、次の点を話し合いましょう。
「自律的な人材を育てたい」といった表現だけでは、人によって受け止め方が変わります。「自分で課題を見つけ、改善策を提案できる」など、仕事の場面を想像できる言葉にすると、制度の要件へ落とし込みやすくなります。
方針を確認したら、現行制度がどのように運用され、どこで問題が起きているかを調べます。規定や評価シートを読むだけでなく、実際のデータと現場の声を照らし合わせることが大切です。
確認する情報 | 主な確認点 |
|---|---|
評価分布 | 特定の評価に偏っていないか。部署によって差がないか |
離職率 | 部署・年代・職種などによる違いがないか |
昇格実績 | 能力や役割よりも、在籍年数で決まっていないか |
賃金分布 | 等級や役割と給与の関係を説明できるか |
アンケートや面談 | 社員や管理職が、どこに不満や使いにくさを感じているか |
評価がほぼ全員、中間の「B」に集まっていても、それだけで基準に問題があるとは判断できません。管理職が評価の差を付けにくいと感じているのか、実際に同程度の達成状況だったのか、背景を確認する必要があります。
同様に、離職が多い場合も、報酬だけでなく業務負担や上司との関係などが影響している可能性があります。原因を確かめた上で、人事制度で対応すべき課題と優先順位を整理しましょう。
課題が整理できたら、等級・評価・報酬の中身を設計します。基本的には、等級制度で期待する役割や能力を定め、それに合う評価基準と報酬のルールを考えます。
制度 | 役割 | 他制度とのつながり |
|---|---|---|
等級制度 | 各等級に求める能力や役割、責任を定める | 評価基準と報酬水準の土台になる |
評価制度 | 期待に対する成果や行動などを確かめる | 評価結果を昇格・報酬・育成へ反映する |
報酬制度 | 給与や賞与などの決め方を定める | 等級や評価結果に応じた処遇を決める |
等級要件に「部下育成」を掲げるなら、評価にも育成への取り組みや成果を含める必要があります。個人の売上だけで評価が決まる仕組みでは、部下育成に時間を割くことが処遇につながりません。
制度を設計する際は、社員の立場で「何を求められ、それがどう評価され、処遇にどう反映されるか」をたどってみましょう。途中で説明がつかなくなる箇所があれば、制度間の整合性を確認する必要があります。
制度案ができたら、実際の社員情報を使って、新制度で等級や給与がどう変わるかを試算します。会社全体の人件費に加え、社員一人一人への影響も確認しましょう。
特に、給与が下がる社員がいる場合は、慎重な検討が必要です。労働条件の不利益変更に当たる可能性があるため、変更の内容や手続きについて、社会保険労務士などの専門家に確認しましょう。
移行時の影響を和らげる方法としては、調整給を設けたり、段階的な移行期間を置いたりすることが考えられます。ただし、こうした措置を設ければ問題が解決するとは限らないため、変更の必要性や影響を十分に検討することが大切です。
併せて、評価シートの記入や面談にかかる時間も試しておきましょう。一部の部署で試行すると、制度案を読んだだけでは気付きにくい運用上の負担を把握できます。
制度の内容が適切でも、社員に伝わっていなかったり、管理職が使いこなせなかったりすると、期待した効果は得られません。導入後も理解度や運用状況を確かめ、必要な改善を続けましょう。
新制度の説明では、変更点とともに「なぜ見直すのか」を伝えましょう。これまでの課題と変更の理由が分かると、社員も制度の意図を理解しやすくなります。
社員が特に気になるのは、自分の等級や給与、今後の昇格がどうなるかです。全体説明と個別の説明を組み合わせて、不安や疑問に答える必要があります。
説明会を開いて終わりにせず、資料やよくある質問を社内ポータルなどに掲載しておきましょう。目標を立てるときや評価を受けるときに、必要な情報をすぐ確認できるようにしておくことが大切です。
同じ基準を使っていても、評価者によって解釈が異なることがあります。ある上司は高く評価する行動を、別の上司は「できて当然」と判断するような状態では、社員の納得を得にくくなります。
評価者研修では、基準の意味に加え、判断に影響しやすい次のような傾向も確認します。
研修では、同じ事例を複数の評価者が採点し、判断の理由を話し合うと、解釈の違いが見えてきます。点数をそろえるだけでなく、どの事実を根拠に評価するのかを共有しましょう。
実際の評価でも、必要に応じて評価会議を設け、部門間で基準の適用に差がないかを確認します。
運用を始めると、「評価項目の意味が分かりにくい」「記入に時間がかかりすぎる」など、設計時には見えなかった課題が出てきます。社員と管理職の両方から声を集め、どこで困っているかを確認しましょう。
社員アンケートでは、評価結果への満足度だけでなく、基準を理解できたか、面談で十分な説明を受けたかなどを尋ねると、改善点を見つけやすくなります。管理職には、評価に必要な情報を集められたか、シートの記入や面談に無理がなかったかを確認します。
寄せられた意見は、制度そのものの問題なのか、説明や運用の問題なのかを整理してから対応しましょう。対応した内容と理由を社員へ伝えることも、制度への信頼につながります。
事業や組織が変わると、社員に求める役割も変化します。導入時には合っていた制度でも、使い続けるうちに実態とのずれが生じることがあります。
次のような変化があったときは、制度が現状に合っているかを確認しましょう。
中途採用者と既存社員の給与に差が生じた場合も、その理由を説明できるか確認が必要です。経験や専門性、担う役割の違いによるものか、それとも既存社員の処遇が実態に追い付いていないのかを見極めましょう。
大きな変化がなくても、半年から1年ごとに評価分布や離職状況などを確認しておくと、問題が深刻になる前に対応しやすくなります。
人事制度を見直す際は、まず会社が求める人材像と、現場で起きている課題を確認しましょう。その上で、等級・評価・報酬が矛盾なくつながっているかを点検することが大切です。
制度を整えた後も、社員への説明や評価者研修を続け、実際に使う人の声を改善に生かす必要があります。社員が「何を期待され、どう評価されるか」を理解できてこそ、制度は日々の行動や成長を支えるものになります。
とはいえ、経営戦略の整理から制度設計、運用の定着までを社内だけで進めるのは簡単ではありません。「課題は見えているが、どこから手を付けるべきか判断できない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
そうした場合に検討したいのが、「TUNAGコンサルティング」です。人事制度をはじめ、育成や組織文化、労務といった組織・人事の課題に幅広く対応しています。
TUNAGコンサルティングの特徴は、約150万人分のデータと知見を基に、自社に合った組織変革プランを提案している点です。人事制度を単体で見直すのではなく、育成や文化づくりと合わせて考えられるため、制度と現場の実態がずれにくくなります。
また、TUNAGのアプリと組み合わせれば、新制度の目的や評価基準を社内報で周知したり、サンクスカードで日々の行動を可視化したりすることも可能です。制度の設計から現場への浸透までを一貫して進めやすくなるでしょう。
社員の「定着」にとどまらず、一人一人が「活躍」できる組織を目指す上で、人事制度は重要な土台です。自社の制度に課題を感じている方は、一度相談してみてはいかがでしょうか。