上司には明かさない若手の本当の離職理由とは?入社前から意識したい、離職防止の4つのポイント
若手社員の離職は多くの企業で課題となっていますが、離職理由は正確に把握できていますか?実は、若手社員の半数以上が「本当の退職理由」を会社に話していないことが調査で明らかになりました。
表面的な理由の裏には、組織が見過ごしている重要な課題が隠されています。どうすれば若手社員の本当の思いに気づき、離職を防ぐことができるのでしょうか。
本記事では、若手社員の離職に関する最新の調査データと、離職防止に成功している企業の具体的な取り組みをもとに、効果的な離職防止策をご紹介します。
若手社員が辞めてしまう理由とは?
若手社員が辞めてしまうという課題は、多くの企業が抱えています。
そして重要な問題は、その退職理由について、若手社員は本当のことを話してくれない場合が多いということです。
表向きの退職理由は前向きな言葉で語られることが多いものの、その裏には意外な真実が隠されています。実は、若手社員の離職には「建前」と「本音」という大きな隔たりがあるのです。
その理由を、以下のエン・ジャパンの調査データから推察していきましょう。
半数以上が隠す本当の退職理由、トップは人間関係
エン・ジャパン株式会社が、これまで退職経験がある方4,658名を対象に実施した調査によると、「退職時に、会社に伝えなかった"本当の退職理由"はありますか?」という質問に対して、54%が「はい」と回答しています。
同調査によれば、若手社員の本音の退職理由のトップは「人間関係が悪い」で46%を占めており、特に注目すべきは、この理由が表向きの退職理由としてはほとんど語られないという点です。
本当の退職理由を伝えなかった理由については、「話しても理解してもらえないと思ったから」という理由が46%で最多となっています。その具体的な理由としての多くは、退職以前の会社や上司との関係性が影響しています。
入社間もない若手社員にとって、職場の人間関係は仕事への意欲や成長に直結する重要な要素です。良好な人間関係があれば多少の困難も乗り越えられますが、コミュニケーション不足や職場の重苦しい雰囲気は、確実に若手の心を離職へと向かわせてしまいます。
「別の職種へのチャレンジ」は建前?表向きの理由と本音の差
調査結果を見てみると、建前の理由と本音に明確な差があることが見えてきます。
会社に伝えた退職理由、第1位の「別の職種にチャレンジしたい」は、本当の退職理由では第9位となっており、続く第2位の「家庭の事情」は、本当の退職理由では第12位となっています。
この結果を見ても、若手社員は離職する際に、本当の理由について会社に話しておらず、しかもそれについては「言っても理解してもらえない」と思っていることが、明らかになりました。
若手社員の離職の兆候
「最近、あの若手の様子が変わった気がする...…。」こんな違和感を感じることはありませんか?
実は、離職を考え始めた若手社員は、日々の行動や態度に特徴的な変化が表れます。この変化に早めに気づき、適切な対応を取ることで、離職を未然に防ぐことができるのです。
仕事への意欲低下が見られる
離職を考え始めた若手社員は、まず仕事への取り組み方に変化が現れます。
たとえば、以前なら「締切の3日前には必ず提出」していた報告書が、今では期限ぎりぎりになっている場合や、先月まで「これは私がやります!」と手を挙げていた社員が、新しい案件の話が出ても黙って俯いているといった具合です。
このような変化は、その若手社員が現在の職場や仕事に物足りなさを感じ始め、新たなキャリアを模索し始めているサインかもしれません。
重要なのは、こうした変化に気づいたら、すぐに「なぜ」を探ることです。「最近、仕事で悩んでいることはない?」という何気ない声かけから、真の課題が見えてくることも少なくありません。
コミュニケーションの変化に注目
離職を考える若手社員は、職場での人間関係にも微妙な変化が表れます。例えば、いつも昼食を同僚と取っていた社員が、突然一人で食べるようになったり、雑談が減り、必要最低限の業務連絡だけになったりなどです。
オフィスでも、かつては同僚と談笑していた休憩時間を、一人でスマートフォンを見て過ごすようになるといったように、同僚とも距離を置くようになります。
こうした変化は、職場での人間関係に何らかの不満や課題を抱えているサインかもしれません。特に注意が必要なのは、この「コミュニケーションの減少」が、さらなる人間関係の悪化を招く悪循環を生む点です。
管理職として重要なのは、日常的な対話を通じて「話しやすい雰囲気」を作り、部下が本音を話せる関係性を築いておくことです。
若手社員の離職を防ぐためにできること
若手社員の離職に悩んでいる企業は少なくありません。しかし、効果的な離職防止策は確かに存在します。ポイントは、採用から育成まで一貫した支援体制を構築することです。ここでは、離職防止のために、入社前から入社後それぞれでできる具体的な施策をご紹介します。
入社前から始める離職防止策
「入社してみたら、想像していた仕事と全然違った」というようなギャップによる早期離職を防ぐためには、採用段階からの取り組みが重要です。
職場見学や若手社員との座談会を実施し、実際の業務内容や職場の雰囲気を体感してもらうことで、入社後の現実とのギャップを最小限に抑えることができます。
また、面接では「キャリアパス」を丁寧に説明することが大切です。単なる職務内容の説明ではなく、具体的な成長ストーリーを示すことで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。
新入社員をサポートする「バディ・メンター制度」
「上司には相談しづらい...」といった声に応えるのが、バディ・メンター制度です。新入社員一人一人に、入社2~3年目の先輩社員がメンターとして付き添います。
メンターは「自分も同じ悩みを経験した」という視点から、業務の進め方から職場での人間関係まで、幅広くサポートするための制度です。
ちなみに、バディの場合は同じ部署の同僚や先輩、メンター制度の場合は、別の部署など、無関係な社内の人間がサポートに就くのが一般的です。仕事について直接的な悩みならバディを、客観的な視点によるアドバイスを提供したい場合はメンター制度を選択すると良いでしょう。
若手の意見を聞く!定期面談のすすめ
定期的な面談やランチミーティングを通じて、若手社員の些細な悩みも拾い上げることが重要です。ただし、従来型の「上司が一方的に話す」面談では効果は限定的です。そこで、上司以外のバディやメンター、会社の先輩などに面談を任せてみるのも効果的でしょう。
直属の上司には言いづらい内容でも、近い立場の先輩には相談しやすいものです。
面談で出た意見には必ず具体的なアクションで応えましょう。資格取得のサポートや新規プロジェクトへの参加機会の提供など、速やかな対応が信頼関係を築く鍵となります。
成長できる!と感じられる職場づくり
成長の実感を持てる環境づくりは、若手社員の定着を促します。
「少し背伸びすれば届く」難易度の仕事を任せ、その過程で適切なサポートを提供することが重要です。定期的な成長の機会を共有する場を設けることで、若手社員の達成感と自信を育てることができます。
小さな成功体験の積み重ねが、「この職場で成長していきたい」という思いを育てます。加えて、目標達成や成長が見られたときは、褒めることも忘れずに行いましょう。
また、定期的なスキルアップ研修や資格取得支援など、具体的な成長機会を提供することも効果的な施策といえるでしょう。
離職防止のための施策事例
若手社員の離職防止に成功している企業では、組織全体で一貫した取り組みを実施しています。ここでは、実際に効果を上げている3社の具体的な施策をご紹介します。それぞれの企業が、どのような課題を抱え、どのように解決したのか、その過程から学べるポイントは数多くあります。
株式会社BPの事例
「承認の機会が少ない」という課題に着目し、組織全体で若手社員の頑張りを認め、伝える仕組みを構築した株式会社BP。特に注目すべきは、アルバイトを含む全従業員が参加できる「承認制度」の確立です。定期的な表彰制度と連動させることで、若手社員のモチベーション向上と定着率改善に成功しました。
具体的な取り組みとして、若手社員の中から「インフルエンサー」を選出し、社内コミュニケーションの活性化を図りました。この施策により、アルバイトの定着率は30%改善し、3ヶ月で300名の採用にも成功。従業員同士が互いの頑張りを認め合う文化が根付き、「友達に紹介したくなる職場」という評価を得るまでに組織が変革しています。
事例記事はこちら>>アルバイト定着率が30%改善、3ヶ月で300名採用:BPが「友達に紹介したくなるバイト先」を作るまで
株式会社アヴァンスの事例
新卒社員の離職率が75%という深刻な課題を抱えていた株式会社アヴァンス。この状況を改善するため、社内コミュニケーションの再構築に取り組みました。特に効果的だったのは、若手社員の意見を積極的に取り入れる「委員会制度」の導入です。
新卒社員と先輩社員が同じ委員会に所属することで、日常的なコミュニケーションが活性化。また、代表からの定期的なメッセージ発信により、会社の方向性や価値観の共有が促進されました。これらの取り組みにより、新卒社員の離職率は0%にまで改善。「100年続く強くて優しい会社」というビジョンの実現に向けて、着実に歩みを進めています。
事例記事はこちら>>TUNAGで「組織コミュニケーションの要」を確立。介護業界で新卒の離職率が75%から0%に
株式会社ダイセーセントレックスの事例
物流業界特有の「個別作業が多く、コミュニケーション不足」という課題に直面していた株式会社ダイセーセントレックス。この課題に対し、経営陣からの積極的な情報発信と、社員同士の相互理解を促進する施策を展開しました。
具体的には、社長による定期的な発信や、管理職へのインタビュー企画など、普段は見えにくい経営層の考えや想いを共有。また、社員同士が気軽に参加できるフォトコンテストなど、コミュニケーションのきっかけとなる企画を実施しています。これらの取り組みにより、離職率は1年で約10%改善。「なんとなく知っている、なんとなく仲間である」という意識が醸成され、組織の一体感が強化されています。
事例記事はこちら>>物流業界ならではのコミュニケーションや離職率の課題を改善 - 株式会社ダイセーセントレックスのTUNAG活用事例
社員の本音を知るためにエンゲージメントサーベイを活用しよう
離職防止の取り組みを効果的に進めるためには、組織の現状を正確に把握することが重要です。エンゲージメントサーベイは、社員の声を定期的に集め、組織の課題を可視化するための有効なツールとなります。
エンゲージメントサーベイって何?
エンゲージメントサーベイとは、社員の組織に対する思いや満足度を定量的に測定する調査です。
従来の満足度調査と異なり、職場環境や仕事のやりがい、成長機会など、多角的な視点から社員の意識を測ることができます。
匿名性が担保された環境で実施することで、普段の面談では得られない本音の声を集めることが可能です。また、定期的な実施により、施策の効果測定や経年での変化を把握することもできます。
何を聞けば社員の本音がわかる?
サーベイでは、日々の業務における満足度だけでなく、キャリアの展望や職場の人間関係など、離職につながりやすい要因を中心に質問を設計することが重要です。
特に、「仕事を通じた成長実感」「上司・同僚との関係性」「組織の将来性への期待」といった観点は、若手社員の定着に直結する重要な指標となります。質問は具体的な行動や状況に基づいて設計し、回答者が自身の経験に照らして答えやすい内容にすることで、より正確な実態把握が可能になります。
サーベイ後の改善につなげるコツ
弊社で実施した組織サーベイに関する調査では、「組織サーベイに満足していない/あまり満足していない」と回答した理由で最も多かったのは「調査結果が人事施策や働く環境の改善に反映されていないと思うから」で42.4%でした。
また、「組織サーベイの結果は人事施策や働く環境の改善に反映されていると感じますか?」という質問に対して、「多くが反映されている」と回答したのはわずか12.9%と、多くの企業でサーベイの結果を改善へつなげられていないことが明らかになりました。
サーベイの結果を効果的な施策につなげるためには、経営層から現場のマネージャーまで、組織全体で結果を共有し、課題解決に向けて取り組む体制を整えることが重要です。
数値の低い項目については、若手社員との対話を通じて背景にある要因を深堀りし、具体的な改善策を検討しましょう。
改善策の実施後は、定期的なフォローアップを行い、効果測定と必要な軌道修正を行うことで、継続的な組織改善につなげることができます。
サーベイから効果的な改善策につなげるなら「TERAS」
エンゲージメントサーベイから効果的な改善施策を設計し、実行するのは簡単ではありません。そこで、おすすめしたいのが、エンゲージメントサーベイ「TERAS」の活用です。
TERASは、組織改善に特化したエンゲージメントサーベイです。エンゲージメントに大きく影響を与える以下の8つの項目から診断結果を自動で集計し、どの項目に課題があるかを簡単に明確にします。
- 会社理解・共感
- 事業理解・共感
- 組織への理解・共感
- 上司との関係
- 同僚との関係
- 業務環境・待遇
- 承認欲求
- 成長機会
TERASの質問項目は、改善施策の設計を前提に用意されています。そのため、専門的な知識がなくても結果をもとに的確な改善施策を設計することが可能です。実施は半年に1回、回答時間も5分だけなので負担を最小限に抑えながら、着実な組織改善につながります。
組織改善に特化したエンゲージメントサーベイ「TERAS」の詳細はこちら
早期離職対策には全社一丸で取り組むことが重要
若手社員の早期離職を防ぐためには、採用から育成、職場環境の改善まで、組織全体で一貫した取り組みが必要です。本記事で紹介した施策は、いずれも単独での実施では十分な効果は期待できません。経営層のコミットメント、管理職の意識改革、そして現場での地道な実践を組み合わせることで、初めて効果的な離職防止が実現します。
変化の激しい現代において、若手人材の確保・定着は企業の持続的な成長に不可欠な要素です。まずは自社の現状を正確に把握し、できることから着実に取り組みを進めていきましょう。社員一人一人が活き活きと働ける職場づくりは、結果として組織全体の活性化にもつながります。
より詳しい施策の導入方法や、成功事例について知りたい方は、下記の資料をご覧ください。実践的なノウハウと具体的な導入ステップを詳しく解説しています。