インシデントとは?企業に与えるリスクや具体的な対処法を解説

インシデントを放置するとさまざまな問題が生じる恐れがあります。予防策を講じたり管理することで、リスクを最小限に抑えることが可能です。インシデントについて理解を深め、自社で対策に取り組みましょう。

ビジネスにおけるインシデントとは

インシデントとはどのようなことを意味する言葉なのでしょうか。似た意味の言葉や重視される背景と併せて解説します。

重大な事態を引き起こすリスクが高い状況

ビジネスにおけるインシデントとは、重大な事態を引き起こす一歩手前の状況のことです。英語のincidentを語源とし、元々の言葉には出来事や事象といった意味があります。


事件や事故が発生するリスクはどの業界にもあるため、インシデントは幅広い分野で用いられています。ただし、具体的な意味やニュアンスは業界によりさまざまです。

アクシデントやヒヤリハットとの違い

インシデントと似た意味の言葉にアクシデントがあります。アクシデントは重大な事態そのものです。インシデントを経て既に事件や事故が起こり、損害が生じている状況を指します。

ヒヤリハットもインシデントと意味が近い言葉です。アクシデントが発生する一歩手前で、ヒヤリとしたりハッと気づいたりすることを意味します。


インシデントとヒヤリハットのいずれも、事件や事故に直結する状況です。ただし、ヒヤリハットが主に人的ミスで生じるのに対し、インシデントは人的ミスが原因とは限りません。

インシデントが重視される背景

近年インシデントが重要視されている背景には、政府によるDXの推進があります。DXとは、デジタル技術の活用による変革で自社の競争力を高めることです。

経済産業省は「DXレポート」で国内企業のDXの遅れに警鐘を鳴らしており、このままDX未推進の状態が続く場合は、2025年以降に大きな経済的損失が生まれると指摘しています。いわゆる「2025年の崖」問題です。

このような背景から、今後は多くの企業でDXが進むと考えられます。それと同時に求められるのが、システム移行による不具合やセキュリティリスクへの対策です。

システム導入時にアクシデントが多発すると、DXがなかなか進まない恐れがあります。そのため、インシデントを発生させない対応が求められているのです。

出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)

業界・分野別のインシデントの具体例

インシデントの具体的な内容は、業界や分野ごとに異なります。どのような状態がインシデントになるのか、業界・分野別に見ていきましょう。

IT

IT分野における主なインシデントは次の通りです。

  • Webサイトにアクセスしづらい
  • サーバーがダウンしている
  • メールの送受信ができない
  • アプリやプログラムがフリーズする


例えば、Webサイトにアクセスしづらいインシデントを放置すると、Webサイトからの収益が生まれないアクシデントにつながる恐れがあります。

IT分野のインシデントは、IT業界だけでなくどの業界でも起こり得るものです。DXを推進する全ての企業は、IT分野のインシデント対策に取り組む必要があります。

情報セキュリティ

情報セキュリティのインシデントには以下のようなものがあります。

  • ウイルス感染
  • 不正アクセス
  • フィッシング
  • 誤表示・誤送信
  • 盗難


上記インシデントによる最も避けたいアクシデントの1つが情報漏洩です。企業秘密や個人情報が漏洩すると、企業としての信頼を失って大きな損害を被る恐れがあります。

IT分野のインシデントと同様、情報セキュリティのインシデントもDXを推進する全ての企業で起こり得ます。重大な事態に発展しないよう、十分な対策が必要です。

医療

医療現場におけるインシデントは、結果的に患者への被害がなかったケースです。インシデントの対策を怠ると、患者の治療が必要になったり医療事故につながったりしてしまいます。医療分野におけるインシデントの例をまとめました。

  • 診断ミス
  • 与薬量や与薬時間のミス
  • 患者の取り違え
  • 患者による点滴の自己抜去
  • 患者の転倒

医療現場のアクシデントは患者の命にかかわりかねないため、インシデントの段階から適切な対策を求められます。

インシデントが企業に与えるリスク

インシデントの対策を怠ってアクシデントに発展すると、企業に深刻な影響を与えかねません。インシデントが企業に与えるリスクについて解説します。

信用を失う

情報セキュリティにおけるインシデントは、個人情報の漏洩につながる恐れがあります。個人情報漏洩で世間の注目を集めてしまうと、社会的信用を失いかねません。

企業としての信用低下により顧客が離れた場合、売上に大きな悪影響を及ぼします。優秀な人材の離職や従業員のモラル低下を引き起こすケースもあるでしょう。

インシデント対策をきちんと講じておけば、万が一インシデントが発生した際も迅速かつ適切に対応できるため、企業としての責任ある姿勢を示せます。

業務が停滞する

インシデントが発生すると、対応に人的リソースを割かなければならず、通常業務が停滞しかねません。

また、社内の基幹システムがインシデントにより止まると、復旧するまで業務を再開できないケースもあります。例えば、システムの不正アクセスが見つかって情報漏洩の恐れがある場合、問題が排除されるまでシステムの稼働を停止せざるを得ないのです。

適切なインシデント対策を講じておけば、問題が発生しても迅速な復旧を図れます。業務の停滞を抑えられるため、顧客にサービスを提供できない事態も回避できるでしょう。

経済的損失が発生する

インシデントの発生後は、企業が次のような経済的損失を被る恐れがあります。

  • システムやデータの復旧費用
  • セキュリティシステムの強化費用
  • 原因特定のための調査費用
  • 問題に対応するスタッフの人件費
  • 顧客への補償
  • 風評被害による売上の減少

インシデント対策にもコストはかかるものの、長期的な視点で考えれば企業が持続的に成長するための重要な投資といえます。

インシデントへの具体的な対処法

インシデントを防ぐために、企業はどのようなことをすればよいのでしょうか。具体的な予防策やインシデント管理の流れを紹介します。

インシデントの予防策

インシデントの予防に取り組む場合、まずは対応部署と人材を決めましょう。社内で対策チームを組んでおけば、問題が発生しても迅速に対応できます。

セキュリティの強化を図ることも大切です。セキュリティに関するアクシデントは被害が大きくなりやすいため、問題発生時の対応より事前の予防を重視しましょう。

インシデントを防ぐためには、従業員の意識向上も不可欠です。社内周知や啓蒙活動を行い、インシデントの知識や問題発生時の対応を共有しておきましょう。

インシデント管理の流れ

インシデント管理とは、インシデントの発生から収束までをフェーズごとに管理することです。管理の手順を明確にしておけば、業務が長時間停滞するのを防げます。

インシデント管理の大まかな流れは次の通りです。

  • 前もって設定した優先順位に従ってインシデントを分類する
  • 対策チームが一時対応にあたる
  • 原因究明が難しい場合は他部署や専門家と連携を取る
  • 事態が収束したら原因や対策を記録・共有する

重大なインシデントが発生した場合は、報告書をまとめて社外にも公表しましょう。同業者のインシデントを防げるほか、一般消費者の啓蒙にもつながります。

インシデントに対処し企業リスクを軽減

インシデントとは重大な事件や事故を引き起こす一歩手前の状況です。DX推進による企業のデジタル化に伴い、リスク軽減のためのインシデント対策が求められています。

インシデント対策を怠った場合、企業として大きな損害を被りかねません。社内のインシデント対策において重要になるのは、インシデント発生時の迅速なコミュニケーションと、再発防止のためのナレッジ共有であり、ITツールの活用が効果的です。

組織課題の解決に向けた最適な取り組みを実施できるクラウドサービス「TUNAG」では、社内チャット・マニュアル・理解度テストなど、迅速なコミュニケーションや再発防止のためのナレッジ共有を実現する豊富な機能が備わっており、インシデント対策としても効果を発揮するでしょう。

インシデントへの具体的な対処法を理解し、必要に応じてITツールを活用しながら、適切な対応で企業リスクを軽減しましょう。


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著者情報

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