FAXを廃止できない5つの理由、代替手段やメリットを考える

FAXの利用率

総務省が公表した「通信利用動向調査報告書」によると、FAXの世帯保有状況は平成21年の57.1%をピークに、令和2年には33.6%にまで落ち込んでいます。

企業や官公庁でのFAX利用率については、CIJA画像情報ファクシミリ委員会が調査を実施しています。2022年2月に全国の20~69歳の男女有識者4,000人を対象にしたアンケート調査では、「あなたはお勤め先で文書や画像を送ったり受けたりするためにファクス(ファクシミリ)を使用していますか」という質問に対して、「日常的に使用」+「たまに使用」が合わせて45.9%でした。また、2021年1月に同様の調査項目でのアンケート調査では、「日常的に使用」+「たまに使用」は合わせて49.7%でした。FAX自体は半数近くで利用されていますが、利用率は約1年間で3.8%低下したことがわかります。

では、世界でのFAX利用率はどうなっているのでしょうか。ITおよび通信分野に関する調査・分析を行うIDCが2017年にグローバル企業200社を対象に行った調査では、FAXの利用率が前年度より増加したと回答したのは43%、横ばいと回答したのは39%でした。

FAXはアナログな手法という見方もありますが、現実にはあらゆる業界の企業で頼りにされているコミュニケーション手段といえるでしょう。

▼参照
令和2年通信利用動向調査報告書(世帯編) | 総務省
Fax Market Pulse: Trends,Growth and Opportunities IDC
Your fax machine isn’t just outdated, it’s a hacker’s delight | American Banker

FAXで送受信する原稿の割合

企業や官公庁では、実際にどのような原稿をどのくらいの割合でFAXによって送受信しているのでしょうか。CIJA画像情報ファクシミリ委員会の上記の調査では、主に「報告・連絡書」「受発注書」「各種案内文」「手書きのメモ」「図面」の5つに回答が分かれています。いずれの業種でも、「報告・連絡書」「受発注書」のいずれか一方は、50%を超える利用率です。この調査結果から、FAXが日常的な業務のフローとして浸透していることがうかがい知れます。

参照:「ファクシミリの利用調査結果」を公開 ~リモートワーク下でもファクシミリはどのように使われていて、どのような期待があるかを探る~ | CIAJ 一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会

官公庁でもFAXを廃止する動きに

国内外を問わず多くの企業で利用されているFAXですが、官公庁ではFAX廃止に向けた動きが活発化しています。2022年の年末に開かれた記者会見では、政府機関や省庁のFAX利用状況を大幅に改善し、85%が「廃止」もしくは「廃止予定」であることを河野太郎デジタル大臣が明言しました。

金融庁でも、違反行為をした事業者の報告方法の見直しを図っています。従来の郵送や直接持参する方法はそのままに、FAXでの報告を廃止する予定です。その代替手段として、電子メールの利用を認めるとしています。

グローバルに目を向けると、英国の通信規制当局Ofcomが電話会社に課しているFAX対応義務を正式に撤廃したと発表しました。FAXがすぐに使えなくなるわけではないものの、利用者は電子メールなどの代替手段を探す必要が出てくるでしょう。

▼参照:
事業者の違反報告、FAX廃止へ 金融庁が制度改正 - 日本経済新聞
Farewell to the fax machine - Ofcom


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FAXを廃止できない理由5選

近年、FAXの廃止に向けた動きが政府を主体として活発化しています。DXを推進し、ペーパーレス化が進む企業が多いなか、FAXをなかなか廃止できないところもあるでしょう。FAXを廃止できない理由として、主に以下の5つが挙げられます。

▼参照:
ペーパーレス化のタイミングでFAXの廃止を検討する際の注意点
FAXは日本だけ?ビジネスシーンでFAXがなぜなくならないのか | BtoB帳票支援ソリューション/ネクスウェイ

1. 業務見直しが必要になる

これまでFAXを使った業務が日常化している企業では、FAX廃止に向けて大幅な業務改善が必要になってきます。FAXの代替手段となる設備の導入やフローの改善はもちろんのこと、システム利用のための社員教育も行わなければなりません。

また、IT機器を利用することに抵抗を覚える人も一定数出てくることも想定できます。変革を強引に進めれば、貴重な人材を失う可能性があることもFAX廃止できない理由の一つでしょう。

2.取引先や顧客がFAXを利用している

取引先や顧客とのやり取りでFAXを利用していることも、FAX廃止できない理由に挙げられます。仮に自社でオンラインシステムを導入しても、取引先や顧客が引き続きFAXでの連絡を希望していれば、FAXを完全に廃止することはできません。

また、FAXからオンラインへと切り替えたら、取引先や顧客を失うかもしれないという抵抗感や恐怖感は、なかなか拭えないものです。取引先や顧客との兼ね合いから、デジタル化へと移行できず、FAX廃止が難しいことも考えられます。

3.届いたことがわかりやすい

FAXを利用したやり取りは、相手に届いたことがわかりやすいことがメリットの一つです。たとえば、電子メールの場合、相手が届いたことに気づいていない可能性もあります。すぐに確認して欲しい場合、電話をするなどの手間もかかるでしょう。

一方で、FAXは相手に届くと物理的に紙が出力される製品があります。現場で動き回る作業が多い職場では、届いたことがすぐにわかるFAXのほうが利便性が高い場合もあります。電子メールにはないメリットがあることも、FAX廃止が難しい理由です。

4.手書きの原稿をそのまま送れる

FAXを利用するうえで便利な点として、手書きの原稿をそのまま送れることが挙げられます。実際に、CIJA画像情報ファクシミリ委員会が2022年2月に全国の20~69歳の男女有識者4,000人を対象に行ったアンケート調査では、FAXの便利だと思うところに対して「手書き原稿を送れる」と回答した割合は40%です。

電子メールでも手書きの原稿をスキャンして相手に送ることはできますが、ひと手間を加えなければなりません。作業を効率化できるという意味でも、FAX廃止はなかなか難しくなっています。

5.IT機器の設備や知識が不要

DXを推進するためには、新たなIT機器の導入は欠かせません。業種によっては「FAXのままでも問題なく業務を遂行できる」という考えが浸透していれば、FAX廃止に向けた改革を推し進めるのが難しくなるでしょう。

また、FAXは「紙を差し込んで、電話番号をプッシュするだけ」で送信できます。IT機器に関する知識を持っていなくても利用できることが、FAXが使われ続ける理由の一つです。

FAXの代替手段3選

FAXを廃止した場合、社内外への連絡する方法として代替案を探らなければなりません。ここでは、FAXの代替手段として以下の3つを紹介します。

▼参照:FAX廃止のメリットとは?FAX業務を電子化する方法や推進のポイントを紹介|電子帳票ナビ|ウイングアーク1st

1.インターネットFAX(e-FAX)

企業にとって取引先や顧客の存在は大きく、完全なFAX廃止が難しいケースも少なくないでしょう。このような場合、FAXをインターネット上で使える「インターネットFAX(e-FAX)」を導入することも一つの手段です。インターネットFAXとは、送られてきたFAXをPDFなどで電子化し、保存するサービスです。

クラウド上で管理可能で、FAX機を設置するためのスペースの確保や、印刷代・トナー代・用紙代が不要になります。初期の導入費用はかかりますが、企業によってはFAX機をレンタルして設置するよりも費用を抑えられるでしょう。

2.メール・ビジネスチャット

FAXの簡易的な代替手段として挙げられるのが、メール・ビジネスチャットへの移行です。手書きの文書もスキャンをしてPDF化をすれば、相手に送信できます。FAXと比べて手間はかかりますが、費用面でのメリットは大きいでしょう。チャットツールを導入すれば、FAXを利用したやり取りと比べて簡易的です。

一方で、メールやビジネスチャットはインターネット回線上でデータをやり取りすることになるため、情報漏えいやデータの改ざんに注意する必要があります。セキュリティ対策はもちろんのこと、社内でのルールを徹底することが大切です。

3.社内SNS

社内での業務連絡にFAXを利用している場合、社内SNSを導入することもFAX代替手段の一つです。社内SNSとは、企業利用向けに特化したコミュニケーションツールのことで、主に以下のような機能が搭載されています。

  • 個人チャット機能
  • グループチャット機能
  • ファイルのアップロード、共有
  • タイムライン投稿

社内SNSは社内での運用を想定して設計されたクローズSNSの一種です。情報セキュリティを確保しながら、従業員同士のコミュニケーション活性化に利用可能です。また、会社の事業方針やビジョンを発信するなど、組織力の強化も期待できます。

FAXを廃止する3つのメリット

近年、SDGsの観点からもペーパーレス化の重要性が高まりつつあります。FAXを廃止することで、ペーパーレス化の促進につながり、さまざまなメリットが得られます。ここでは、FAXを廃止して情報伝達をデジタル化する3つのメリットを解説します。

参照:FAXのデメリット4選とIT化のポイント3つ。おすすめ代替案も | クロジカスケジュール管理

1.業務効率化につながる

FAXを廃止しデジタル化へ移行することで、業務効率化の効果が期待できます。FAXを利用した連絡手段は、デジタルツールと比較すると、確認・入力・管理に手間がかかります。独自のマナーが存在し、本来の目的とは関係のない作業が発生しがちです。

デジタルツールであれば、FAX特有の非効率な作業から解放されることになるでしょう。システムを構築すれば、業務の大部分を自動化してスピーディかつスムーズな処理を行えます。

2.テレワークへの対応が柔軟になる

FAXを廃止することで、テレワークを促進しやすくなります。業務で日常的にFAXを利用する場合、FAX機があるオフィスに常駐していなければ情報の確認ができません。

一方で、FAXの代替手段としてメールやビジネスチャットに切り替えると、自宅や外出先でもチェックできます。FAXを廃止することで、オフィス以外でも円滑に情報伝達を行えるため、テレワーク導入への対応が柔軟になります。

3.セキュリティ・ガバナンスの強化につながる

企業の健全な発展を促す仕組みとして、コーポレートガバナンス(企業統治、Corporate Governance)があります。ガバナンスが保たれている企業は、顧客や投資家からの信頼も高まりやすいため、持続的な成長を促すうえで重要な観点であると言えます。コーポレートガバナンスを強化する取り組みの一つが、FAXを廃止し文書を電子化することです。

FAXで送られてきた紙の文書は、文書の改ざんや持ち出しによる情報漏えいのリスクが伴います。一方、電子化された文書であれば、閲覧権限を設定して個別に送信したり、証跡をシステムに記録することでデータ改ざんを抑止できたりも可能です。

FAX代替手段の運用事例

FAXで行っている申請や回覧をその他のツールに代替したり、併用して使用することで、業務効率化が期待できます。ここでは、FAXで行っていた申請を社内ポータル「TUNAG」に置き換えた事例を紹介します。

株式会社牛若丸様の事例

株式会社牛若丸様は、美容室やネイルサロン経営、ブライダル事業、振袖レンタル事業など、「美」にまつわる事業を幅広く展開し、180名超の従業員とともに、美容室16店舗を経営しています。

同社はTUNAGを導入する前、FAXで行われている各種申請制度を何らかのツールで代替し、業務効率化ができるようにしたいという声が課題の一つとして上がっていました。

TUNAG導入後は、代休や有給、商品の発注、出張時の宿泊費の支払いなどFAXを使って申請していたものをTUNAGに移行していきます。デジタルで完了できない部分は少なからずあるものの、申請が簡潔になったことで業務効率化・ペーパーレス化を実現しているといいます。

参照:社内ポイント制度の活用で従業員のコミュニケーションが活性化「ほめ合う」文化でエンゲージメント向上を実現 | 社内ポータル・SNSのTUNAG

まとめ

当コラムでは、FAXの利用状況や廃止にできない理由、代替手段などを解説してきました。

FAXは国内外問わず日常的な業務フローとして企業に浸透している中で、FAXを廃止し代替手段を導入することに対する懸念は少なからずあることでしょう。一方、デジタルツールを活用することで、社内の情報共有促進や申請フローの効率化といったメリットもあります。

社内ポータル「TUNAG」であれば、FAXで行っているタスク依頼や申請、回覧などをデジタル化することができます。また、マルチデバイス対応で社用PCを持たない従業員でも、スマートフォンから簡単に利用可能。豊富な機能とオリジナル設計で、100社100通りの組織運営を支援し、組織の生産性を高めます。

FAXからデジタルツールへの置き換えを検討している企業は、業務上の大きな問題がないことを慎重に確認しつつ、代替できる業務から少しずつ進めてみてはいかがでしょうか。


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