早期離職を減らすには?データから見る若手の離職状況と効果的な対策

新しく人を採用してもすぐに辞めてしまい、教育や採用のリソース不足に悩まされている企業もあるでしょう。早期離職は対策の優先度が高い問題です。企業の将来を左右する若手に焦点を当てて、公的なデータから分かる離職状況や考えられる早期離職の理由とともに、対策例を解説します。

早期離職とは?期間の目安

「早期離職」という言葉に、具体的な期間が定義されているわけではありません。ただ一般的に、早期離職とされる期間の目安は入社してから3年以内です。

厚生労働省の調査でも「就職後3年以内の離職率」が指標として用いられており、3年以内を早期離職の目安とする考え方が一般的です。

また職種にもよりますが、新卒採用者の場合は「一人前」と呼ばれるレベルに到達するまでに3年かかるといわれています。この記事でも、早期離職を「入社から3年以内の離職」と定義して解説します。

早期離職が企業に与える影響

早期離職が企業にとってマイナスになることは、周知の事実です。ただ具体的にどのような影響があるのかを説明できないと、施策を実行したときに十分な協力を得られない可能性があります。早期離職の何が問題なのか言語化できるよう、企業にとってのマイナス面を深掘りしていきましょう。

採用や教育のコストが増える

新卒入社でも中途入社でも、採用や教育にはコストがかかります。この「コスト」とは、金銭的コストのほか人的・時間的コストも含む負担のことです。

特に新卒入社の場合、一人前になって仕事を任せられるようになる前に離職されてしまうと、新たな採用や次の新人への教育コストが大きくなります。現場で教育する従業員の負担が増え、最悪の場合、教育する側の人材が離職することにもなりかねません。

さらに教育する側にいた優秀な人材が離職すると、次々と人が辞めていく連鎖が起こる可能性もあるでしょう。そうなると採用コストはどんどん膨らんでいきます。

企業イメージが低下する

早期離職者が多い企業は、世間から「働きにくいのではないか」「ブラック企業なのではないか」というマイナスイメージを持たれがちです。「働きにくい」「ブラック」というイメージが定着してしまうと、応募者が減るほか、その企業の商品が売れにくくなるリスクも考えられます。

近年は口コミサイトの増加やSNS利用の活発化により、元社員が企業名を出して離職理由を発信するケースが増えています。そのため企業は、離職率の数値管理だけでなく、退職者との良好な関係維持や、在職中からの職場環境改善に取り組む必要があります。

若手が早期離職するとリーダー候補が育たない

特に新卒採用者を含む若手の早期離職は、リーダー候補不足の原因となる問題です。リーダーとして育つためには一定以上の経験が必要ですが、3年以内という短い期間ではその経験を積めないでしょう。そもそも辞めてしまった人材が、自社でリーダーになることはありません。

若手の中で残った従業員がいても、母数が少なければ優秀なリーダー候補を選びにくくなります。若手の早期離職が続くと、将来のリーダー候補となる人材プールが縮小し、組織の持続的成長が困難になります。

データから見る新卒者の早期離職率

新卒者の早期離職率に関するデータは、自社の若手の離職率が平均と比べて高いのか低いのかを知る指標となります。厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」※のデータから、新卒者の早期離職率を学歴別・業種(産業分類)別に見てみましょう。

※早期離職者は、2021年3月に就職して雇用保険の加入届が提出された新卒者のうち、3年以内に離職した人

学歴別の早期離職率

「新規学卒者の離職状況」を見ると、学歴によって早期離職率が変わることが分かります。学歴別に、1〜3年目までに離職した人の割合を表にまとめました。

学歴

3年目までの離職率

1年目の離職率

2年目の離職率

3年目の離職率

大学

34.9%

12.3%

12.3%

10.3%

短大等

44.6%

18.5%

14.1%

12.0%

高校

38.4%

16.7%

12.2%

9.4%

中学

50.5%

31.4%

11.1%

8.0%

大学の新卒者は、3年目までの離職率は34.9%と他の学歴と比べて低いものの、1年目と2年目の離職率がともに12.3%と同水準で推移しており、3年目も10.3%とわずか2ポイントしか下がっていません。

短大等・高校・中学の新卒者に関しては、初年度の離職率が最も高く、2年目・3年目と就業年数が長くなっていくと有意に離職率が下がっていく傾向が見られます。

自社で新卒者や若手の離職が多いなら、この傾向と合致するか分析してみましょう。例えば大学の新卒者で初年度の離職率が4割を超えていた場合、オンボーディングのような職場になじむための施策に問題があるかもしれません。

参考:新規学卒者の離職状況「[表]新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況[258KB]」PDF|厚生労働省

業種別の早期離職率

「新規学卒者の離職状況」からは、業種(産業分類)によっても変わることが分かります。本データから、学歴計の早期離職率を算出した値を見てみましょう。全ての業種を挙げると長くなるため、表には3年以内の離職率が40%以上の業種だけを記載しています。

産業分類(業種)

就職者数(人)

3年目までの離職者数(人)

3年目までの離職率(%)

宿泊業、飲食サービス業

2万1,296

1万2,922

60.7

生活関連サービス業、娯楽業

2万4,597

1万4,628

59.5

その他

7,709

3,772

48.9

教育、学習支援業

2万9,271

1万3,210

45.1

小売業

7万6,287

3万3,953

44.5

サービス業(他に分類されないもの)

4万9,856

2万867

41.9

医療、福祉

12万6,855

5万2,441

41.3

不動産業、物品賃貸業

1万7,434

6,975

40

※離職率(%)は小数点第2位以下を四捨五入

逆に学歴計で早期離職率が低かった業種には、以下が挙げられます。

  • 電気・ガス・熱供給・水道業:12.3%(就業者数3,768人)
  • 化学工業、石油製品・石炭製品製造業:18.1%(就業者数1万4,011人)
  • 機械関係:19.4%(就業者数5万8,672人)
  • 鉱業、採石業、砂利採取業:19.5%(就業者数334人)

参考:新規学卒者の離職状況「新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況」大分類の表|厚生労働省

若手の離職理由として考えられる要因

若手世代の離職理由を探るのに有効なデータが、初職が正社員だった人を対象として労働政策研究・研修機構が実施した「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況」です。初職の離職理由は、若手の早期離職と重なる部分が多いでしょう。本データで上位に上がっている離職理由について、詳しく解説します。

参考:調査シリーズNo.250「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況―第3回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査―「調査シリーズNo.250全文(PDF:8.6MB)」PDF P.219〜221|労働政策研究・研修機構(JILPT)

人間関係が悪い

「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況」で、初職の離職理由として1位に挙がったのは「人間関係がよくなかったため」でした。職場における人間関係には、上司や同僚・取引先の担当者などとの関係が考えられます。

調査結果に「人間関係がよくない」という状態の詳細は明記されていませんが、中にはセクハラやパワハラのような、企業のコンプライアンスに関わる問題が隠れていた可能性もあるでしょう。人間関係は数値化できないため、企業が把握しにくい問題です。

また、仕事に対してモチベーションが高かったとしても、人間関係が良くないとパフォーマンスが落ちたり次第にモチベーションが下がったりします。職場の人間関係は、優先的に状況を把握して企業が対策を打つべき課題です。

心身の健康状態に問題を抱えた

「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況」を見ると、初職の離職理由の2位は「肉体的・精神的に健康を損ねたため」です。身体的・精神的な不調のどちらも、本人の問題だけでなく、過度な仕事の負荷や人間関係のストレスなども考えられます。

特に不調を抱えても休みにくい・休職を相談しにくいという状況だと、離職につながりやすいでしょう。企業としてはいま一度、従業員が心身ともに不調を抱えてしまうような業務配分・環境でないか見直す必要があります。

労働条件や賃金に満足できない

「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況」では、初職の離職理由の3位に「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」が挙がっています。4位は「賃金の条件がよくなかったため」です。

若者には、仕事一辺倒ではなくプライベートの時間もしっかり取りたいと考える人が多いとされています。実際、厚生労働省の共働き・共育てを推進する広報事業「共育(トモイク)プロジェクト」の「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査」の結果(速報、2025年7月発表)では、若年層の約7割が就職先企業を選ぶときに仕事とプライベートの両立を意識しているという結果になりました。

長時間労働が多い、有給休暇が取りにくいといった環境は若手の離職につながるでしょう。賃金については、特に近年は物価高が続く中で、生活に十分な収入が得られなければ離職するのは当然といえます。

参考:「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査」(速報)を公表しました |厚生労働省

キャリアアップが難しい

「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況」を見ると、「キャリアアップするため」は初職の離職理由としては5位で、上位とは思えないかもしれません。しかし男性だけ見ると、「キャリアアップするため」が1位の離職理由です。女性は妊娠・出産・育児といったライフイベントによってキャリアアップの機会が制約されやすく、結果としてキャリアアップへの期待値自体が下がっているため、離職理由として上位に挙がっていないと考えられます。

キャリアアップできない環境だと判断すると、特に若手の男性従業員は転職してしまう可能性があるでしょう。現代の日本は終身雇用制が崩壊しつつあり、いずれ転職が必要になるかもしれないと考える人が増えました。キャリアアップできない環境で働いていることで、転職するときの人材価値が下がってしまう不安を抱くと考えられます。

企業としてできる早期離職の防止策

企業によって、早期離職が増えてしまう理由は変わってきます。ただ、若手の離職理由として考えられる問題を解決することで、入社してすぐ辞めてしまう事態を防いだり早期離職を減らしたりしやすくなるでしょう。具体的にどのような施策が有効なのか、4例挙げて解説します。

コミュニケーション活性化を通じて人間関係を改善する

早期離職の原因としてまず対策したいのが、人間関係の悪さです。特に同僚や上司・先輩など毎日のように顔を合わせて共に仕事をする人との関係が円滑でなければ、ストレスはどんどんたまっていきます。人間関係を良好にするためにも、コミュニケーションを活性化させましょう。

例えば週1回の部署内ランチ会を設定したり、月1回の全社懇親会を開催したりすることで、業務外での対話が生まれます。こうした取り組みにより、若手社員が日常的に上司や先輩に相談しやすい関係性が構築され、人間関係の問題を早期に発見・解決できるようになります。

日常的なコミュニケーションの活性化はもちろん、1on1の実施やメンター制度の導入なども、コミュニケーション機会を増やす方法です。

業務体制やキャリアアップの制度を見直す

初職の離職理由として上位に挙がっていた「心身の不調」は、業務体制の整備によって防止できる場合があります。もちろん急病は防ぎようがありませんが、過度な負荷が原因で心身不調を抱える事態はある程度回避できるでしょう。特定の人に業務が偏っていたり、その人にしかできない業務があって休めないという状況があったりするなら、業務配分の見直しや業務の標準化が必要です。

特に男性従業員にとって重要と考えられるキャリアアップについても、企業側が制度を整えればエンゲージメントの向上につながります。キャリアアップには従業員自身の努力が欠かせないとはいえ、企業としても努力して一定の成果を上げれば昇進できる仕組みづくりは可能です。

先述の通り女性はライフイベントによってキャリアアップの機会が制約されやすい現状がありますが、全ての女性がキャリアアップを諦めているわけではありません。

キャリアアップに関する制度の整備と周知は、女性従業員にとっても早期離職を考え直す機会になり得ます。自らのキャリアプランを描けていない従業員に対しては、1on1を通じてキャリアプランの構築を手助けしたり、キャリアデザイン研修を実施したりするのも一つの方法です。

福利厚生を含めた労働条件や賃金を見直す

労働条件や賃金への不満は、早期離職につながります。雇用契約を交わした時点で労働条件について合意を得ているとはいえ、実際に働いてみて「やはり無理だ」と感じることもあるでしょう。企業としては、人材定着のためにも福利厚生や労働時間・休暇などに加え、もちろん賃金も可能な限り改善していく必要があります。

近年は特に、柔軟な働き方を求める労働者が増えてきました。労働条件に関しては、出社しなくても業務が回る職種だけでもリモートワークを取り入れる、フレックスタイムを導入するなどの工夫が考えられます。福利厚生や賃金の充実は企業の予算によって限界もありますが、まず業界平均や同業他社のデータを収集し、自社の現状と比較します。その上で従業員アンケートを実施して優先度の高い改善項目を特定し、年次予算の中で段階的に改善していく計画を立てることが現実的です。

早期離職者が出たときは理由を分析する

もし早期離職者が出てしまったときは、理由を詳細に分析しましょう。可能であれば、離職する従業員と「退職面談」で本人から直接聞くのが理想です。退職面談は、主に上司や人事担当者が、必要な手続きの説明や確認とともに離職理由のヒアリングを実施します。

なぜ早期離職に至ったかが分かれば、同じ理由での離職を防ぐための制度改善(例:残業削減、メンター制度強化など)に取り組めるほか、採用面接時に候補者の価値観とのミスマッチがないかを事前に確認する質問項目を追加するなど、具体的な対策に役立てられます。

例えば残業が多すぎたからという理由が最多の場合、まずは残業時間の上限規制に引っかかっていないかをチェックした上で、残業を減らすために仕事の仕組みや業務配分を見直します。

早期離職の防止にTUNAGを活用

入社してすぐ辞めてしまう人材が多いなら、「TUNAG(ツナグ)」のようにエンゲージメントを向上させて定着を促すツールを活用する手もあります。早期離職の防止にTUNAGが活用できる理由を三つまとめました。

コミュニケーションの活性化につながる機能が多い

TUNAGには、全社的なコミュニケーション活性化をサポートする機能が豊富です。例えばリアクションやコメントを送れる「タイムライン」は、経営層からの発信に従業員が反応して両者の距離を縮めるきっかけになります。

リアルタイムのコミュニケーションを促進できる「社内チャット」も、コミュニケーション活性化に役立つ機能です。特にリモートワークを導入している、本社と現場でのやりとりがあるなど、リアルタイムでのやりとりに課題を抱えやすい企業なら有用性を感じやすいでしょう。

また従業員同士が感謝を送り合ったり、受信者・送信者に社内ポイントを付けたりできる「サンクスカード」は、称賛文化の醸成を促します。従業員の心理的安全性を高め、積極的に発言できる土台づくりに効果的です。

社内アンケートでストレスの要因を把握できる

TUNAGの社内アンケートを使えば、心身のストレスとなっている要因を把握しやすくなります。スマホアプリから回答できるため、パソコンを持たない従業員でも回答のハードルが低いでしょう。高い回収率を期待できます。

集計も管理画面から簡単に可能です。より踏み込んだ分析を求めるなら、組織サーベイ「TERAS(テラス)」を活用する方法もあります。通常は数値化できない従業員の不満や不安といった「気持ち」も可視化することが可能です。サーベイの実施だけなら無料、有料で効果的な施策の提案も実施しています。

組織のためのエンゲージメントサーベイツール|TERAS

福利厚生機能で独自の福利厚生を用意できる

TUNAGには、福利厚生機能(TUNAGベネフィット)も含まれています。あらかじめ用意された福利厚生があるほか、企業独自の福利厚生も設定することが可能です。

福利厚生の利用者管理は、TUNAG内で一元的にできます。アンケートや調査から見えてきた課題や不満に合わせて、新たな福利厚生を検討するのも働きやすい環境をつくる一つの方法です。施策に悩んだ場合は、専属のカスタマーサクセスにご相談ください。TUNAGでは導入後も、効果を最大化できる運用支援を実施しています。

TUNAG(ツナグ) | 組織を良くする組織改善クラウドサービス

自社の課題に合った対策で早期離職を減らそう

厚生労働省の調査によると、2021年に新卒で入社した人のうち約37.5%(学歴計)が3年以内に離職しています。

新卒者の早期離職率は、学歴や業種によっても変わります。紹介したデータと自社の状況を照らし合わせ、まずは特に自社の早期離職率が高いのかどうかを判断しましょう。

労働政策研究・研修機構では、初職が正社員だった人を対象として、初職を離職した理由を調査したデータを発表しています。離職理由の1位は人間関係、2位は心身の健康状態です。3位・4位に上がった労働時間・休日・休暇や賃金はもちろん、男女計では5位でも男性では1位のキャリアアップも無視できません。もちろんこれらは早期離職者全体の理由と完全に合致するわけではありませんが、原因を探る参考になります。

早期離職を防止したり減らしたりするには、データと自社の状況を照らし合わせながら、まず重要課題を把握することが必要です。その上で、自社で対策すべき課題に対して改善のための施策を実施しましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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