人材育成や働き方の改善に投資していても、従業員が過度な業務負荷や人間関係の問題を抱えていれば、十分に力を発揮し続けるのは難しくなります。企業がウェルビーイングを高めるうえでは、制度を増やす前に、従業員がどこで働きにくさを感じているのかを把握することが必要です。
もちろん福利厚生や健康施策は有効な選択肢ですが、すべての課題に同じ施策が合うわけではありません。業務量に問題がある職場と、上司へ相談しにくい職場では、見直すべき内容が異なります。まずは自社の課題を明確にし、原因に合った施策を選ぶ視点が欠かせません。
本記事では、ウェルビーイングを高める5つの方法に加え、自社に合う施策の選び方、実施後の測定方法、社内で継続するためのポイントまで整理します。制度を増やす前に何を確認すべきか、判断する際にお役立てください。
▼記事のポイントまとめ
・ウェルビーイング向上は、従業員が無理なく働き、力を発揮しやすい職場づくりから考える
・施策は制度名から選ばず、従業員が感じている負担や働きにくさの原因に合わせて決める
・実施後は参加・利用の状況と職場での変化を分けて確認し、必要に応じて見直す
企業がウェルビーイングに取り組む理由は、従業員が無理なく働き続け、自分の経験や能力を仕事で生かしやすい環境を整えるためです。制度や研修を充実させても、日々の働きにくさが残っていれば、その効果を十分に得にくくなります。
主な必要性は次の3つです。
強い疲労やストレスが続けば、従業員が安定して働き続けるのは難しくなります。健康支援制度を用意するだけでなく、業務量や労働時間に無理がないか、休暇を取りにくい雰囲気がないかまで確認します。
特定の担当者に仕事が集中している場合、相談窓口を増やすだけでは負担の原因は変わりません。業務分担や人員配置を見直す方が、課題に直接対応できる場合があります。
本人への支援と、負担を生んでいる職場側の問題は分けて考えます。
なお、心身の不調について企業が独自に診断するのではなく、専門的な対応が必要な場合は産業医など適切な専門家へつなぎます。
体調に大きな問題がなくても、仕事の進め方や周囲との関係によって、従業員が持つ経験や能力を生かしにくいことがあります。
例えば、役割が曖昧だったり、上司へ相談しにくかったりすると、自分で判断して仕事を進めにくくなります。反対に、担当する仕事の目的や役割が分かり、必要な情報を得られる職場では、判断や相談がしやすくなります。
従業員本人だけを見るのではなく、力を発揮しにくくしている仕事の進め方や職場環境にも目を向けます。
人材の定着を考えるときは、離職率だけを見るのではなく、働き続けにくいと感じる理由を確認します。
原因は、処遇や評価制度だけとは限りません。業務負荷、人間関係、キャリアへの不安などが重なっている場合もあります。どこに問題があるかによって、企業が取るべき対応は変わります。
「離職を防ぐ施策」を一律に導入するのではなく、部署や職種ごとの状況を確認し、優先して見直す課題を決める方が現実的です。
ウェルビーイングを高める方法は、健康支援だけではありません。従業員が感じている負担や働きにくさに合わせて、どこを見直すかを決めます。
主な取り組みは次の5つです。
すべてを同時に進めるのではなく、自社で特に影響が大きい課題から優先します。
体調不良や強いストレスを抱える従業員がいる場合は、必要な支援へアクセスしやすい環境を整えます。
健康診断、相談窓口、休暇制度などを利用しやすくするとともに、不調の背景に仕事上の問題がないかも確認します。特定の部署で疲労が目立つのであれば、個人への支援だけでなく、業務量や人員配置も見直す対象です。
健康施策を増やす前に、従業員が何に負担を感じているのかを確認します。
残業時間や休暇取得率だけでは、実際の負担を把握しきれない場合があります。同じ労働時間でも、仕事の偏りや突発対応の多さによって負担感は変わるためです。
まず、特定の人に仕事が集中していないか、不要な作業が残っていないかを確認します。負荷の原因が業務そのものにあるなら、柔軟な働き方の制度を追加するだけでは十分とはいえません。
業務分担や仕事の進め方まで見直すことで、制度では解消できない負担へ対応しやすくなります。
人間関係に課題があっても、「コミュニケーションを増やす」と決めるだけでは、改善につながらない場合があります。まず、誰との関係で、どのような問題が起きているのかを分けて考えます。
上司へ相談しにくいのであれば、1on1の内容や相談する機会を見直します。他部署との連携が不足しているなら、情報共有の方法を整える方が課題に近い対応です。
例えば、1on1を実施していても、進捗確認だけで終わっていれば、悩みや今後のキャリアについて話す機会にはなりません。
「人間関係」という言葉でまとめず、どこで会話や連携が止まっているのかを確認します。
今の仕事を続けた先にどのような成長があるのか分からなければ、将来への不安につながることがあります。
対策は研修を増やすことだけではありません。上司との面談で今後の役割を話す、実務で新しい経験を積めるよう仕事を任せるなど、日々の業務と成長機会を結びつける方法もあります。
職種や本人の希望によって目指す方向は異なります。一律のキャリアプランを当てはめるのではなく、本人が今後の選択肢を考えられる環境を整えます。
自分の仕事が誰の役に立っているのか分からなかったり、工夫や貢献が周囲から見えにくかったりすると、仕事への納得感を持ちにくくなることがあります。
上司からのフィードバックに加え、従業員同士で貢献を伝え合う機会をつくる方法があります。サンクスカードや表彰制度もその一つです。
ただし、制度を設けただけでは使われない場合もあります。どのような場面で感謝や称賛を伝えるのかを分かりやすくし、普段の仕事の流れに組み込みます。
施策は、他社の導入実績や制度の目新しさではなく、自社で起きている問題から選びます。従業員に見えている様子だけで判断せず、その背景に何があるかまで確認することがポイントです。
代表的な課題と施策の考え方を整理すると、次のようになります。
従業員に見られる状態 | まず確認すること | 施策の例 |
疲労やストレスが大きい | 業務量、労働時間、業務の偏り | 業務分担の見直し、休暇制度、健康支援 |
上司へ相談しにくい | 上司との関係、面談内容、相談機会 | 1on1の見直し、相談体制 |
孤立感がある | 部署内外の交流、情報共有 | 社内交流、部署を越えた情報共有 |
貢献を実感しにくい | フィードバック、称賛の機会 | サンクスカード、表彰、フィードバック |
仕事の意味を感じにくい | 理念の理解、仕事と目的のつながり | 経営からの発信、理念や方針の共有 |
成長が見えない | キャリアの見通し、挑戦機会 | キャリア面談、研修、配置の見直し |
同じように見える課題でも、原因は異なります。例えば、仕事への意欲が下がっている場合でも、業務量が多すぎる人と、仕事の目的が分からない人では必要な対応が変わります。
サーベイの平均値だけで決めず、部署や職種ごとの差や面談で出ている声も合わせて確認します。施策は目に見える課題だけで選ばず、その原因まで確かめたうえで決めます。
自社に合いそうな施策が見つかっても、すぐに全社へ導入する必要はありません。優先する課題を決め、限られた範囲で試し、実施後の変化を確認しながら広げます。
進め方は次の4つです。
最初に確認するのは、導入したい施策ではなく、従業員が仕事のどこで負担や働きにくさを感じているかです。
サーベイや面談だけでなく、労働時間、休暇取得、制度の利用状況など、すでに社内にある情報も判断材料になります。ただし、一つの数字だけで原因まで判断するのは避けます。
例えば、働きにくさを感じる人が多くても、業務負荷が原因なのか、人間関係に問題があるのかで対応は変わります。数字と従業員の声を組み合わせて確認します。
複数の課題が見つかっても、すべてへ同時に対応する必要はありません。影響を受けている従業員が多い、業務への支障が大きいといった観点から、先に見直す課題を決めます。
全社平均だけでは問題が見えにくい場合もあります。部署や職種によって差があるなら、課題が強く表れている場所から着手する方が、改善すべき内容を絞りやすくなります。
優先課題が決まったら、一部の部署や拠点で試し、実際の運用に無理がないかを確認します。
1on1を見直すなら、一部のチームで面談内容を変え、従業員と管理職の双方から使いにくい点を聞きます。情報共有の施策であれば、対象部署を絞り、必要な情報が実際に届いているかを確かめます。
小さく始めれば、現場の負担や運用上の問題を修正してから対象を広げられます。
施策を始めた後は、「導入できたか」ではなく、最初に設定した課題に変化があったかを確認します。
利用率が低い場合も、すぐに施策そのものが不要だと判断するのは早計です。制度を知らない、使い方が分からないといった運用上の問題が原因かもしれません。
反対に、利用率が高くても、従業員が感じている負担や働きにくさが変わっていなければ、施策の内容を見直します。結果を確認し、次の判断へつなげるところまでを一つの流れとして考えます。
ウェルビーイング施策の効果は、一つのスコアだけでは判断できません。対象となる従業員が施策を知り、実際に参加・利用しているか、その後に働き方や感じ方が変わったかを分けて確認します。
確認方法は次の4つです。
サーベイでは、仕事への感じ方や人間関係、負担感などを定期的に確認できます。
ただし、全社平均だけでは、特定の部署や職種で起きている問題が隠れる場合があります。また、スコアが低いと分かっても、その理由までは判断できません。
必要に応じて面談やヒアリングを組み合わせ、数字だけでは分からない背景を確認します。
制度や取り組みが、対象となる従業員に実際に使われているかも確認します。
例えば、1on1を導入していても、実施されていなければ想定した役割は果たせません。実施されていても、毎回が進捗確認だけなら、相談や振り返りの場として機能しているとは判断できないでしょう。
社内制度やツールについても、参加率や利用率を見れば、周知や使い方に問題がないかを確認できます。ただし、利用率が高いことと、ウェルビーイングが高まったことは同じではありません。 利用状況は、施策が対象者へ届いているかを見る材料として扱います。
サーベイだけでなく、勤怠、休暇取得、離職などの人事データも合わせて見ると、職場で何が起きているのかを多面的に確認できます。
ただし、離職率や欠勤には、報酬や人員構成など複数の要因が関係します。数値が変わったからといって、ウェルビーイング施策だけの効果だと判断しないことが大切です。
施策に近い指標と人事データを合わせて見ながら、変化の背景を確かめます。
実施直後の一度だけでは、改善が続いているかを判断できません。開始前と実施後で同じ指標を確認し、一定期間の変化を追います。
必要に応じて部署や職種ごとの差も確認します。結果を見ながら、施策を続けるのか、内容を変えるのか、対象を広げるのかを決めます。
施策は、内容が良くても従業員に知られず、使われなければ定着しません。特に店舗や拠点が分かれている企業では、本社から案内を出しただけでは全員へ届かない場合があります。
定着させるために確認したいポイントは次の4つです。
新しい制度を始めるときは、内容だけでなく、何の課題を改善するために行うのかまで伝えます。
目的が分からなければ、従業員からは新しい作業が増えたように見えることがあります。サーベイや1on1であれば、何のために回答・参加するのか、結果をどう使うのかまで共有します。
新しい施策のためだけに時間を確保し続けると、現場の負担になる場合があります。既存の仕事の流れに組み込めないかを先に考えます。
例えば、すでに行っているミーティングに対話の時間を設ける、普段使う情報共有の仕組みに称賛の機能を加えるといった方法です。
施策を既存業務と切り離さず、普段の仕事の中で無理なく使える形にすると継続しやすくなります。
従業員と日常的に接する管理職は、施策を現場で運用する役割を担います。人事から制度だけを渡しても、目的や対応方法が分からなければ、現場ごとに進め方がばらつきます。
管理職には、何をしてほしいのか、どこまで対応するのかを具体的に伝えます。必要に応じて、人事が質問を受ける場や振り返りの機会を用意することも有効です。
一方で、管理職の業務負荷が高い場合は、施策そのものが追加負担にならないかも確認します。
施策が使われていない場合は、理由を切り分けます。制度自体が課題に合っていない場合もあれば、存在を知らない、使い方が分からないといった運用上の問題もあります。
利用率や参加状況だけを見て「関心がない」と判断せず、どこで利用が止まっているのかを確認します。その原因に合わせて、案内方法や対象、利用方法を見直します。
社内施策は、制度を決めただけでは運用が続きません。従業員へ情報が届かない、参加者が一部に偏るといった問題がある場合は、周知や参加の方法そのものを見直す必要があります。
組織改善プラットフォーム「TUNAG」は、社内制度の案内や情報発信などを一つの環境で運用するための選択肢です。ウェルビーイングそのものを高めるサービスではなく、企業が決めた施策を従業員へ届け、継続して運用する部分を支えます。
自社で解決したい課題や施策がすでに決まっており、「従業員へどう届けるか」「どう継続するか」に課題がある企業では、運用方法を考える際の候補になります。
<<TUNAG
ウェルビーイングを高めるために、最初から新しい福利厚生や制度を闇雲に増やす必要はありません。先に確認すべきは、従業員が仕事のどこで負担を感じ、何が働きにくさにつながっているのかです。
原因が分かれば、業務分担を見直すのか、上司との対話を増やすのか、キャリア支援を整えるのかを判断しやすくなります。施策を始めた後も、対象者が実際に参加・利用しているか、当初の課題に変化があったかを確認します。
まずはサーベイや面談、既存の人事データから、自社で優先して見直したい課題を一つに絞ってください。課題に合う施策を小さく試し、結果を見ながら内容を調整していきましょう。自社に取り組みを積み重ね、従業員が無理なく力を発揮できる職場づくりにつなげましょう。