従業員のQOLを高める重要性とメリット。企業が行うべき施策とは?
QOLは、医療や介護の現場で使われてきた言葉ですが、ビジネスでも重要性が認識されています。従業員のQOLが向上すれば、企業経営にも多くのメリットがもたらされるでしょう。QOLに影響を与える要素や企業が行うべき施策を解説します。
QOL(Quality of Life)とは何か?
近年は、あらゆるシーンで「QOL」の重要性が強調されています。QOLとは、Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)の頭文字を取った言葉です。基本的な概念とQOLが注目される理由について理解を深めましょう。
「人生の質」を評価する概念の一つ
QOLは、「人生の質」や「生活の質」を評価する概念です。Quality of LifeのLifeには、「人生」「生活」「生命」という大きな三つの意味があります。物質面の豊かさはもちろん、「生きがいがあるか」「人生に喜びや充足感はあるか」など、精神面での豊かさも含んだ概念といえるでしょう。
医療・福祉の現場においては、患者や障害者が自分らしい生活を送ることを意味します。病気や加齢が進行すると、生理的機能や感覚機能が低下し、生きることに喜びを見出しにくくなります。
医療・福祉に関わるスタッフには、相手の価値観を理解した上で「その人がこれでよいと思えるような生活の状態(QOL)」を維持することが求められているのです。
QOLが注目されている理由
QOLの重要性が増している理由として、高齢化社会の進展や働き方改革の推進が挙げられます。1970年に高齢化社会に突入して以来、日本の高齢化率は右肩上がりの状態です。2024年9月の統計によると、総人口に占める65歳以上の割合は、過去最高の29.3%を記録しました。
高齢化社会が進展すると、身体機能や生活能力の衰えを感じる人が増加します。人間らしい生活を犠牲にして治療に専念するのではなく、人生の質や生活の質を考慮した上で、最善の治療方法を選ぶことが望ましいとされています。
また、かつてはがむしゃらに働くことが美徳とされてきましたが、時代の変化や働き方改革の推進により、自己実現やプライベートの充実に重きを置く人が増えました。従業員のQOLを高める視点がない企業からは、優秀な人材が去っていく可能性があります。
QOLに影響を与える要素
QOLはどのような要因によって変化するのでしょうか?代表的な要素としては、以下のようなものが挙げられます。
- 体の健康
- 精神的なストレスの有無
- 経済的な豊かさ
- 社会との関わりや人間関係
「QOLが高い」とは、身体面・精神面・経済面・社会面の条件が満たされた状態です。各要素は互いに影響し合っており、切っても切り離せません。
例えば、健康状態が悪化すれば、精神的なストレスも増加します。社会に孤立すれば、お金への不安が増したり、心身の健康が損なわれたりする恐れがあるでしょう。
QOLと関連性のあるキーワード
QOLは、多くの意味を持つ抽象的な概念です。関連性のあるキーワードと比較することで、QOLへの理解がさらに深まります。「ADL」「SOL」「QWL」の三つの概念を取り上げ、QOLとの関係性や相違点を解説します。
ADL(Activities of Daily Living)
ADLは「Activities of Daily Living」の略称です。日本語では「日常生活動作」といい、人が自立した日常生活を送る上で最低限必要な「基本動作」を意味します。
具体的には、起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容が含まれ、高齢者や障害者の自立度を測る指標の一つとされています。ADLが低下すると、どのような影響が生じるのでしょうか?
- 身体機能や生活能力が衰える
- 精神的に落ち込みやすくなる
- 社会参加の機会が減少し、経済面に影響が及ぶ
ADLの低下はQOLの低下に直結します。QOLを向上させるには、ADLを高めて自立した生活を目指す必要があるのです。
SOL(Sanctity of Life)
SOLは「Sanctity of Life」の略称で、日本語では「生命の尊厳」と訳されます。「人間の生命は神聖で絶対的なものである」という概念であり、しばしばQOLと対比されます。
例えば、医療行為は「人の命を救うこと」が前提です。治癒困難な病気であっても、医師や医療従事者は生命の維持を何より優先しなければなりません。
QOLは、治療や延命だけに重きを置くのではなく、人間らしい生活をサポートすべきという考え方です。特に、抗がん剤治療などの苦痛を伴う治療では、QOLの向上を目指すことが求められています。
QWL(Quality of Working Life)
QWLは「Quality of Working Life」の略語で、「労働者の労働生活の質」と訳されます。生活の質を高める点ではQOLと同じですが、QWLは労働生活に焦点が当てられているのが特徴です。働くこと自体に喜びや生きがいを見出せれば、人生はより豊かになるでしょう。
産業革命以来の近代産業社会では、生産性の向上を重視するあまり、健康や精神に支障をきたすブルーカラーが増加しました。QWLが注目されはじめたのは1960年代後半で、世界各国ではQWLの向上を目指す取り組みが盛んになります。
従業員のQOLが低下する要因
従業員のQOLが低下すると、企業経営にもマイナスの影響が及びます。企業は、従業員の人生観や価値観を尊重した上で、働き方や福利厚生の充実を図る必要があるでしょう。そもそも、従業員のQOLはどのような要因によって低下するのでしょうか?
自分に見合わない仕事や過酷な労働環境
いくら生活のためとはいえ、自分に見合わない仕事を続けていると、心身のストレスが増大します。ミスの多発で上司に叱咤されたり、本来の能力が十分に発揮できなかったりして、仕事に対するモチベーションも低下します。
厚生労働省では「同一労働同一賃金」のガイドラインを示していますが、「正社員との間に不合理な待遇格差がある」と感じている人は少なくありません。サービス残業や過酷な長時間労働が常態化している業界・業種もあり、早急な改善が必要です。
企業が働き方や労働環境の改善に努めなければ、従業員のエンゲージメントは低下し、最終的には離職者が増加します。
職場の人間関係やハラスメント
人間関係に問題があると気持ちが落ち込み、パフォーマンスが低下します。気持ちの切り替えがうまくできない人の場合、うつ病などの精神障害を引き起こす恐れもあるでしょう。
職場における「ハラスメント」がQOLに与える影響も深刻です。パワハラやセクハラ、マタハラに加え、近年は顧客からのカスハラ(カスタマーハラスメント)も社会的な問題となっています。
2022年4月にパワーハラスメント防止措置が全面的に施行され、パワハラの防止は企業の義務となりました。企業側は、パワハラの撲滅と従業員のメンタルヘルスの増進に力を入れる必要があります。
プライベートでの悩みやストレス
外からは見えにくいですが、家庭内の問題を抱えている従業員は少なくありません。「育児や介護で疲弊している」「多額の借金を抱えている」「家族との折り合いが悪い」といったトラブルがあると、仕事に身が入りにくくなります。
人によっては仕事のパフォーマンスが落ち、ミスを多発するようになります。家に帰りたくない思いが強くなると、ダラダラと残業を続けてしまう人もいるようです。
会社が家庭の問題に介入するのは望ましくありませんが、福利厚生やメンタルヘルス面でのサポートは可能です。
企業が従業員のQOLを向上させるメリット
QOLの向上は、従業員本人だけでなく、企業にもプラスの効果をもたらします。代表的なメリットとして、「業績の拡大」と「離職率の低下」を取り上げます。
業績の拡大につながる
従業員がパフォーマンスを存分に発揮できない環境にあれば、企業はその障害を取り除く必要があります。企業が一人一人の幸福や生きがいを考え、QOL向上をサポートすることにより、最終的には業績の拡大がもたらされます。
例えば、時短勤務や在宅勤務といった時代に合った働き方を導入すれば、子育てや介護を理由に会社を辞める人が減少するでしょう。
評価制度の見直しや福利厚生の充実を図れば、仕事に前向きに取り組む人や新しいことに挑戦する人が増え、パフォーマンスの向上や組織力の強化につながります。
離職率が低下する
労働人口の減少や仕事に対する価値観の変化により、多くの業界では人手不足・人材不足が生じています。かつては、企業が人を選ぶ立場にありましたが、これからは「人材に選ばれる企業」を目指す必要があります。
人手不足・人材不足が深刻化する中、優秀な人材の離職は企業にとって大きな痛手です。企業がQOLを高める施策に力を入れれば、従業員の帰属意識が高まり、結果的には離職率の低下につながるでしょう。
さらに、「従業員を大切にする企業」というイメージが定着し、採用活動では優秀な人材を確保しやすくなります。
企業が行うQOL向上の取り組み例
従業員にとって、職場は1日の大部分を過ごす場所です。企業がQOL向上の施策に取り組むことで、従業員のエンゲージメントは大きく向上します。具体的な取り組み例を紹介しましょう。
働き方やキャリアパスの選択肢を増やす
QOL向上に直結するのが、企業における働き方です。価値観やライフスタイルの多様化により、場所や時間に捉われない柔軟な働き方を望む人が増えています。
「介護をしている」「幼い子どもがいる」「通勤時間が長い」といった従業員にとって、時差出勤や時短勤務、在宅勤務などの選択肢があると、仕事とプライベートの両立が図れます。
また、企業がキャリアパスの選択肢を増やせば、従業員は自分らしさを生かしたキャリア形成ができるようになるでしょう。キャリア研修や能力開発支援を設けることで、さらなるモチベーションの向上が期待できます。
長時間労働を是正する
ワーク・ライフ・バランスの推進に積極的に取り組む企業がある一方、長時間労働が常態化している職場もあります。特に、人手不足・人材不足が深刻化している業界では、従業員1人当たりの業務量が多くなる傾向があるようです。
残業や休日出勤が続くと、従業員の心身に大きなストレスがかかります。最悪の場合、精神障害や過労死につながりかねません。長時間労働の実態や原因を明らかにした上で、以下のような対策を取ることが求められます。
- 新たな設備を導入する
- デジタルツールの採用で作業効率を上げる
- 業務フローを見直す
- 年次有給休暇の取得を促す
福利厚生の充実を図る
就職・転職の際に、企業の福利厚生を重視する人は少なくありません。福利厚生を充実させると、従業員のQOLが大きく向上するのがメリットです。
資格取得支援制度を導入する企業もあれば、飲食店の割引クーポンを発行する企業もあり、近年は福利厚生のバリエーションが増えています。従業員のニーズに合ったサービスを充実させることで、エンゲージメントの向上が期待できるでしょう。
TUNAG(ツナグ)は、社内コミュニケーションの活性化やエンゲージメント向上を支援するITツールです。「TUNAGベネフィット」を通じて、従業員に多彩な福利厚生メニューを提供できます。スマホで利用申請が完結するため、現場スタッフやアルバイトの利用率が上がるでしょう。
出典:TUNAGベネフィット
QOLの向上は好循環を生む
QOLは、自分らしい充実した人生を送ることです。もともとは医療・福祉の現場で使われてきた言葉ですが、現在は日常生活やビジネスシーンにも浸透しています。
企業経営において、働き手のQOL向上は好循環を生みます。これからの時代、QOLに無頓着な企業は、生き残りが難しいといっても過言ではありません。
従業員のQOLを向上させる近道に、ITツールを上手に活用することがあげられます。弊社が提供するTUNAGは、組織課題の分析から組織改善施策の実行までをアプリひとつで実施し、人と組織に働きがいをもたらすクラウドサービスです。
- 離職が多く、優秀な人材がやめていく
- 経営理念やビジョンが浸透しない
- 情報共有や社内交流が少ない
- 会社が目指す方向が分からない
上記のような組織課題に対して、社長メッセージやサンクスカード、福利厚生、社内ポイントなどの豊富な機能で解決を図ります。
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