インナーブランディングとは?効果的な実施方法と効果測定まで実践手法を解説
従業員の離職率上昇や帰属意識の低下は、多くの企業が直面している深刻な経営課題です。その解決策として注目されているのが「インナーブランディング」です。本記事では、インナーブランディングの基本概念から具体的な実施方法、効果測定の手法まで、実践的なノウハウを体系的に解説します。明日から始められる施策例も豊富に紹介していますので、ぜひ自社の組織改革にお役立てください。
インナーブランディングとは
組織の一体感が失われ、従業員の離職が相次ぐ現代において、インナーブランディングは企業の持続的成長を支える重要な取り組みです。
企業理念やビジョンを従業員に浸透させることで、組織全体の方向性を統一し、従業員一人ひとりが自発的に行動する組織文化を醸成できるでしょう。
インナーブランディングの定義と基本概念
インナーブランディングとは、企業が自社の従業員に対して行うブランディング活動を指します。企業理念やビジョン、価値観を社内に浸透させる取り組みです。従業員のエンゲージメントや帰属意識を高めることが目的となります。
単に理念を伝えるだけではありません。従業員が企業の価値観を理解し、共感し、日々の業務で実践できる状態を目指します。従業員一人ひとりが企業の代表者として行動できるようになることが、インナーブランディングの本質といえるでしょう。
アウターブランディングとの違いと相互関係
アウターブランディングは顧客や社会に向けた外部へのブランディング活動です。一方、インナーブランディングは従業員に向けた内部のブランディング活動となります。この二つは密接に関連し、相互に影響を与え合います。
従業員が企業理念を理解していなければ、顧客に対して一貫したメッセージを伝えることは困難です。インナーブランディングが成功すれば、従業員の行動や発言を通じて自然にブランド価値が外部に伝わります。
例えば、顧客サービスの現場で働く従業員が企業理念を体現した対応をすることで、顧客満足度が向上します。このように、内部と外部のブランディングは車の両輪のような関係にあるといえるでしょう。
インターナルブランディングとの関係
インターナルブランディングとインナーブランディングは、ほぼ同義語として使われることが多い概念です。どちらも社内向けのブランディング活動を指しています。企業によって呼び方が異なるだけで、本質的な意味に違いはありません。
両者とも従業員の意識改革と行動変容を促す取り組みです。企業文化の醸成や組織風土の改善を通じて、従業員エンゲージメントを高めることを目指します。
呼称の違いにこだわるよりも、実際の取り組み内容と効果に注目することが大切でしょう。重要なのは、従業員が企業の一員として誇りを持って働ける環境を作ることです。
なぜ今、インナーブランディングが必要なのか
労働市場の変化や価値観の多様化により、従業員と企業の関係性は大きく変わってきています。終身雇用制度が崩れ、転職が当たり前になった現代では、従業員をいかに組織に定着させ、高いパフォーマンスを発揮してもらうかが経営課題となっています。インナーブランディングは、こうした課題を解決する有効な手段として注目を集めているのです。
人材の流動化と深刻化する組織課題
近年、転職市場の活性化により人材の流動化が進んでいます。優秀な人材ほど転職しやすい環境になり、企業は人材確保に苦戦しています。採用コストの増大や知識・ノウハウの流出は、企業経営に大きな影響を与えています。
特に若手社員の早期離職が問題となっています。厚生労働省の調査によれば、新規大卒就職者の就職後3年以内の離職率は、長年30%前後で推移していますせっかく採用し育成した人材が流出することは、企業にとって大きな損失であると同時に、従業員と企業の双方にとって不幸な結果と言えるでしょう。
人材の定着率を高めるためには、給与や福利厚生だけでなく、働きがいや成長実感を提供する必要があります。インナーブランディングは、従業員に企業への帰属意識を持たせ、長期的な定着を促す効果があります。
新規学卒者の離職状況 | 厚生労働省 Ministry of Health, Labour and Welfare Japan
エンゲージメント低下がもたらす経営リスク
従業員のエンゲージメント低下は、生産性の低下や顧客満足度の低下につながります。モチベーションが低い従業員は、自発的な貢献意欲が湧きにくく、最低限の仕事に留まってしまう傾向があります。イノベーションや改善提案も生まれにくくなるでしょう。
エンゲージメントが低い組織では、ミスやトラブルも増加します。従業員同士の連携が取れず、情報共有も滞りがちになります。結果として、業務効率が悪化し、競争力を失うことになりかねません。
さらに、エンゲージメントの低い従業員は、顧客対応にも影響を与えます。企業への愛着がなければ、顧客に対して心のこもったサービスを提供することは難しいでしょう。これらのリスクを回避するためにも、インナーブランディングによるエンゲージメント向上が求められています。
価値観の多様化に対応する組織づくりの必要性
現代は価値観が多様化し、働き方に対する考え方も人それぞれです。ワークライフバランスを重視する人、キャリアアップを求める人、社会貢献を大切にする人など、様々な価値観を持つ従業員が混在しています。
多様な価値観を持つ従業員と共通の目標を目指すことは容易ではありません。しかし、企業理念という共通の軸があれば、個々の多様性を活かしながら組織力を高めることができます。
インナーブランディングは、多様な個性を認めつつ、企業の核となる価値観を共有する仕組みです。従業員一人ひとりの価値観を尊重しながら、組織としての一体感を醸成することが可能になります。
不確実な時代における企業文化の重要性
VUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)と呼ばれる不確実性の高い時代において、企業文化の重要性が増しています。変化の激しい環境では、ルールやマニュアルだけでは対応できません。従業員一人ひとりが自律的に判断し、行動する必要があります。
強固な企業文化があれば、想定外の事態にも柔軟に対応できます。企業理念に基づいた判断基準があることで、迷いなく行動できるようになります。危機的状況においても、組織として一貫した対応が可能になるでしょう。
また、企業文化は競合他社との差別化要因にもなります。商品やサービスは模倣されやすいですが、企業文化は簡単に真似できません。独自の企業文化を持つことが、持続的な競争優位性につながるのです。
インナーブランディングで得られる5つの効果
インナーブランディングの取り組みは、組織に様々な好影響をもたらします。従業員の意識改革から始まり、最終的には企業の業績向上につながる重要な効果が期待できます。ここでは、特に重要な5つの効果について詳しく解説していきましょう。
従業員エンゲージメントの向上と組織活性化
インナーブランディングの最も直接的な効果は、従業員エンゲージメントの向上です。企業理念に共感した従業員は、仕事に対する意欲が高まります。自分の仕事が企業の目標達成に貢献していることを実感できるようになるでしょう。
エンゲージメントが高まると、従業員同士のコミュニケーションも活発になります。部署を超えた協力体制が生まれ、組織全体が活性化します。新しいアイデアや改善提案も増え、イノベーションが起こりやすい環境になります。
また、エンゲージメントの高い従業員は、困難な状況でも前向きに取り組みます。課題に直面しても諦めず、解決策を見つけようと努力します。このような姿勢が組織全体に広がることで、強い組織文化が形成されていくのです。
これは企業側のメリットに留まらず、従業員にとっては自らの仕事に誇りを持ち、日々の業務を通じて成長を実感できるという、キャリアにおける大きな価値にもつながります。
離職率の低下と人材定着率の改善
企業理念に共感し、働きがいを感じている従業員は長く働き続ける傾向があります。インナーブランディングによって帰属意識が高まれば、転職を考える機会も減少します。結果として、離職率の低下につながるのです。
人材の定着は、採用コストの削減だけでなく、組織力の向上にも寄与します。経験豊富な従業員が増えることで、業務の質が向上します。また、社内にナレッジが蓄積され、組織としての競争力が高まります。
特に優秀な人材の定着は、企業にとって大きな財産となります。インナーブランディングによって、優秀な人材が「この会社で働き続けたい」と思える環境を作ることができるでしょう。
生産性向上と組織パフォーマンスの強化
エンゲージメントの高い従業員は、自発的に効率的な働き方を追求します。無駄な作業を見直し、より価値の高い仕事に集中するようになります。結果として、個人の生産性が向上し、組織全体のパフォーマンスも強化されます。
また、企業理念を共有している従業員同士は、連携がスムーズになります。共通の価値観があることで、意思疎通が円滑になり、チームワークが向上します。プロジェクトの進行速度も上がり、成果も出やすくなるでしょう。
さらに、従業員が主体的に業務改善に取り組むようになります。現場から生まれた改善アイデアが実行され、継続的な生産性向上が実現します。このような好循環が、組織の競争力を高めていくのです。
採用力強化による優秀な人材の確保
インナーブランディングが成功している企業は、採用市場でも魅力的に映ります。従業員が生き生きと働いている様子は、求職者にとって大きな魅力となります。口コミやSNSを通じて、良い評判が広がることもあるでしょう。
従業員自身がリクルーターとなり、知人や友人に自社を推薦することも増えます。リファラル採用が活性化し、質の高い人材を効率的に採用できるようになります。採用コストの削減にもつながる効果的な採用手法です。
また、企業理念が明確な企業は、求職者にとって選びやすい存在となります。自分の価値観と合うかどうかを判断しやすく、ミスマッチも減少します。結果として、入社後の定着率も高くなるという好循環が生まれます。
ブランドメッセージの統一とアウターブランディングへの貢献
従業員全員が企業理念を理解し体現することで、顧客に対して一貫したメッセージを発信できます。営業担当者も、カスタマーサポート担当者も、同じ価値観に基づいた対応をすることで、ブランドイメージが統一されます。
従業員の言動そのものが、企業のブランドメッセージとなります。日々の顧客対応や商談の場で、企業理念に基づいた行動を取ることで、自然とブランド価値が伝わります。広告や宣伝とは異なる形で、説得力のあるメッセージとなるでしょう。
SNSの普及により、従業員の発信も企業イメージに大きく影響するようになりました。インナーブランディングによって、従業員がポジティブな発信をすることで、企業の評判向上にもつながります。内部から外部へと、自然にブランド価値が波及していくのです。
インナーブランディングを成功させるための基本的な考え方
インナーブランディングは一朝一夕では成功しません。従業員の意識や行動を変えるためには、計画的かつ継続的な取り組みが必要です。ここでは、成功に導くための基本的な考え方を3つの観点から解説します。
理念浸透の3つのステップ(理解・共感・実践)
理念浸透には、理解、共感、実践という3つのステップがあります。まず、従業員が企業理念の内容を正確に理解することから始まります。次に、その理念に共感し、自分事として捉えられるようになる必要があります。最終的には、日々の業務で理念を実践できる状態を目指します。
理解の段階では、企業理念の背景や意味を丁寧に説明することが重要です。なぜその理念が生まれたのか、どのような思いが込められているのかを伝えましょう。単に暗記させるのではなく、腹落ちするまで対話を重ねることが大切です。
共感の段階では、従業員の価値観と企業理念の接点を見つけることがポイントです。従業員一人ひとりが、自分の仕事や人生において理念がどう関係するかを考える機会を提供しましょう。
実践の段階では、理念に基づいた行動を評価し、称賛する仕組みが必要です。理念を体現した事例を共有し、組織全体で学び合う文化を作ることで、実践が促進されます。
従業員の当事者意識を醸成する巻き込み方
インナーブランディングは、経営層からの一方的な押し付けでは成功しません。従業員一人ひとりの主体性を引き出し、当事者意識を醸成することが重要です。従業員自身が理念づくりや施策の企画に参加することで、自分事として捉えられるようになります。
例えば、理念策定のプロセスに従業員を参加させる方法があります。ワークショップやアンケートを通じて、従業員の意見を取り入れましょう。自分たちの声が反映された理念であれば、共感度も高まります。
また、各部署から選ばれたアンバサダーを任命することも効果的です。アンバサダーが中心となって、現場レベルでの理念浸透活動を推進します。草の根的な活動により、全社的な巻き込みが実現できるでしょう。
中長期的視点での継続的な取り組みの重要性
インナーブランディングは短期間で成果が出るものではありません。3年から5年という中長期的な視点で、継続的に取り組む必要があります。一時的なキャンペーンではなく、日常的な活動として定着させることが重要です。
継続のためには、経営層のコミットメントが不可欠です。トップが理念の重要性を発信し続け、自ら実践する姿を見せることで、従業員も本気度を感じ取ります。予算や人員の確保も含め、経営戦略の一環として位置づけることが必要でしょう。
また、定期的に効果測定を行い、改善を重ねることも大切です。従業員の理解度や共感度を調査し、課題を把握しましょう。PDCAサイクルを回しながら、より効果的な施策へとブラッシュアップしていくことで、持続的な成果につながります。
インナーブランディング施策の2つの分類
インナーブランディングの施策は、日常的に実施するものと定期的に実施するものの2つに分類できます。それぞれの特徴を理解し、バランスよく組み合わせることで、効果的な理念浸透が可能になります。具体的な施策例を交えながら、それぞれの役割と実施方法を解説しましょう。
日常的に実施する施策の特徴と具体例
日常的な施策は、毎日の業務の中で自然に理念に触れる機会を作ることが目的です。継続的な刷り込み効果により、無意識のレベルで理念が浸透していきます。特別な準備や予算をかけずに実施できるものが多いのも特徴です。
具体的な施策としては、以下のようなものがあります。
- 社内報:理念を体現した事例や従業員インタビューを定期配信
- 社内SNS:日々の業務での理念実践例を共有・称賛
- クレドカード:理念を記載したカードを携帯し、いつでも確認可能に
- 朝礼での共有:理念に基づいた行動指針を毎朝確認
- メールの署名:企業理念やスローガンを署名に記載
これらの施策により、理念が日常会話の中で自然に使われるようになります。
日常的な施策の効果を高めるには、従業員参加型にすることがポイントです。例えば、社内SNSで理念実践事例を投稿してもらい、良い事例には「いいね」やコメントで反応する仕組みを作ります。相互承認の文化が生まれ、理念浸透が加速するでしょう。
定期的に実施する施策の目的と実施方法
定期的な施策は、理念について深く考え、共有する特別な機会を提供することが目的です。日常業務から離れて理念と向き合うことで、新たな気づきや共感が生まれます。組織の節目や区切りのタイミングで実施することが効果的です。
主な定期的施策には以下があります。
- 社内イベント:全社総会や創立記念日に理念を再確認
- ワークショップ:理念を自部署の業務に落とし込む対話の場
- キックオフミーティング:期初に理念と年度目標を結びつけて共有
- 表彰制度:理念体現者を表彰し、ロールモデルとして紹介
- 研修プログラム:新入社員研修や階層別研修で理念教育を実施
これらの施策は、準備に時間とコストがかかりますが、インパクトは大きいです。
定期的施策を成功させるには、参加者の記憶に残る演出が重要です。経営層からの熱いメッセージ、感動的な事例共有、参加型のワークショップなど、心に響く体験を提供しましょう。単なる情報伝達ではなく、感情に訴えかける場にすることが効果的です。
日常と定期を組み合わせる相乗効果
日常的施策と定期的施策を組み合わせることで、相乗効果が生まれます。日常的な刷り込みで基礎的な理解を深め、定期的なイベントで感情的な共感を呼び起こす。この繰り返しにより、理念が深く浸透していきます。
例えば、日常的に社内SNSで理念実践事例を共有し、四半期に一度の全社会議で優秀事例を表彰する仕組みを作ります。日々の小さな実践が評価される仕組みがあることで、従業員のモチベーションが維持されます。
また、定期イベントで生まれた熱量を、日常施策で維持することも重要です。キックオフミーティングで共有された目標を、朝礼で定期的に振り返る。ワークショップで学んだことを、社内報で継続的に発信する。このような連携により、施策の効果が持続します。
多様なアプローチを組み合わせることで、様々なタイプの従業員にリーチできます。文字情報が得意な人、対話が好きな人、体験から学ぶ人など、学習スタイルは人それぞれです。複数の手法を用いることで、全員に理念を届けることができるでしょう。
インナーブランディングの実施方法と進め方
インナーブランディングを実際に進めるには、体系的なアプローチが必要です。思いつきで施策を実施しても、期待する効果は得られません。ここでは、現状分析から実施、改善まで、具体的な進め方を4つのステップで解説します。
現状分析と組織課題の明確化
インナーブランディングの第一歩は、組織の現状を正確に把握することです。従業員の意識調査やインタビューを通じて、理念の浸透度や組織の課題を明らかにします。データに基づいた分析により、取り組むべき優先順位が見えてきます。
現状分析では、以下の項目を調査しましょう。
- 理念の認知度:従業員が理念を知っているか、説明できるか
- 共感度:理念に共感しているか、自分事と捉えているか
- 実践度:日々の業務で理念を意識しているか、行動に移せているか
- 組織風土:理念と現場の実態にギャップはないか
- 阻害要因:理念浸透を妨げている要因は何か
これらのデータを部署別、年代別、職階別に分析することで、課題の所在が明確になります。
分析結果を踏まえ、解決すべき課題を優先順位付けします。すべてを一度に解決しようとせず、重要度と緊急度のマトリクスで整理しましょう。まずは影響度の大きい課題から着手することで、効果的な改善が期待できます。
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の策定プロセス
理念が形骸化している場合や、時代に合わなくなっている場合は、MVVの見直しが必要です。策定プロセスに従業員を巻き込むことで、自分たちの理念という意識が生まれます。トップダウンではなく、ボトムアップの要素を取り入れることが重要です。
MVV策定の基本プロセスは以下の通りです。
- 経営層による方向性の提示
- 従業員へのヒアリングやワークショップの実施
- 素案の作成と社内での意見収集
- 最終案の決定と承認
- 全社への発表と浸透施策の開始
このプロセスには3ヶ月から6ヶ月程度の時間をかけることが一般的です。
策定においては、抽象的な美辞麗句ではなく、具体的で行動につながる内容にすることが大切です。従業員が日々の判断基準として使える、実践的な理念を目指しましょう。また、覚えやすく、語りやすい表現にすることで、浸透しやすくなります。
実施計画の立案と推進体制の構築
MVVが決まったら、具体的な実施計画を立案します。3年程度の中期計画と、1年単位の年度計画を作成しましょう。段階的に施策を展開することで、無理なく理念浸透を進められます。
推進体制としては、専門チームの設置が効果的です。人事部門を中心に、各部署の代表者で構成される横断的なプロジェクトチームを作ります。経営層がスポンサーとなり、強力にバックアップする体制も必要です。
実施計画には、以下の要素を含めることが重要です。
- 目標設定:いつまでに何を達成するか
- 施策内容:具体的に何を実施するか
- 役割分担:誰が何を担当するか
- 予算計画:どれくらいの投資をするか
- 評価指標:成功をどう測定するか
計画は柔軟に見直せるようにしておくことも大切です。
PDCAサイクルによる継続的な改善
インナーブランディングは一度実施したら終わりではありません。PDCAサイクルを回しながら、継続的に改善していく必要があります。定期的な効果測定により、施策の有効性を検証し、必要に応じて軌道修正を行います。
Plan(計画)では、現状分析に基づいた施策を企画します。Do(実行)では、計画通りに施策を実施し、記録を残します。Check(評価)では、効果測定により成果を確認します。Action(改善)では、評価結果を踏まえて次の施策に反映させます。
このサイクルを四半期ごとに回すことで、着実な改善が進みます。小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体のモチベーションも維持できるでしょう。失敗を恐れず、トライアンドエラーを繰り返すことが、最適な方法論の確立につながります。
インナーブランディングの調査方法と効果測定
インナーブランディングの成果を可視化することは、施策の改善と経営層への報告において重要です。感覚的な評価ではなく、データに基づいた客観的な測定が必要です。ここでは、調査の目的から具体的な手法、結果の活用方法まで、効果測定の全体像を解説します。
調査の目的-理念浸透度の可視化
調査の最大の目的は、理念がどの程度社員に理解され、共感され、行動として根付いているかを可視化することです。見えない資産である理念浸透度を数値化することで、投資対効果を明確にできます。経営層への報告や予算確保の根拠にもなるでしょう。
調査により、施策の効果を客観的に評価できます。どの施策が有効で、どの施策が改善を要するのかが明らかになります。限られたリソースを最適配分するための判断材料となります。
また、調査結果を従業員にフィードバックすることで、理念浸透の現状を共有できます。自分たちの組織がどの段階にあるのかを理解することで、次のステップへの意識が高まります。調査そのものが、理念について考える機会にもなるのです。
主な調査項目と測定指標
効果的な調査を行うためには、適切な調査項目の設定が重要です。理念浸透の段階に応じて、測定すべき指標を選定しましょう。
主要な調査項目は以下の通りです。
- 企業理念の理解度:理念の内容を正しく理解しているか
- 企業理念への共感度:理念に共感し、誇りを感じているか
- 理念に基づく行動経験:実際に理念を意識した行動を取ったか
- 経営陣の理念実践評価:リーダーが理念を体現しているか
- 理念と制度の連動実感:評価や制度が理念と連動していると感じるか
これらの項目を5段階評価などで数値化し、スコアとして管理します。
測定指標は、組織の成熟度に応じて段階的に高度化させることが効果的です。初期段階では認知度を重視し、次第に共感度、実践度へとフォーカスを移していきます。最終的には、理念浸透度と業績指標の相関を分析することで、ビジネスインパクトを証明できるようになるでしょう。
効果的な調査手法とタイミング
調査手法は、目的や組織規模に応じて選択します。複数の手法を組み合わせることで、より正確な実態把握が可能になります。
代表的な調査手法には以下があります。
- 年1回の社員アンケート:全社員を対象とした定量調査
- 1on1でのヒアリング:上司部下の面談結果を集計し傾向分析
- 理念実践事例の収集:月次で良い事例を募集し件数を測定
- フォーカスグループ:少人数での対話により深層心理を探る
- 行動観察:実際の業務場面での理念実践度を観察
年1回の全社調査を基本とし、四半期ごとの簡易調査で補完する方法が一般的です。
調査のタイミングは、施策実施の前後で比較できるよう計画します。ベースライン調査で現状を把握し、施策実施後に効果測定を行います。継続的な測定により、経年変化を追跡することも重要です。季節要因を排除するため、毎年同じ時期に調査することをお勧めします。
調査結果の分析と活用方法
調査で得られたデータは、多角的に分析することで価値ある情報となります。全体傾向だけでなく、属性別の分析により、きめ細かな対策が可能になります。
分析の観点として、以下のような切り口があります。
- 部署別分析:どの部署で浸透が進んでいるか、遅れているか
- 年代別分析:世代による理解度や共感度の違いはあるか
- 職階別分析:管理職と一般社員で差はあるか
- 勤続年数別:新入社員と古参社員で違いはあるか
- 経年比較:前回調査からどう変化したか
これらの分析により、ターゲットを絞った施策立案が可能になります。
調査結果は理念浸透スコアとして可視化し、経営会議で定期報告しましょう。スコアの推移をグラフ化することで、改善傾向が一目でわかります。また、部署別のスコアを公開することで、健全な競争意識も生まれます。良い取り組みをしている部署の事例を全社で共有することも効果的です。
継続的なモニタリングと改善施策への反映
効果測定は一度きりではなく、継続的に実施することが重要です。定期的なモニタリングにより、理念浸透の進捗を把握し、タイムリーに軌道修正できます。PDCAサイクルの中に調査を組み込み、改善活動のルーティンとしましょう。
モニタリング結果は、次の施策立案に直接反映させます。スコアが低い項目に対して重点的に対策を打つ。効果が出ている施策は継続・拡大し、効果が薄い施策は見直しや中止を検討する。このようなデータドリブンな意思決定により、効率的な理念浸透が実現します。
調査結果の経年変化を蓄積することで、自社独自のノウハウが構築されます。どのような施策がどの程度の期間で効果を発揮するか、組織特性に応じたパターンが見えてきます。この知見は、将来の施策立案において貴重な資産となるでしょう。
エンゲージメント向上サービス「TUNAG」について
インナーブランディングを効果的に推進するためには、適切なツールの活用も有効な手段の一つです。ここでは、組織改善に特化したクラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」をご紹介します。理念浸透から組織活性化まで、包括的にサポートする機能を備えたプラットフォームです。
働きがいのある環境づくりには、従業員のエンゲージメント向上が不可欠
TUNAGは、従業員エンゲージメントの向上を通じて、働きがいのある職場環境を実現します。社内コミュニケーションの活性化、理念の浸透、組織文化の醸成など、インナーブランディングに必要な機能を網羅的に提供しています。
TUNAGの特徴的な機能として、社内SNS機能があります。従業員同士が気軽にコミュニケーションを取り、理念に基づいた行動を称賛し合える環境を構築できます。日常的な理念浸透施策として、非常に効果的です。また、社内報機能により、経営層からのメッセージ配信や、理念実践事例の共有も簡単に行えます。
さらに、アンケート機能を使った定期的な意識調査も可能です。理念浸透度の測定から分析まで、一つのプラットフォームで完結します。調査結果をリアルタイムで可視化できるため、迅速な改善アクションにつなげられるでしょう。
社内施策や制度の取り組みはPDCAが重要
TUNAGは、インナーブランディング施策のPDCAサイクルを効率的に回すための機能を提供しています。施策の企画から実行、効果測定、改善まで、すべてのプロセスをデータで管理できます。感覚的な運用から脱却し、データドリブンのアプローチで組織改善を進められます。
例えば、表彰制度の運用もTUNAG上で完結します。理念を体現した行動を投稿し、従業員同士で推薦し合う仕組みを構築できます。投稿数や反応数などのデータから、施策の効果を定量的に把握することも可能です。このようなデータの蓄積により、より効果的な施策へと改善していけるでしょう。
また、TUNAGは導入企業の成功事例やベストプラクティスを共有する場も提供しています。他社の取り組みから学び、自社に合った形でアレンジすることで、効率的なインナーブランディングが実現します。専門のカスタマーサクセスチームによるサポートも充実しており、初めての取り組みでも安心して進められるでしょう。