社外に向けて会社の魅力を伝えていく「ブランディング」に対して、社内の従業員に向けて会社のビジョンや経営理念の浸透を促進していくことを「インナーブランディング」と言います。
従業員の満足度やモチベーション向上、離職防止のために、インナーブランディングを重要視する企業が増えてきています。
本記事では、インナーブランディングの目的や具体的な手法、有名企業の事例をご紹介します。
インナーブランディングとは
インナーブランディングの意味、概要
インナーブランディングとは、社内の従業員に向けて、会社のビジョンや経営理念の理解、浸透を促進するために行う社内での活動を指します。社外向けの一般的なマーケティング活動と対比的な言葉として使用されます。企業が商品やサービスを顧客に提供する時に行われるマーケティングのように、会社で働く従業員が自社のことを理解し、同じ方向を向けるように、従業員向けにマーケティング活動を行うようなものといっても良いかもしれません。
書籍、『インナーブランディング』では、インナーブランディングの活動について以下の様に記載しています。
インナーブランディング活動は、お客様への約束となる定義されたブランド価値を、実際の商品やサービス内容の中で実現することを目的とします。
インナーブランディングが必要となる部署や対象は、雇用形態や役職にとどまらず、従業員全員、また、関わるパートナー企業なども含めて“すべて”であるということが分かります。
【参考】
甲斐莊 正晃 (2005) 『インナーブランディング―成功企業の社員意識はいかにして作られるか』(中央経済社 )
「インナーブランディング」関連語の整理
インナーブランディング(inner branding)の同義語として、インターナルブランディング(internal branding)、インターナルマーケティング(internal marketing)、インナーマーケティング(inner marketing)があります。いずれも、社外向けのマーケティングの対義語として使用されています。日本では「インナーブランディング」がよく使われる表現となっていまが、英語圏では、internal marketingという表現が一般的です。external marketingの対義語として使用されます。
インナーブランディング施策の2つの分類
社内、特に従業員向けのブランディングという文脈では、様々な形式のコミュニケーション手法が考えられます。 インナーブランディングの施策をコンテンツマーケティングの発想で整理してみると、フロー型と、ストック型に二分できます。
フロー型 | 社内外のイベント、納会、表彰制度、社内報、ポスター等 |
ストック型 | マニュアル動画、研修教材、Web社内掲示板、クレド、サンクスカード、社内ポイント等 |
イベント等のフロー型の短期的、一時的なコンテンツだけでなく、ストック型の継続的に利用されるコンテンツがあることで、より日常的に、自社ブランドへの理解、エンゲージメントを深めることができるのではないでしょうか。
インナーブランディングの事例4選
東京ディズニーリゾート
従業員に対するインナーブランディング活動の具体的な例では、ディズニーリゾートの例が有名です。キャストに向けて、年に一度、キャスト限定の「サンクスデー・アンド・ウィーク」を設けており、2018年1月にも開催されました。
オリエンタルランドグループの役職員が、普段キャストとして働く従業員に向けておもてなしをするイベントで、参加キャストは15,000人にものぼります。
閉園後を貸し切り、記念品をプレゼントしたり、社長が直接メッセージを届けるセレモニーの開催、手作りのデコレーションなどが設けられています。
ディズニーリゾートで働く従業員は、「キャスト」と呼ばれ、それぞれが「夢の国」を提供するという高い意識を持ち、顧客に感動してもらうための体験を提供しています。
このような”おもてなし”を受けることで、従業員も改めて会社のことが好きになり、会社とサービスに誇りを持てる機会となるのではないでしょうか。このように従業員に対して感謝を届ける機会も、インナーブランディング活動の1つといえます。
リッツカールトンのクレド
リッツカールトンでは、従業員満足とお客様満足の向上こそが利益をもたらすと考えられています。そのための取り組みとして、リッツカールトンで働く従業員は「クレドカード」を携帯し、お客様に満足してもらうための共通の価値観を行動に移せるようにしています。
書かれている内容もそうですが、このようなクレドカードを持つことで自身の仕事に誇りを持って働けるのではないでしょうか。
リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。
参考:
ゴールドスタンダード | ザ・リッツ・カールトン
クレドとは?目的や効果、作り方や浸透のためのステップを解説
全日空の顧客満足活動
全日空ではお客様からの声はデータベースに一元管理されており、データベースから抽出される課題をもとに品質改善を続けています。お客様視点を元にすることで、従業員の日々の行動や意識が可視化されるため、インナーブランディングが進んでいるのかがより具体的に把握できます。
このお客様の声をもとに改善された業務は毎月公開されており、もう8年以上継続されているとのことです。
グループ行動指針(ANA's Way)
私たちは「あんしん、あったか、あかるく元気!」に、次のように行動します。
安全(Safety):安全こそ経営の基盤、守り続けます。
お客様視点(Customer Orientation):常にお客様の視点に立って、最高の価値を生み出します。
社会への責任(Social Responsibility):誠実かつ公正に、より良い社会に貢献します。
チームスピリット(Team Spirit):多様性を活かし、真摯に議論し一致して行動します。
努力と挑戦(Endeavor):グローバルな視野を持って、ひたむきに努力し枠を超えて挑戦します。
参考:
https://www.ana.co.jp/group/about-us/vision/
働きがいNo.1企業、アクロエストテクノロジー
2015年に働きがいのある会社ランキング(従業員25〜99人部門)で1位となった会社、アクロエストテクノロジーでは、会社が変わる仕組みとして51の仕組みを書籍で紹介しています。
書籍『会社を元気にする51の「仕組み」』では、「自らが成長する仕組み」「社内の風通しを良くする仕組み」「連帯感を生み出す仕組み」などを紹介しています。
具体的には月に一度、新人が社長・マネージャー以上の上位の社員とランチをする「定期昼食会」、全社員が参加し、どんな議題でも全社員が納得するまで話し合う「MA(全社員会議)」などがあります。取り入れるために難しい仕組みは多くなく、自社の課題解決に合いそうなものを見つけることができればすぐに取り入れられるものばかりです。
【参考】
新免 玲子 (2015) 『会社を元気にする51の「仕組み」』(日本実業出版社 )
インナーブランディングの調査方法
インナーブランディングの調査手法は、目的によって様々なものが考えられます。代表的なのは、定量的調査の従業員アンケートです。社外の会社に調査を依頼し、外部の目線から客観的に評価するケースが多いでしょう。定性的調査の手法の一つとしては、フォーカスグループインタビューが考えられます。5~6名程度の参加者と司会者で構成されるグループで、特定のテーマについて議論したりします。複数人で議論することで、幅広い話題を扱い、深い情報を聞き出します。
参考:
企業のインナーブランディングの定量的評価手法(日本感性工学会論文誌)
Internal vs External Market Research: Is There a “Best” Approach? - SoGoSurvey Blog
TUNAGでの施策事例
インナーブランディングに関わる施策のPDCAを実現するツール
「社長からメッセージをメールで送っているけど、一方通行になっているような気がする」
「組織活性化のために仕組みを入れたけど、どう使われているのかが分からない」
このような課題を解決するための支援を行っています。TUNAGのサービスでは、従業員の皆さんの顔写真、プロフィールの閲覧や、過去の会社のイベントの取り組み、あらゆる社内施策の利用が可視化され、一方通行ではなく従業員を巻き込んだ社内SNSの機能を持っています。
〜お客様の声をTUNAGに公開して全従業員に見れるように〜
〜従業員同士のサンクスメッセージのやりとりをアプリで気軽にやりとり〜
従業員が会社や同僚のことをよく知らなかったり、上司や待遇に不満を持っている状態では、良い商品・サービスを提供し続けることは難しくなります。
仕事や人間関係に不満がある従業員が多いA社と、自社のサービスに共感し、やりがいを感じながら仕事を行っている従業員が多いB社では、会社としての競争力に大きな差がつくのではないでしょうか。
インナーブランディングはすぐに分かりやすい結果が出たり、成功を実感できるものではありません。長期的な取り組みが必要となります。しかし、成功した際は大きな効果をもたらすものとなるでしょう。
TUNAGにおいてどのようなことを行うことができるか、具体的な活用事例をご案内いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
▼導入事例
「店舗内で完結しない横のコミュニケーションが生まれた」 14の飲食ブランドを繋ぐ社内報運用とは
インナーブランディングの目的、必要性
会社の価値を高めるため、自社の理解を深め、会社に共感している従業員を育てる
通常「ブランディング」というと、商品やサービスのブランディング、会社のブランディングなど、社外向けに行われるイメージがあります。しかし、商品やサービスの価値や品質を支えているのは従業員一人ひとりの日々の活動です。
従業員それぞれが会社が目指す方向と同じ方向を向き、企業そのものの価値を高め、成長していくために、インナーブランディングは重要な役割を持っています。
インナーブランディングで得られる効果
期待できる効果としては、主に以下のようなものがあります。
1)離職率の低減
2)従業員満足度・顧客満足度の向上
3)業務の効率化、生産性の向上
4)従業員のモチベーションの向上
インナーブランディング活動では、従業員一人ひとりが自社を自分ごととして捉え、商品・サービスを提供していけるように促していきます。
その活動は短期間でなせるものではなく、長期的な視点が必要になります。そのため、最初の早い段階から全従業員を巻き込み、日々の行動から少しずつ変えていかなくてはなりません。
また、このような効果は一部分であるともいえます。この効果によって商品・サービスに対する意識が変わり、自信を持って商品・サービスを提供する従業員が増えた場合、商品・サービスのブランド価値もより強固なものになり、強い会社づくりの基盤となります。
インナーブランディングの手法
年単位の長期的な視点で取り組み、効果検証が必要
では、インナーブランディングはどのように進めたらよいのでしょうか。
トップが「意識改革」「残業削減」などを叫ぶだけではなかなか現場は変わりません。“お客様への約束となる定義されたブランド価値”を
従業員が意識できるように啓蒙していくことが必要です。
具体的なステップとしては、以下のような形で行われます。
1)社内の現状・課題把握
2)ブランド戦略の策定
3)目標設定
4)目標設定のための具体的な施策の検討・展開(認知→理解・共感の促進→定着)
5)施策の効果検証など、PDCA実施
注意しなければならないのは、従業員の意識改革や社風そのものを変えるということが必要になるため、年単位での活動になるということを会社全体で理解しておくことです。
短期間で「成果が出ない」「やっても意味がない」という雰囲気にならないよう、じっくり取り組むものであるという了解を得ておく必要があります。
トップから現場へ一方通行になる活動はNG
経営者や一部の部門からの情報発信や啓蒙活動などが一方通行で終わってしまっては、インナーブランディングは成功しません。
インナーブランディング活動に必要な
「課題の調査や把握」「ブランド意識の共有」「ブランドを実現するための行動」に、従業員をどれだけ巻き込んでいけるかがポイントです。
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組織エンゲージメントサービス『TUNAG』について
働きがいのある環境づくりには、従業員のエンゲージメント向上を
働きがいのある環境づくりのためには、エンゲージメントの向上が重要です。
TUNAG(ツナグ)では、エンゲージメント経営を推進するために、「会社と従業員」および「従業員同士」の相互信頼関係の確立を最も重要視しており、長期的な取り組みが必要だと考えています。
関連資料:
成長企業が続々導入!エンゲージメント経営実践事例集
社内施策や制度の取り組みはPDCAが重要
課題に合わせた様々な社内施策を組み合わせ、効果を見ながら運用していく必要があります。
『TUNAG』では様々な社内制度を一覧化し、その社内制度の利用促進と見える化で、各企業の課題解決のためのPDCAを回すことが可能なプラットフォームです。専任のトレーナーが制度設計、ツールの運用から改善までを一貫してサポートします。
サンクスカード、日報や1on1MTG、会社からの情報共有(社長メッセージや広報・採用情報など)など、会社とメンバーのエンゲージメントを高めるための様々な社内制度の運用を行うことができます。
▼『TUNAG』について
『TUNAG』では、会社として伝えたい理念やメッセージを、「社内制度」という型として表現し、伝えていくことができます。
会社様ごとにカスタマイズでき、課題に合ったアクションを継続的に実行できるところに強みがあります。
「施策が長続きしない」「定着しない」というお悩みがございましたら、「現在のお取り組み」のご相談を無料で行っておりますので、お問い合わせください。