セクショナリズムの発生原因と改善策。連携強化の成功事例も解説
「営業部が勝手に契約を取ってきて、生産が追いつかない」「開発部と営業部が全く連携できていない」そんな部門間の対立に頭を悩ませていませんか?これらの問題の根本にあるのが「セクショナリズム」です。本記事では、セクショナリズムの基本的な理解から具体的な改善策まで、組織の連携強化に必要な知識を体系的にお伝えします。
セクショナリズムとは?
セクショナリズムは現代の企業が直面する重要な組織課題の一つです。まずは、その基本的な意味や種類、そして企業にもたらすリスクについて詳しく見ていきましょう。
セクショナリズムの意味
セクショナリズム(割拠主義)とは、企業や組織内において各部門が自部門の利益や立場を優先し、他部門と協力せずに動こうとする姿勢を指します。
この状態が続くと、全社的な連携や調整が機能せず、組織全体の生産性や競争力が著しく損なわれるリスクが生じます。
本来、各部門は一つの目的に向かって連携するべき存在であり、セクショナリズムはその統合的な動きを妨げる障害として捉えなければなりません。
セクショナリズムの種類
セクショナリズムにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。代表的な種類としては、以下のようなものが挙げられます。
種類 | 特徴 | 具体的な行動例 |
無関心型 | 他部門の業務や課題に関心を示さない | ・「自分たちの仕事さえきちんとやっていれば問題ない」という考え ・積極的な対立はないが協力的な姿勢も見られない・他部門の困りごとに無関心 |
非協力型 | 他部門からの協力要請に消極的 | ・明確に拒否はしないが最低限の対応に留まる・主体的な支援は行わない ・「それは我々の仕事ではない」という姿勢 |
批判型 | 他部門の方針や行動を批判的に見る | ・建設的な議論よりも否定的な意見が先行・不満や愚痴が多い ・「あの部門はいつも問題を起こす」といった発言 |
排他型 | 他部門を敵対視し積極的に排除しようとする | ・情報の意図的な隠蔽・故意の非協力 ・組織全体の機能不全を招く可能性 |
セクショナリズムによるリスク
セクショナリズムが蔓延すると、組織の生産性と顧客からの信頼が大きく損なわれる恐れがあります。部門ごとに閉じた行動が続くことで、連携不足や情報の断絶が発生し、全体最適が機能しなくなるからです。
例えば、営業部が提示した納期に対し製造部が対応できず、結果的に顧客への納品が遅れるという事例は珍しくありません。
このような状況が続けば、社内の士気も下がり、顧客離れや人材流出を引き起こしかねません。だからこそ、今こそセクショナリズムの解消に本腰を入れる必要があります。組織の力を最大化するには、部門を越えた協働が不可欠です。
セクショナリズムが発生する原因
セクショナリズムは偶然発生するものではありません。組織構造や制度、文化に根ざした明確な原因があります。これらの根本原因を理解することが、効果的な改善策を講じる第一歩となるでしょう。
縦割り構造により横のつながりが少ない
縦割り組織構造は、セクショナリズム発生の主要な原因の一つです。部門ごとに明確な役割分担が定められている一方で、部門間の連携を促進する仕組みが不足しがちになります。
階層が深い組織では、情報伝達にも時間がかかります。部門間での調整が必要な案件は、それぞれの上司を通じて本部に上がり、再び各部門に降りるという複雑なプロセスを経る必要があります。
この間に情報の齟齬が生じたり、タイミングを逸したりするリスクが高まってしまうのです。
また、縦割り構造では各部門の目標設定も独立して行われがちです。全社目標との整合性は保たれていても、部門間での調整や相互支援を前提とした目標設定は難しくなります。
部門間での異動が長期間行われていない
人事異動の頻度や範囲も、セクショナリズム発生に大きな影響を与えます。特に、部門間のジョブローテーションが少ない組織では、従業員の視野が狭くなりがちです。
長期間同じ部門に所属していると、その部門の論理や価値観に深く浸透します。一方で、他部門の業務プロセスや課題への理解は限定的になってしまうでしょう。「なぜあの部門はこんなことをするのか」という疑問が、理解ではなく批判につながってしまうのです。
また、部門間の人的ネットワークも構築されにくくなります。他部門に知り合いがいれば、ちょっとした相談や調整も気軽に行えますが、そうした関係性がないと公式なルートを通じた硬直的なコミュニケーションしか取れません。
成果主義が他部署との対立を助長している
人事評価制度、特に成果主義的な評価システムも、セクショナリズムを助長する要因となり得ます。各部門の成果を個別に評価する仕組みでは、部門間の協力よりも自部門の成果向上が優先されがちです。
営業部門が売上目標達成を最優先に行動すれば、製造部門の生産能力を超えた受注を行う可能性があります。
製造部門が生産効率を重視すれば、営業部門が約束した納期への配慮が不足するかもしれません。
このような状況では、部門間の協力が評価されにくく、他部門への配慮がむしろ自部門の成果を阻害する要因と見なされてしまいます。結果として、各部門が自分たちの利益を最大化しようとし、全体最適が損なわれるのです。
セクショナリズムの改善・予防策
セクショナリズムの改善には、組織構造から評価制度まで、多角的なアプローチが必要です。ここでは、実践的で効果の高い改善策を具体的に解説します。
組織構造を見直す
縦割り組織の弊害を解消するため、横断型の組織編成を導入することが効果的です。プロジェクトベースのチーム編成や、部門を超えたタスクフォースの設置などが具体的な手法として挙げられます。
また、定期的なジョブ・ローテーション制度の導入も重要です。特に管理職候補者には、複数部門での勤務経験を必須とすることで、全社的な視点を持った人材を育成できます。
異動期間は2〜3年程度が適切で、短すぎると専門性が身につかず、長すぎると固定化してしまうでしょう。
組織階層の見直しも検討すべき要素です。過度に深い階層は情報伝達を阻害し、意思決定を遅らせます。可能な限りフラットな組織構造にすることで、部門間のコミュニケーションも円滑になります。
ビジョンやミッションを共有する
各部門が共通の目標に向かって進むためには、企業全体のビジョンやミッションの浸透が不可欠です。部門ごとの目標も、全社ビジョンとの関連性を明確にする必要があります。
定期的な全社会議や研修を通じて、企業の存在意義や長期的な目標を繰り返し伝えることが重要です。単なる情報伝達ではなく、各部門の業務がどのように全社目標に貢献するかを具体的に示しましょう。
価値観の共有も重要な要素です。協力やチームワークを重視する企業文化を醸成し、個人や部門の成果だけでなく、組織全体への貢献を評価する風土を作り上げることが求められるでしょう。
社内コミュニケーションを活性化させる
部門間の壁を取り払うには、日常的なコミュニケーションの活性化が欠かせません。公式な会議だけでなく、非公式な交流の機会も積極的に創出する必要があります。
部門間の情報共有を促進するため、定期的な連絡会議や報告会の開催が効果的です。各部門の現状や課題、今後の予定などを共有することで、相互理解と協力の基盤を築けます。
加えてオープンなコミュニケーション環境の整備も必要です。部門間での気軽な相談や情報交換ができるよう、物理的なレイアウトの工夫や、ITツールの活用を検討しましょう。
評価制度を改善する
セクショナリズムを助長する評価制度を見直し、協力行動を促進する仕組みに変更することが重要です。部門業績だけでなく、部門間連携への貢献も評価対象に含めるべきでしょう。
全社目標の達成度を各部門の評価に反映させることで、部分最適よりも全体最適を重視する行動を促せます。例えば、営業部門の評価に顧客満足度を含めることで、製造部門との連携を重視した営業活動が評価されるようになります。
チーム評価の比重を高めることも検討すべきです。個人成果だけでなく、所属チームや関連部門全体の成果を評価対象とすることで、協力的な行動を促進できるでしょう。
TUNAGで部門間連携を強化した事例
理論だけでなく、実際の成功事例を通じてセクショナリズム改善の具体的な方法を学びましょう。ここでは、TUNAG(ツナグ)を活用して部門間連携を強化した企業の取り組みをご紹介します。
社内連絡や経営理念の発信を集約「牛乳石鹸共進社株式会社」
牛乳石鹸共進社株式会社では、製造現場とオフィス間での情報格差や、部門を越えたコミュニケーション不足が大きな課題でした。
TUNAG導入後は、従来紙や口頭で行っていた情報共有を、スマートフォンやPCを通じて全社員に一斉配信。これにより「情報が遅い・届かない」といった不満が大幅に解消され、製造現場でもリアルタイムで社内情報にアクセスできる環境が整いました。
さらに、社長メッセージや社内報、プロジェクト情報もTUNAG上で可視化され、部署間の理解と一体感が向上しました。結果、情報の発信と浸透が「全員が同じ方向を向いて働く」組織づくりを支えています。
「製造現場にも情報が早く正確に下りてくる」牛乳石鹸共進社が取り組む、全員が同じ方向を向いて働く体制づくり | TUNAG(ツナグ)
連携強化に社内報を活用「株式会社タイソンズアンドカンパニー」
14ブランドを展開するタイソンズアンドカンパニーでは、TUNAG導入により部署や店舗を越えた社内コミュニケーションの活性化に成功しました。
もともと拠点間の情報共有や社長の想いの浸透に課題を抱えていましたが、社内報「TYSONS NEWS」では人事だけでなく現場マネージャーや経営層も発信に参加しています。
必要な情報を必要な人に届ける設計と、店舗ごとの情報分類により閲覧性も向上しました。
コロナ禍では従業員の不安を払拭する相談窓口も設置し、全社を巻き込む形で「顔の見えるコミュニケーション」を実現しました。その結果、現場発の投稿から横断的な情報共有も生まれています。
14の飲食ブランドを繋ぐ社内報運用とは - 「店舗内で完結しない横のコミュニケーションが生まれた」 | TUNAG(ツナグ)
セクショナリズムを解消し協力し合う組織に
セクショナリズムの解消は、一朝一夕で実現できるものではありません。しかし、適切な診断と継続的な改善努力により、必ず組織の連携強化を実現できます。
重要なのは、表面的な対処療法ではなく、根本原因に対するアプローチです。組織構造、人事制度、企業文化など、様々な要素を総合的に見直すことで、持続的な改善効果を期待できるでしょう。
また、改善プロセスにおいては、従業員の理解と協力が不可欠です。なぜセクショナリズムの解消が必要なのか、それによってどのようなメリットが得られるのかを明確に伝え、全社一丸となった取り組みを推進することが重要です。
変化の激しい現代のビジネス環境において、部門間の連携は企業の競争力を左右する重要な要素です。セクショナリズムの解消に向けて、今こそ具体的な行動を開始してみてはいかがでしょうか。