エンゲージメント経営とは?実践方法と成功事例、3つのポイントを徹底解説
エンゲージメント経営とは、従業員と組織の相互信頼関係を構築し、両者が共に成長していく経営手法です。実は日本企業の従業員エンゲージメントは、世界的に見て極めて低い水準にあり、これが生産性低下の大きな要因となっています。本記事では、エンゲージメント経営の基本的な考え方から、具体的な実践方法、成功企業の事例まで解説します。
組織におけるエンゲージメントとは
エンゲージメント経営という言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。これは単なる流行の経営手法ではなく、組織の持続的成長を実現する本質的なアプローチです。
まずはエンゲージメントの基本的な考え方から見ていきましょう。
エンゲージメントの定義と相互信頼関係の重要性
エンゲージメントとは、会社と従業員、そして従業員同士の相互信頼関係を指します。これは一方的な関係ではありません。会社が従業員を信頼し、従業員も会社を信頼する。さらに従業員同士も互いに信頼し合う関係性こそが重要なのです。
従来の日本企業では、上下関係を重視するタテの関係が中心でした。しかし現代では、部門を超えたヨコの関係も同様に大切になっています。
例えば、営業部門と開発部門が互いの仕事を理解し、尊重し合うことで、よりよい製品やサービスが生まれるでしょう。
エンゲージメントが高い従業員は、会社の成功を自分ごととして捉え、主体的に行動します。
エンゲージメント経営が目指す理想の組織状態
エンゲージメント経営が実現すると、どのような組織になるでしょうか。理想的な状態では、従業員一人ひとりが会社のビジョンや方針を深く理解し、共感しています。そして、その実現に向けて自発的に行動を起こすのです。
具体的には、従業員が「なぜこの仕事をするのか」を理解し、自分の役割に誇りを持って取り組みます。指示されたからやるのではなく、組織の目標達成のために何が必要かを自ら考え、提案し、実行に移すのです。
また、困難な状況に直面しても、組織全体で乗り越えようとする強い結束力が生まれます。部門間の壁を越えて協力し合うことで、イノベーションが生まれやすい環境が整います。このような組織では、離職率が低下し、優秀な人材が集まりやすくなります。
エンゲージメント経営が注目されている背景
なぜ今、多くの企業がエンゲージメント経営に注目しているのでしょうか。その背景には、日本企業が直面する構造的な課題があります。これらの課題を理解することで、エンゲージメント経営の必要性がより明確になるはずです。
労働人口減少と人材確保の困難化
日本の労働人口は急速に減少しています。パーソル総合研究所の推計(※)によると、2035年には約384万人の人手不足が予測されており、企業間の人材獲得競争はますます激化するでしょう。特に若手人材の確保は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。
このような状況では、採用だけでなく「いかに人材を定着させるか」が重要になります。せっかく採用した人材が短期間で離職してしまえば、採用コストも育成投資も無駄になってしまいます。
エンゲージメント経営は、この課題に対する有効な解決策となります。従業員が会社に愛着を持ち、成長を実感できる環境を作ることで、定着率の向上が期待できるのです。
また、エンゲージメントの高い従業員は、自社の魅力を周囲に伝える「アンバサダー」となり、採用活動にもよい影響を与えるでしょう。
働き方の多様化と価値観の変化への対応
コロナ禍を経て、働き方に対する価値観は大きく変化しました。リモートワークが普及し、ワークライフバランスを重視する人が増えています。特に若い世代を中心に、給与だけでなく「働きがい」や「成長機会」を重視する価値観が広がっています。
また、副業や複業を認める企業も増え、一つの会社に依存しない働き方も広がっています。このような環境では、従業員を組織に引き付ける新たな魅力が必要です。単に福利厚生を充実させるだけでは、もはや十分ではありません。
従業員が「この会社で働く意味」を感じられる環境づくりが求められています。自分の仕事が社会にどう貢献しているのか、キャリアをどう築いていけるのか。これらの問いに答えられる組織でなければ、優秀な人材を引き付けることは難しいでしょう。
日本企業の低エンゲージメントという危機的現状
注目すべきデータがあります。ギャラップ社の「State of the Global Workplace: 2022 Report」によると、日本の従業員エンゲージメント(仕事への熱意)は5%と、東アジア地域(6カ国・地域中)で最下位でした 。これは、世界平均の21% や、最もエンゲージメント率が低い欧州全体の14% をも大きく下回る、極めて低い水準です。
この低エンゲージメントは、生産性の低下と結びつくことが指摘されています。同調査によると、従業員エンゲージメントが高いビジネスユニットは、低いビジネスユニットと比較して収益性が23%高いという結果が報告されています。
日本の労働生産性が先進国の中で低位にとどまっている要因の一つとも言えるでしょう。
さらに深刻なのは、この状況が「負のスパイラル」を生み出していることです。エンゲージメントが低い組織では、より良い労働環境を求める優秀な人材から離職していく傾向が見られます。残った従業員の負担が増え、さらにエンゲージメントが低下する。この悪循環を断ち切るためにも、エンゲージメント経営への転換が急務なのです。
出典:State of the Global Workplace: 2022 Report
エンゲージメント経営の実践方法
エンゲージメント経営の重要性は理解できても、実際にどう進めればよいか悩む方も多いでしょう。ここからは、具体的な実践方法をステップごとに解説します。段階的に取り組むことで、着実に成果を上げることができるはずです。
現状把握
エンゲージメント経営の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。まずはエンゲージメントサーベイを実施し、従業員の本音を引き出しましょう。アンケート調査だけでなく、1on1面談やグループインタビューなどを組み合わせ、多角的に現状を把握することも重要です。
データを収集する際は、部門別、年代別、職位別など、さまざまな切り口で分析できるようにしましょう。全社平均だけでは見えない課題が、セグメント別の分析で明らかになることがあります。
課題の特定と優先順位付け
現状把握ができたら、次は課題を特定し、優先順位を付けていきます。すべての課題を一度に解決しようとすると、かえって中途半端な結果に終わってしまいます。まずは最も影響の大きい課題から取り組むことが大切です。
優先順位を決める際のポイントは、「影響度」と「実現可能性」の2軸で評価することです。例えば、多くの従業員が不満を感じている課題で、かつ比較的短期間で改善できるものから着手するとよいでしょう。
課題の根本原因を探ることも重要です。表面的な問題の背後には、より深い構造的な問題が潜んでいることがあります。
例えば「コミュニケーション不足」という課題の背景には、評価制度が個人成績重視になっているという根本原因があるかもしれません。
ビジョンの明確化とタテ・ヨコの関係構築
課題が明確になったら、改めて組織のビジョンを明確化し、全社に浸透させていきます。ビジョンは単なるスローガンではなく、従業員一人ひとりの行動指針となるものでなければなりません。
ビジョンの浸透には、トップメッセージの発信が欠かせません。経営層が自らの言葉で、なぜこのビジョンを掲げるのか、どんな会社を目指すのかを語ることが重要です。定期的な全社集会やタウンホールミーティングを開催し、直接対話の機会を作りましょう。
効果測定とPDCAサイクルの確立
エンゲージメント向上は一朝一夕では実現しません。継続的な改善活動が必要です。そのためには、定期的な効果測定とPDCAサイクルの確立が不可欠です。
効果測定は、年1回の大規模調査だけでなく、四半期ごとのパルスサーベイ(簡易調査)も実施しましょう。変化の兆しを早期に把握し、迅速に対応することができます。
測定する指標は、エンゲージメントスコアだけでなく、離職率、生産性指標、顧客満足度なども含めて総合的に評価します。エンゲージメント向上が業績にどう影響しているかを可視化することで、取り組みの意義を組織全体で共有できるでしょう。
エンゲージメント経営への取り組み方の3つのポイント
エンゲージメント経営を成功させるには、押さえておくべき重要なポイントがあります。ここでは、特に重要な3つのポイントを詳しく解説します。これらを意識することで、より効果的な取り組みが可能になるでしょう。
会社の方針を明確化する
エンゲージメント向上の出発点は、経営側が「どのような会社にしたいか」という方針を明確に決めることです。曖昧な方針では、従業員も何を目指せばよいか分からず、エンゲージメントは高まりません。
方針を決める際は、具体的かつ測定可能な内容にすることが重要です。例えば「顧客第一主義」という抽象的な方針ではなく、「顧客満足度を3年以内に業界トップ3に引き上げる」といった具体的な目標を設定します。
また、方針は経営層だけで決めるのではなく、現場の声も反映させることが大切です。従業員参加型のワークショップを開催し、みんなで作り上げた方針という意識を持ってもらうことで、自然と共感が生まれます。
決定事項だけでなく経営の想いを伝える
多くの企業では、決定事項だけを従業員に伝えがちです。しかし、エンゲージメントを高めるには、その決定に至った背景や経営の想いも丁寧に伝える必要があります。
例えば、新しい人事制度を導入する際、制度の内容だけでなく「なぜこの制度が必要なのか」「どんな課題を解決したいのか」「従業員にどうなってほしいのか」といった意図を説明しましょう。経営の想いが伝わることで、従業員も納得感を持って受け入れることができます。
コミュニケーションの方法も工夫が必要です。一方的な通達ではなく、双方向のコミュニケーションを心がけます。質疑応答の時間を設け、従業員の疑問や不安に真摯に答えることで、信頼関係が深まります。
従業員の良い行動へのフィードバック
エンゲージメント向上には、従業員のよい行動を認め、称賛することが欠かせません。期待する行動をとった従業員に対して、経営側から積極的にフィードバックを行いましょう。
フィードバックは、タイムリーかつ具体的に行うことが重要です。「よくやった」という抽象的な褒め方ではなく、「○○の提案により、顧客満足度が10%向上した」といった具体的な成果を伝えましょう。
小さな成功体験の積み重ねが、従業員の自信とやりがいにつながり、さらなる挑戦への意欲を生み出します。
エンゲージメント向上から組織文化の変革まで、組織に合わせて必要な施策をカスタマイズできる「TUNAG」
エンゲージメント経営を実践する上で、適切なツールの活用は成功の鍵となります。「TUNAG(ツナグ)」は、働きがいのある組織づくりを推進し、離職率や定着率の改善を実現するために、組織の課題に合わせてカスタマイズできるプラットフォームです。
TUNAGの特徴は、単なるコミュニケーションツールに留まらず、会社と従業員、従業員同士の相互信頼関係を育み、組織の力を最大化するための総合的なソリューションを提供していることです。社内SNS機能による社内交流と相互理解の促進、サンクスカード機能による称賛文化の醸成・称賛の習慣化、アンケート機能によるエンゲージメント測定や離職兆候の検知など、働きがいを高めるための多様な取り組みを実現する多彩な機能を備えています。
また、100社100通りの組織課題に対応できる柔軟なカスタマイズ性も大きな特徴です。情報共有を重視する企業、経営理念や行動指針の浸透を図りたい企業、社員教育・ナレッジ共有を強化したい企業など、エンゲージメント向上に向けたそれぞれのニーズに合わせた活用が可能です。
導入後のサポート体制も充実しています。専任のカスタマーサクセスチームが導入時の初期設定から運用後の効果的な活用方法まで組織の状況に応じた提案を行い、PDCAサイクルを回しながら継続的な組織改善を支援します。ツールを導入するだけでなく、働きがいのある組織づくりや組織文化の変革まで伴走してくれるパートナーとして、導入企業様の成功を力強くサポートしています。
TUNAGを活用してエンゲージメント向上に取り組んだ企業の声
実際にTUNAGを活用し、エンゲージメント向上に取り組んだ企業の事例を見てみましょう。成功企業の取り組みから、自社に活かせるヒントが見つかるはずです。
フェイラージャパン株式会社の事例
シュニール織のファッション雑貨を製造・販売するフェイラージャパン株式会社では、経営理念や事業目的への共感を促進したり、スタッフ同士の信頼関係を築くことを目的に、社内イントラで「幸せつむぐ掲示板」と「サンクスカード」を運用していました。しかしこれらのツールは店舗スタッフにとっては店舗のPCからしかアクセスができなかったため、100店舗・360名の従業員を抱える中で、施策の浸透に課題を感じていました。
そこで同社ではTUNAGを導入し、スマートフォンからアクセス可能な環境を整備。コミュニケーションを3つのステップで設計し、「業務効率化・スキルアップ」に加えて、「称賛文化の醸成」では感謝を伝え合うことで従業員のモチベーション向上を図り、「ブランドバリューの浸透」では理念の浸透により会社と従業員の双方向のエンゲージメントを高めることを目指しました。
結果として、2023年度には感謝を伝え合う「サンクスカード」の年間発行枚数が過去最高の約3,000枚に到達し、投稿へのコメントも活発化。店舗を超えた従業員同士の交流が生まれ、他店舗の接客スタイルやノウハウを学び合える環境が実現しました。
さらに、会社のブランドバリューについて投稿するレポートでは、従業員の投稿率が開始1年で「3人に1人」から「2人に1人」へと向上。エンゲージメントの高まりを示す具体的な成果につながっています。
全国の百貨店に展開する「FEILER」店舗の壁を超えたコミュニケーションでブランド力向上を目指す|TUNAG(ツナグ)
登別立正学園の事例
6つの施設、120名の職員を抱える登別立正学園では、施設間の情報共有に大きな課題を抱えていました。施設ごとに異なる連絡ツールを使用しており、メールを送っても返事が来ないなどのすれ違いが発生。全職員が同じ思いで、温度差なく、タイムリーに情報共有できる環境が求められていました。
同法人ではTUNAGを導入し、業務連絡やコミュニケーションの入り口を一本化しました。スマートフォンでアクセスでき、「制度」という形で情報をカテゴライズして発信できる点が決め手となりました。また、組織診断ツール「TERAS」やカスタムダッシュボードも活用し、階層ごとの課題や職員の状態を可視化する取り組みも進めています。
導入後は、職員から自発的に「動画マニュアルを作りたい」「こんな制度を作りたい」といった意見が出るようになりました。新入職員もTUNAGで過去の情報や現在の施設の状況を簡単に把握できるようになり、職員同士の関係性や時間、距離が一気に縮まったといいます。「夢を追いかけてきてよかった」と思える職場環境づくりに、TUNAGが貢献しています。
施設ごとにバラバラだった連絡ツールを一本化。自己肯定感を高め「長く働ける組織」を作る、登別立正学園のTUNAG活用法
エンゲージメント経営の第一歩は「自社の現状把握」から
エンゲージメント経営は、組織の持続的成長を実現する重要な経営手法です。従業員と組織が相互に信頼し、共に成長していく関係性を構築することで、離職率の改善、生産性の向上、イノベーションの創出など、さまざまな成果が期待できます。
しかし、エンゲージメント向上は一朝一夕では実現しません。まずは自社の現状を正確に把握することから始めましょう。従業員の声に真摯に耳を傾け、課題を特定し、優先順位をつけて取り組むことが大切です。
経営層のコミットメントも欠かせません。方針を明確にし、想いを伝え、よい行動を称賛する。このような地道な取り組みの積み重ねが、組織文化を変えていきます。
日本企業のエンゲージメントレベルは世界的に見て低い水準にあります。しかし、これは大きな伸びしろがあるということでもあります。今こそエンゲージメント経営に取り組み、組織の可能性を最大限に引き出していきましょう。自社も、着実に変わっていくことができるはずです。













