エンゲージメント経営とは、従業員が会社の理念や目標に共感し、自ら貢献したいと思える関係をつくる経営の考え方です。
従業員エンゲージメントを高めることは、離職防止や人材定着だけでなく、組織全体の活性化にもつながると考えられています。ただし、エンゲージメント経営は単発のイベントや福利厚生だけで実現できるものではなく、経営の発信や日々のコミュニケーションを継続的に改善することが必要です。
そこでこの記事では、エンゲージメント経営が注目される背景から具体的な実践方法まで、自社で取り組む際に押さえておきたいポイントを解説します。
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エンゲージメント経営とは、会社と従業員の信頼関係を高め、一人ひとりの力を組織の成長につなげていく経営の考え方です。
単に従業員の満足度を高めるのではなく、会社の目指す方向に共感し、自発的に貢献したいと思える状態をつくることを重視します。エンゲージメント経営を理解するうえでは、次の2点を押さえることが重要です。
エンゲージメントとは、会社と従業員、従業員同士の間に生まれる信頼や結びつきの強さを表す考え方です。
エンゲージメント経営では、従業員が会社の理念や目標に共感し、自分の仕事を通じて組織へ貢献したいと思える状態を重視します。従業員満足度が「職場環境や待遇に満足しているか」を見るのに対し、エンゲージメントは自発的な行動や貢献意欲まで含めて捉える点が特徴です。
例えば、給与や福利厚生に満足していても、会社の方向性に共感できず、必要最低限の仕事だけを行っている状態も考えられます。一方で、自分の仕事が会社の目標につながっていると理解できれば、改善提案や周囲への協力といった主体的な行動も生まれやすくなります。そのため、エンゲージメントを高めるには、待遇だけでなく、理念への共感や日々のコミュニケーション、相互の信頼を育てることが重要です。
エンゲージメント経営が目指す理想の状態は、従業員が会社の方向性を理解し、自分の役割と結びつけて自発的に行動できる組織です。
具体的には、従業員が「なぜこの仕事をするのか」を理解し、自分の役割に誇りを持って取り組みます。指示されたからやるのではなく、組織の目標達成のために何が必要かを自ら考え、提案し、実行に移すのです。
また、困難な状況に直面しても、組織全体で乗り越えようとする強い結束力が生まれます。会社側も従業員の声を把握し、組織づくりや制度改善へ反映する姿勢が求められます。エンゲージメント経営とは、会社が従業員に一方的に働きかけるのではなく、双方が信頼関係を築きながら成長できる組織をつくることだといえるでしょう。
エンゲージメント経営が注目される背景には、人材不足の深刻化と働く人の価値観の変化があります。
特に、次の3つの変化は企業経営への影響が大きいと考えられます。
人材を継続的に確保する必要性が高まっていることは、エンゲージメント経営が注目される大きな背景です。
日本の労働人口は急速に減少しています。パーソル総合研究所の推計(※)によると、2035年には約384万人の人手不足が予測されており、企業間の人材獲得競争はますます激化するでしょう。特に若手人材の確保は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。
このような状況では、採用だけでなく「いかに人材を定着させるか」が重要になります。せっかく採用した人材が短期間で離職してしまえば、採用コストも育成投資も無駄になってしまいます。
エンゲージメント経営は、この課題に対する有効な解決策となります。従業員が会社に愛着を持ち、成長を実感できる環境を作ることで、定着率の向上が期待できるのです。
また、エンゲージメントの高い従業員は、自社の魅力を周囲に伝える「アンバサダー」となり、採用活動にもよい影響を与えるでしょう。
働く場所やキャリアへの考え方が多様化したことも、エンゲージメント経営が求められる理由の一つです。
従業員によって、仕事に求めるものや生活とのバランスは異なります。厚生労働省も、転職市場の拡大やワーク・ライフ・バランスへの関心などを背景に、企業と労働者の関係性が変化していると指摘しています。
一律の制度を用意するだけでは、すべての従業員の期待に対応することは難しいでしょう。エンゲージメント経営では、従業員の声を把握しながら、組織の目標と一人ひとりの働く意味をつなぐことが求められます。
日本の従業員エンゲージメントは世界と比較して低く、エンゲージメント経営を考える必要性が高い状況です。
ギャラップ社の「State of the Global Workplace: 2022 Report」によると、日本の従業員エンゲージメント(仕事への熱意)は5%と、東アジア地域(6カ国・地域中)で最下位でした 。これは、世界平均の21% や、最もエンゲージメント率が低い欧州全体の14% をも大きく下回る、極めて低い水準です。
この低エンゲージメントは、生産性の低下と結びつくことが指摘されています。同調査によると、従業員エンゲージメントが高いビジネスユニットは、低いビジネスユニットと比較して収益性が23%高いという結果が報告されています。
さらに深刻なのは、この状況が負のスパイラルを生み出していることです。エンゲージメントが低い組織では、より良い労働環境を求める優秀な人材から離職していく傾向が見られます。残った従業員の負担が増え、さらにエンゲージメントが低下する。この悪循環を断ち切るためにも、エンゲージメント経営への転換が急務なのです。
出典:State of the Global Workplace: 2022 Report
エンゲージメント経営は、現状把握から施策の改善までを一つのサイクルとして進めることが重要です。
基本的には、次の4つの流れで進めます。
エンゲージメント経営の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。まずはエンゲージメントサーベイを実施し、従業員の本音を引き出しましょう。アンケート調査だけでなく、1on1面談やグループインタビューなどを組み合わせ、多角的に現状を把握することも重要です。
データを収集する際は、部門別、年代別、職位別など、さまざまな切り口で分析できるようにしましょう。全社平均だけでは見えない課題が、セグメント別の分析で明らかになることがあります。
エンゲージメント経営では、把握した課題を整理し、優先して改善するテーマを決める必要があります。
すべての課題を一度に解決しようとすると、かえって中途半端な結果に終わってしまいます。まずは最も影響の大きい課題から取り組むことが大切です。
優先順位を決める際のポイントは、「影響度」と「実現可能性」の2軸で評価することです。例えば、多くの従業員が不満を感じている課題で、かつ比較的短期間で改善できるものから着手するとよいでしょう。
課題の根本原因を探ることも重要です。表面的な問題の背後には、より深い構造的な問題が潜んでいることがあります。例えば「コミュニケーション不足」という課題の背景には、評価制度が個人成績重視になっているという根本原因があるかもしれません。
課題が明確になったら、改めて組織のビジョンを明確化し、全社に浸透させていきます。ビジョンは単なるスローガンではなく、従業員一人ひとりの行動指針となるものでなければなりません。
ビジョンの浸透には、トップメッセージの発信が欠かせません。経営層が自らの言葉で、なぜこのビジョンを掲げるのか、どんな会社を目指すのかを語ることが重要です。定期的な全社集会やタウンホールミーティングを開催し、直接対話の機会を作りましょう。
エンゲージメント経営は、一度施策を実施して終わりではなく、結果を確認して改善し続ける必要があります。組織の状態は、人や環境などによって変化するからです。
効果測定は、年1回の大規模調査だけでなく、四半期ごとのパルスサーベイ(簡易調査)も実施しましょう。変化の兆しを早期に把握し、迅速に対応することができます。
測定する指標は、エンゲージメントスコアだけでなく、離職率、生産性指標、顧客満足度なども含めて総合的に評価します。エンゲージメント向上が業績にどう影響しているかを可視化することで、取り組みの意義を組織全体で共有できるでしょう。
エンゲージメント経営を定着させるには、経営の方向性を伝え、日常の行動へつなげることが重要です。
特に意識したいポイントは、次の3つです。
エンゲージメント経営では、会社がどこを目指しているのかを従業員が理解できる状態をつくることが重要です。
会社の方向性が分からなければ、従業員は何を基準に行動すべきか判断しづらくなります。経営理念やMVV、中期経営計画などを整理し、会社として大切にする考え方を明確にしましょう。
ただし、資料や社内ポータルへ掲載するだけでは十分とはいえません。例えば、経営メッセージや朝礼、社内報など複数の場面で繰り返し伝える方法があります。
さらに、自部署の目標や日々の仕事と結びつけることで、自分ごととして理解しやすくなります。エンゲージメント経営では、方針を決めること以上に、現場の判断基準になるまで伝えることが大切です。
エンゲージメント経営では、「何を決めたか」だけでなく「なぜ決めたか」まで従業員へ伝えることが重要です。
多くの企業では、決定事項だけを従業員に伝えがちですが、エンゲージメントを高めるにはその決定に至った背景や経営の想いも伝える必要があります。
例えば、新しい人事制度を導入する際、制度の内容だけでなく「なぜこの制度が必要なのか」「どんな課題を解決したいのか」「従業員にどうなってほしいのか」といった意図を説明するのが良いでしょう。経営の想いが伝わることで、従業員も納得感を持って受け入れることができます。
コミュニケーションの方法も工夫が必要です。一方的な通達ではなく、双方向のコミュニケーションを心がけます。質疑応答の時間を設け、従業員の疑問や不安に真摯に答えることで、信頼関係が深まります。
エンゲージメント経営では、組織が求める良い行動を認め、具体的にフィードバックすることも重要です。成果だけを評価していると、結果につながるまでの行動や周囲への貢献が見えにくくなる場合があります。
フィードバックは、タイムリーかつ具体的に行うことが重要です。「よくやった」という抽象的な褒め方ではなく、「○○の提案により、顧客満足度が10%向上した」といった具体的な成果を伝えましょう。
小さな成功体験の積み重ねが、従業員の自信とやりがいにつながり、さらなる挑戦への意欲を生み出します。
エンゲージメント経営を継続するには、自社の課題に合わせて施策を実行し、その効果を確認できる仕組みが必要です。
「TUNAG(ツナグ)」は、働きがいのある組織づくりを推進し、離職率や定着率の改善を実現するために、組織の課題に合わせてカスタマイズできるプラットフォームです。
エンゲージメント経営で活用できる機能や取り組みには、次のようなものがあります。
企業によって、離職、情報共有、理念浸透、コミュニケーションなど優先すべき課題は異なります。
TUNAGでは、企業ごとの組織課題に合わせて取り組みをカスタマイズし、実施後の状況まで確認できます。
導入後のサポート体制も充実しています。専任のカスタマーサクセスチームが組織の状況に応じた提案を行い、PDCAサイクルを回しながら継続的な組織改善を支援します。ツールを導入するだけでなく、働きがいのある組織づくりや組織文化の変革まで伴走してくれるパートナーとして、導入企業様の成功を力強くサポートしています。
実際にTUNAGを活用し、エンゲージメント向上に取り組んだ企業の事例を見てみましょう。成功企業の取り組みから、自社に活かせるヒントが見つかるはずです。
シュニール織のファッション雑貨を製造・販売するフェイラージャパン株式会社では、経営理念や事業目的への共感を促進したり、スタッフ同士の信頼関係を築くことを目的に、社内イントラで「幸せつむぐ掲示板」と「サンクスカード」を運用していました。しかしこれらのツールは店舗スタッフにとっては店舗のPCからしかアクセスができなかったため、100店舗・360名の従業員を抱える中で、施策の浸透に課題を感じていました。
そこで同社ではTUNAGを導入し、スマートフォンからアクセス可能な環境を整備。コミュニケーションを3つのステップで設計し、「業務効率化・スキルアップ」に加えて、「称賛文化の醸成」では感謝を伝え合うことで従業員のモチベーション向上を図り、「ブランドバリューの浸透」では理念の浸透により会社と従業員の双方向のエンゲージメントを高めることを目指しました。
結果として、2023年度には感謝を伝え合う「サンクスカード」の年間発行枚数が過去最高の約3,000枚に到達し、投稿へのコメントも活発化。店舗を超えた従業員同士の交流が生まれ、他店舗の接客スタイルやノウハウを学び合える環境が実現しました。
さらに、会社のブランドバリューについて投稿するレポートでは、従業員の投稿率が開始1年で「3人に1人」から「2人に1人」へと向上。エンゲージメントの高まりを示す具体的な成果につながっています。
全国の百貨店に展開する「FEILER」店舗の壁を超えたコミュニケーションでブランド力向上を目指す|TUNAG(ツナグ)
6つの施設、120名の職員を抱える登別立正学園では、施設間の情報共有に大きな課題を抱えていました。施設ごとに異なる連絡ツールを使用しており、メールを送っても返事が来ないなどのすれ違いが発生。全職員が同じ思いで、温度差なく、タイムリーに情報共有できる環境が求められていました。
同法人ではTUNAGを導入し、業務連絡やコミュニケーションの入り口を一本化しました。スマートフォンでアクセスでき、「制度」という形で情報をカテゴライズして発信できる点が決め手となりました。また、組織診断ツール「TERAS」やカスタムダッシュボードも活用し、階層ごとの課題や職員の状態を可視化する取り組みも進めています。
導入後は、職員から自発的に「動画マニュアルを作りたい」「こんな制度を作りたい」といった意見が出るようになりました。新入職員もTUNAGで過去の情報や現在の施設の状況を簡単に把握できるようになり、職員同士の関係性や時間、距離が一気に縮まったといいます。「夢を追いかけてきてよかった」と思える職場環境づくりに、TUNAGが貢献しています。
施設ごとにバラバラだった連絡ツールを一本化。自己肯定感を高め「長く働ける組織」を作る、登別立正学園のTUNAG活用法
エンゲージメント経営は、組織の持続的成長を実現する重要な経営手法です。従業員と組織が相互に信頼し、共に成長していく関係性を構築することで、離職率の改善、生産性の向上、イノベーションの創出など、さまざまな成果が期待できます。
しかし、エンゲージメント向上は一朝一夕では実現しません。まずは自社の現状を正確に把握することから始めましょう。従業員の声に真摯に耳を傾け、課題を特定し、優先順位をつけて取り組むことが大切です。
経営層のコミットメントも欠かせません。方針を明確にし、想いを伝え、よい行動を称賛する。このような地道な取り組みの積み重ねが、組織文化を変えていきます。
日本企業のエンゲージメントレベルは世界的に見て低い水準にあります。しかし、これは大きな伸びしろがあるということでもあります。今こそエンゲージメント経営に取り組み、組織の可能性を最大限に引き出していきましょう。自社も、着実に変わっていくことができるはずです。