ウェルビーイング経営の進め方は、企業によって異なります。健康支援を充実させる企業もあれば、働き方や社内コミュニケーション、理念浸透などから職場環境を見直す企業もあります。
大切なのは、他社の施策をそのまま取り入れることではありません。自社で何が課題になっているのかを整理し、改善したい内容に合う取り組みを選ぶことです。また、情報共有や称賛、従業員の声を集める仕組みなど、施策を継続して運用するためにクラウドサービスを活用する方法もあります。
本記事では、ウェルビーイング経営に取り組む企業3社に加え、組織改善クラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」を活用した5社の事例を紹介します。各社の取り組みと、自社で施策を考える際のポイントを整理するためにお役立てください。
▼記事のポイントまとめ
・ウェルビーイング経営の取り組み方は、企業が抱える課題によって異なる
・他社事例は施策そのものではなく、課題と取り組みのつながりを見る
・情報共有や対話を継続する仕組みとして、組織改善クラウドを活用する方法もある
ウェルビーイング経営では、健康施策だけでなく、働き方や人間関係、成長機会なども含めて職場を見直します。ただし、適切な施策は企業の状態に応じて異なります。まずは、企業ごとにどのような考え方で取り組んでいるのかを確認します。
紹介するのは、次の3社です。
楽天グループは「Well-being First」という楽天健康宣言のもと、従業員の心身の健康と、社会とのつながりを含めたウェルビーイングの向上を目指しています。CWO(Chief Well-being Officer)のリーダーシップのもと、ウェルネス部を中心にグループ企業が連携して取り組みを進めています。
施策は、Body(健康的な体)、Mind(健康的な心)、Social(健康的な社会とのつながり)の3つを軸にしています。楽天クリムゾンハウスでは、栄養バランスに配慮した食事の提供に加え、フィットネスジムやスパ、社内クリニックなどを用意しています。
また、心身や職場での悩みについて産業医へ相談できる窓口も設けています。設備を用意するだけではなく、従業員が不調や悩みを感じたときに支援へつながれる環境を整えている点が特徴です。
同社では「ウェルビーイングサーベイ」も定期的に実施し、従業員の心身の状態や課題を把握しています。調査結果から運動不足、睡眠の質、体重管理を健康課題として特定し、それぞれに応じた取り組みを進めています。
トヨタ自動車は「幸せの量産」をミッションに掲げ、クルマづくりだけでなく、より良いモビリティ社会やまちづくりにも取り組んでいます。その一環として、2021年にトヨタ自動車 未来創生センター、株式会社豊田中央研究所、Toyota Research Institute(TRI)の研究者による「Emotional Well-Being研究会」を立ち上げました。
2022年3月には、「多様性と多元性から見るWell-Being」をテーマに第1回の研究会をトヨタグループ向けに実施しています。講演とパネルディスカッションを通じて、一人ひとりにとってのWell-Beingは異なることや、多様性を尊重することの大切さについて議論を深めました。
この取り組みから分かるのは、ウェルビーイングを一つの理想像に当てはめない姿勢です。従業員や社会にとって何が良好な状態なのかを考え続けること自体を、継続的な取り組みとして位置づけています。
多様性と多元性から見る Well-Being | 未来につながる研究 | モビリティ | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
丸井グループは、「お客さまのお役に立つために進化し続ける人の成長=企業の成長」という経営理念のもと、すべてのステークホルダーの「しあわせ」を目指すWell-being経営を進めています。
同社の取り組みは、1962年の丸井健康保険組合の設立から続いています。2016年には、グループ横断の「健康経営推進プロジェクト」、現在のWell-being推進プロジェクトを発足しました。
このプロジェクトは公募制で、応募者の中から小論文で選抜されたメンバーが参加します。メンバーを1年ごとに入れ替えることで、特定の担当者だけに取り組みを任せず、社内へ知見や考え方を広げる仕組みをつくっています。
また、「活力×基盤のWell-being経営」を掲げ、病気にならないことだけではなく、より活力を持って働ける状態を目指しています。役員や部長、課長層を対象とした「レジリエンスプログラム」など、管理職を巻き込んだ施策も進めています。
ウェルビーイング経営では、方針を決めるだけでなく、情報を従業員へ届ける、対話の機会をつくる、感謝や取り組みを共有するといった日々の運用も必要になります。こうした組織づくりを支える選択肢の一つが、組織改善クラウドです。
組織改善クラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」は、社内の情報共有やコミュニケーション、称賛、申請などを一つのアプリケーションでまるごと運用できるサービスです。ウェルビーイング経営そのものを実現するサービスではありませんが、情報が届かない、拠点間のつながりが弱いといった組織課題に対して、施策を運用する仕組みとして活用できます。
ここでは、TUNAGを使いながら理念浸透や情報共有、社内コミュニケーションなどに取り組んだ5社を紹介します。
株式会社ウェルカムは、食とデザインの2軸で「DEAN & DELUCA」や「GEORGE'S」「CIBONE」など、複数のライフスタイルブランドを展開しています。事業や組織の幅が広がるなかで、経営の想いを従業員へ届けにくいことが課題になっていました。
同社はTUNAGを導入し、グループ全体へ経営理念や方針を伝える仕組みを整えました。2020年7月に行動指針をリニューアルした際には、紙のクレドカードから、TUNAG上で理念と行動指針を確認できる形へ変更しています。
その結果、従業員がスマートフォンからいつでも理念や行動指針を確認できるようになりました。プロフィール登録率は95%を超え、新入社員にも利用が広がっています。
休業期間後に開催した社員総会「ウェルカムキャンプ」では、約550名の社員が今年の宣言をTUNAGで発信し、コメントによる交流も生まれました。従業員からは、緊急事態宣言中に仲間とのつながりを感じられたという声も紹介されています。
「緊急事態宣言でも仲間と繋がれた事が心強かった」従業員2,000名に代表の想いが届き、繋がりを生んだコミュニケーション施策 | TUNAG(ツナグ)
アドベンチャーワールドを運営する株式会社アワーズは、「こころでときを創るSmileカンパニー」という企業理念のもと、理念経営を進めています。一方で、既存ツールでは理念を日常の仕事へつなげにくいという課題がありました。
そこでTUNAGを導入し、全社でサンクスカード制度を運用しています。投稿ルールを「Smileを創れるものであること」とし、従業員が理念に沿った行動や出来事を共有できるようにしました。
また、チームごとのブログ制度も設け、現場から発信しやすい環境を整えています。経営側は、誰がどのような投稿をしているかを確認でき、組織全体の動きを把握する材料としても活用しています。
同社では、理念を自分の言葉で語る従業員が増えたことや、コミュニケーションの変化が紹介されています。テレワークや臨時休園の際にも、TUNAGを見ることで会社とのつながりを感じたという声がありました。
従業員のSmileを創り出すアドベンチャーワールドの理念経営とTUNAG活用例
株式会社Francfrancは、正社員約700名を抱え、本社と店舗の情報共有や店舗スタッフ同士のコミュニケーションが一方通行になりやすいという課題を抱えていました。また、個人向けチャットアプリを使った情報共有では、業務情報を扱ううえでの懸念もありました。
同社はTUNAGを導入し、本社から店舗への発信だけでなく、店舗側からも情報を返せる仕組みを整えています。申請機能や承認フローも活用し、社内コミュニケーションだけでなく日々の業務にも利用範囲を広げました。
同社の事例では、業務効率化を進めるなかで本社運営の人員を250名から150名へ見直しながら、売上、利益ともに創業以来最高の実績で推移したと紹介されています。ただし、これらの成果はTUNAG単独の効果ではなく、同社が進めた複数の業務改善を含めて捉える必要があります。
2021年10月からは時間勤務社員1,500名にも利用を拡大し、約2,000人規模で運用しています。称賛や成功体験を共有する仕組みとしても活用し、本社と店舗を含めた情報共有の改善を進めています。
「本社と店舗の情報共有が双方向になり、社員の生産性が上がった」風通しのよい会社の実現を目指す方法 | TUNAG(ツナグ)
株式会社WDI JAPANは、「カプリチョーザ」「ハードロックカフェ」「サラベス」など25以上のレストランブランドを展開し、日本国内外で160店舗以上を運営しています。
店舗やブランドごとに情報が完結しやすく、それぞれが別の会社のような状態になっていたことが課題でした。そこでTUNAGを導入し、ブランドを越えて会社全体の情報を共有できる環境を整えています。
テレビや雑誌で店舗が紹介された情報を共有する「パブリシティトピック」や、代表が発信する「TOP MESSAGE」などを通じて、各ブランドの従業員が会社全体の動きを知れるようにしました。
また、「地域一番店プロジェクト」では、各店舗の取り組みや成功事例を共有しています。店舗スタッフからも現場の情報が自発的に投稿されるようになり、ブランドを越えて他店舗の取り組みを知る機会が生まれています。
「ブランドを超えた社内広報」を実現。カプリチョーザなどを展開するWDI JAPANの社内コミュニケーション事例 | TUNAG(ツナグ)
株式会社Eグループは、「みんなが笑顔になる介護の実現」という経営理念のもと、愛知県で有料老人ホームや訪問介護、看護など25の事業所を展開しています。約320名のスタッフが働くなか、事業拡大やコロナ禍によって代表が各施設へ足を運ぶ機会が減り、会社の思いや感謝を直接伝えにくくなっていました。
そこで、代表とスタッフの距離を埋めるためにTUNAGを導入しています。5名の担当者を中心に運用し、マネージャー以上の約20名を「社内インフルエンサー」に任命しました。
利用を定着させるため、毎朝の検温報告をTUNAGで行う運用から始めています。その後、地域の清掃活動や各拠点での取り組み、イベントなども共有するようになりました。
同社では、TUNAG上の発信を通じて代表の考えが従業員へ届きやすくなり、スタッフからも利用を前向きに捉える声が紹介されています。日々使う業務と情報共有を同じ環境に置いた点は、利用を定着させるうえで参考になるポイントです。
「みんなが笑顔になる介護」を目指して:代表とスタッフの距離を埋めた、Eグループの社内コミュニケーション | TUNAG(ツナグ)
事例を見ても、ウェルビーイング経営の施策は一つではありません。健康面に課題がある企業と、情報共有や人間関係に課題がある企業では、見直す内容が異なります。
主な取り組みとして、次の4つが挙げられます。
従業員が働き続けやすい職場をつくるには、制度だけでなく、実際に仕事をする環境も確認します。業務量が多すぎる、休憩を取りにくい、集中しにくいといった問題があれば、まずその原因を見直します。
オフィス勤務であれば、集中する場所と会話する場所を分けるなど、仕事の内容に合わせて環境を整える方法があります。デスクや椅子なども、長時間の作業で過度な負担がかからないものを選ぶことが考えられます。
ただし、設備を新しくすること自体が目的ではありません。従業員がどの場面で働きにくさを感じているのかを確認し、その原因に近いところから改善することが大切です。
勤務時間や働く場所に選択肢を持たせることは、従業員が生活と仕事を両立するための支援になります。テレワークやフレックスタイム、時短勤務など、自社の業務に合う制度を検討します。
福利厚生では、健康診断への補助や健康支援、育児、介護を支える制度などが選択肢になります。ただし、制度を用意していても、対象者が知らない、申請しにくい、利用すると周囲へ負担がかかると感じる状態では使われにくくなります。
制度の数を増やすだけでなく、誰が利用できるのか、利用しやすい運用になっているかまで確認してください。
仕事を進めるうえで相談しにくい、必要な情報が届かないといった課題がある場合は、コミュニケーションの方法を見直します。
例えば、1on1を設ける、部署を越えて情報を共有する、感謝や貢献を伝える仕組みをつくるなどの方法があります。社内SNSやチャットツールも、離れた拠点や店舗を含めて情報を届ける手段として活用できます。
大切なのは、交流を増やすこと自体ではありません。必要な情報が届く、相談できる、仕事上の貢献を認め合えるなど、自社で改善したい状態に合わせて施策を選びます。
施策を選ぶ前に、従業員がどこで働きにくさを感じているのかを把握します。組織サーベイは、そのための方法の一つです。
サーベイでは、満足度だけを見るのではなく、自社で改善したい課題に合わせて質問を設定します。例えば情報共有が課題なら必要な情報を得られているか、上司との関係が課題なら相談しやすいかを確認します。
結果を集めた後は、数値を見るだけで終わらせず、改善する課題を決めて施策へつなげます。実施後も同じ項目を確認すれば、当初の課題に変化があるかを見やすくなります。
こうした職場の状態を把握する選択肢の一つが、エンゲージメントサーベイ「TERAS(テラス)」です。TERASは、TUNAGで培ったエンゲージメント向上支援のノウハウをもとに、多角的な質問から組織の状態を確認するサービスです。
実際の企業事例からも分かるように、ウェルビーイング経営には決まった一つの施策があるわけではありません。健康面を支える企業もあれば、情報共有や理念浸透、従業員同士のつながりを見直す企業もあります。
他社の事例を参考にするときは、施策だけを真似するのではなく、「どのような課題があり、なぜその取り組みを選んだのか」を確認してください。自社の課題と原因が異なれば、必要な施策も変わります。
まずは、従業員がどこで働きにくさを感じているのかを整理しましょう。そのうえで、働く環境、制度、コミュニケーションなど、原因に近いところから見直します。情報共有や称賛、社内施策の運用を継続する仕組みが必要な場合は、TUNAGのような組織改善クラウドを活用する方法もあります。
施策を始めた後は、導入した事実だけで判断せず、対象となる従業員に使われているか、当初の課題に変化があるかまで確認してください。他社の成功事例をそのまま再現するのではなく、自社に合った取り組みを積み重ね、働き続けやすい職場づくりにつなげていきましょう。