多店舗展開のメリット・デメリット、失敗させないポイントと3社の事例も紹介

多店舗展開とは、店舗ビジネスを成長させる戦略のひとつです。

スケールメリットを活かした大幅な売上アップやブランド力向上などが期待できますが、運営経費負担増や従業員教育などの問題も発生します。

この記事では、多店舗展開のメリット・デメリットを解説し、多店舗経営に取り組む企業の事例も紹介します。

多店舗展開とは

多店舗展開とは、店舗ビジネスにおいて店舗を複数出店する戦略です。

店舗ビジネスには、一度成功するビジネスモデルを構築できると、他地域でも同様の成功を得られる可能性が高いという特徴があります。例えば、ファーストフードやコンビニエンスストアなどが多くの出店を行っているのは、この特徴を活かしたビジネス戦略を展開しているためです。

店舗を多数出店すればより多くの商圏や顧客を獲得でき、売上や利益の大幅な拡大を図れるというスケールメリットが発生します。

多店舗展開の種類

多店舗展開には、主に直営店展開とフランチャイズ展開の2つの方法があります。それぞれの展開方法にはメリットやデメリットが存在するため、事業規模や戦略に合わせた選択が大切です。
ここでは、これらの多店舗展開方法について解説します。

直営店展開

直営店展開とは、自社が主体となって複数の店舗を運営する方法です。

直営店展開のメリットは、自社で店舗やスタッフを用意するため、商品やサービスの品質管理やスタッフ教育を行いやすいことです。また、店舗の売上がすべて自社の売上となるため、収益性の高い運営ができると利益も大きくなります。

デメリットとしては、出店時の設備投資や運営コストが多額になるため、収益性が低くなると大きな赤字につながる可能性があげられます。

直営店展開は、企業にとってハイリスクハイリターンになりやすい戦略です。直営店展開を行う場合は、資金計画や市場調査などを綿密に行い、リスクに備える対策が必要です。

フランチャイズ展開

フランチャイズ展開とは、自社の店舗運営ノウハウを加盟店に提供し、自社以外の運営主体でで出店を図る戦略です。加盟店は店舗運営ノウハウの対価として、加盟金やロイヤリティをフランチャイズ本部に支払います。

フランチャイズ展開のメリットは、出店に関わる設備投資やスタッフ雇用を加盟店が行うため、本部の負担が小さくなり、短期間で多くの出店が行えることです。また、運営に関わるコストも加盟店負担となるため、本部の利益率は高くなります。

しかし、フランチャイズ展開には商品やサービス、スタッフの管理などを本部でコントロールしにくくなるというデメリットがあります。それにより、運営意識の低い加盟店で重大な問題が発生し、チェーン全体のブランドイメージの低下につながる場合もあります。

多店舗展開の3つのメリット

多店舗展開は店舗数とともに売上が増えるだけでなく、多店舗展開ならではのメリットが発生します。
ここでは、同多店舗展開するメリットについて解説します。

1. 認知度アップ

店舗数が増えることで、お客様が店舗や商品を見かける機会が増え、認知度が上がります。人間には「ある刺激に触れる回数が増えるほど、それを好きになっていく」という単純接触効果があります。この心理効果が働くことで、多くの人は無意識に店舗へ親近感を抱くようになり、お客様の来店を促しやすくなります。

特に店舗を新規オープンした場合は、認知度の差が開店当初の売上に大きな影響を与えます。認知度が高い店舗の場合、オープン当初から単純接触効果が働いているお客様の来店が見込めるため、安定的な売上を想定できます。そのため、新規出店リスクが減少し、ますます出店しやすくなるという好循環が生まれます。

参考記事:日本心理学会『繰り返し接しているうちにどんどん好きになるのはなぜ?』

2.仕入れコストの削減

多店舗展開を行うと、商品の仕入れコストを削減することが可能です。通常、仕入れは取り扱う量が多くなるほど単価を安くなります。多店舗展開して仕入れをまとめることで、仕入れ単価を減少させて利益率の向上が期待できます。

さらに、仕入先への影響力が高まれば、チェーン独自の季節商品や限定商品への協力も要請できるという二次的なメリットも発生します。

3.リスクの分散

店舗型ビジネスは、立地や競合関係など周辺環境の影響を受けやすいビジネスです。もし展開した店舗が少数の場合は、ある店舗が周辺環境の影響から赤字になると、経営に深刻な影響を与えてしまいます。

しかし、多店舗展開の場合は、店舗間で収益を支え合えるため、特定店舗の赤字を他店舗でカバーできます。これは、経営のリスク分散につながり、比較的、安定した店舗経営を行うことが可能です。

多店舗展開の3つのデメリット

多店舗展開には大きなメリットがありますが、一方では注意すべきデメリットもあります。このデメリットへの対処が後手に回ると、経営上大きな痛手を被る可能性があります。
ここでは、多店舗展開で注意すべきデメリットについて解説します。

1.店舗管理の負担が増える

店舗数が増えれば増えるほど、店舗管理が複雑化し、本部の負担も増加します。

チェーン全体が一定レベルの商品やサービス品質を維持するためには、店舗管理機能の存在は不可欠です。しっかりとした店舗管理機能を構築することで、チェーン全体のブランド価値や顧客体験を確保できるようになります。多店舗展開の際には、店舗管理の仕組みを整えていくことが重要です。

関連記事:店舗マネジメントとは?店長と本部の2つの視点から、必要スキルや成功ポイントを解説
関連記事:スーパーバイザーとは?店舗開発経験者が解説

2.人材の確保と育成

店舗が増えると、必要となる人材も増加します。また、高品質のサービス提供を維持し続けるためには、人材の育成も欠かせません。

人材の確保と育成には相応の時間とコストがかかります。人材不足や育成不足によりサービスの品質が低下すると、顧客の信頼を失うだけでなく、経営の失敗リスクも高まります。

店舗ビジネスでは人手不足に悩む企業も多く、採用や教育の計画を見据えた上で店舗展開をしていくことが重要です。

関連記事:アルバイト教育のポイント5選と重要性を解説

3.経費が増加する

店舗ビジネスでは、物件、商品、設備投資、人件費など、様々な経費が発生します。店舗数が増えるほど、これらの経費も増加します。

安定した経営環境下では大きな問題になりにくいですが、経営環境が悪化すると、これらの経費が大きな負担となる可能性があります。このようなリスクを避けるためには、日頃から店舗作業や物流、仕入れなどの効率化を図り、経費の低減を図ることが大切です。

多店舗展開を失敗させないポイント3選

多店舗展開は、店舗型ビジネスを大きく成長させるのに有効な戦略ですが、運営がうまくいかなければ、失敗してしまう可能性もあります。
ここでは、多店舗展開を失敗させないためのポイントを解説します。

1. マニュアルを整備する

複数店舗を運営すると、働くスタッフの人数も増加していきます。スタッフの人数が増えるほど、教育するために必要な時間や人員も増加していきます。

マニュアルがしっかりと整備されていれば、全てのスタッフに均一な教育を行うことができます。チェーン店でサービス品質を保つためには、スタッフの教育が不可欠です。教育がきちんとできていなければ、サービスの質が低下し、顧客からの信頼を失うリスクもあります。

マニュアルを整備する際には、オンラインでのマニュアル共有がおすすめです。オンラインでマニュアルを整備することで、追加や修正を素早く行えます。最新の情報を全店舗スタッフへ迅速に通知でき、業務効率化や品質向上につながります。オンラインでは、動画マニュアルも作成することができます。これまで口頭で伝えていた内容を動画で共有することで、教育に必要な人員を削減できます。

関連記事:動画マニュアルの事例6選、共有方法、作り方

2.本部と店舗の連携を強化する

本部と店舗は、ビジネスにおいて異なる考え方が求められるため、両者間で意識のズレが生じることが多々あります。本部はマクロ思考でチェーン全体の最適化を追求し、店舗はミクロ思考で現場の最適化に注力する傾向があります。しかし、チェーン店全体が大きなパフォーマンスを発揮するためには、本部と店舗のしっかりとした連携が欠かせません。

本部と店舗が連携を強化するには、店舗経営における情報や意識を共有することが鍵となります。これには、スーパーバイザーや店長などのマネジメント職が、とても重要な役割を果たします。彼らは本部と店舗の橋渡し役として情報や方針を適切に伝え、現場の声や課題を本部にフィードバックする役割を担います。

最近では、ITツールを導入して、本部と店舗の情報共有を強化している企業も増えてきています。企業の目指す方向性や情報、現場での出来事などを共有することで、「本部が現場を知らない」「現場の社員が情報を知らない」といった課題を解消することができます。
本部と店舗での情報共有ができる環境を整えることで、お互いの立場や果たすべき役割の理解につながります。

3.コスト管理を徹底する

複数店舗を経営していると、コストの管理についても複雑化して難しくなります。一見、小さなコストに思えても、店舗全体で考えると大きなコストとなる場合があります。

例えば、ペーパータオルなどの消耗品費は一店舗あたりでは少額ですが、全店舗で使うとかなり大きな金額になります。そのため、各店舗がコスト意識の低い使い方をしていたら、チェーン全体では大きな損失につながるかもしれません。

一方、ある業務でコストの効率化を達成できれば、その効果は全店舗に波及します。だからこそ、原材料の仕入れや物流コストの見直し、労働力の削減や効率化、光熱費や消耗品費の削減などを徹底することが大切です。
また、チェーン全体のコスト管理能力は、商品やサービスの価格競争力にもつながります。コスト管理は多店舗展開にとって、とても重要な課題と認識しましょう。

多店舗経営の課題解決に取り組む企業の事例3選

多店舗経営には様々な課題が存在し、数多くの企業がこれらの課題に取り組み、解決策を見い出しています。
ここでは多店舗経営の課題解決に取り組み、大きな成果を生み出した企業の事例を紹介します。

1. 株式会社木曽路




株式会社木曽路は日本料理を中心に約190店舗を展開する飲食店チェーンです。同社では飲食店特有の不規則なシフト勤務により、店舗内での情報共有が難しいという課題を抱えていました。
従来は、「伝達ノート」によって情報共有を図っていましたが、思うような効果を得られませんでした。

そこでTUNAGを導入し、店舗へのお願いや業務連絡、好事例の紹介をスタッフのスマートフォンに配信することで、スタッフが情報を素早く共有できるようになりました。また、動画や写真を利用したマニュアルによって、スタッフ教育のスピードも向上しています。

TUNAGの導入により、パートやアルバイトの従業員にも情報が行き渡り、「知らない」という状況が減少しました。また、共有された情報を元に、全店舗での品質統一やサービス向上が実現されています。

多店舗展開を行う企業にとって、情報共有や教育のスピードアップは重要な経営課題です。同社の情報の迅速な共有や教育の効率化という事例は、多店舗経営における課題解決の一つの手法として参考になるでしょう。

関連記事:「不規則なシフトでも情報が行き渡る」木曽路が実践する、パート・アルバイトを含めた情報共有

2.株式会社ハンズ




株式会社ハンズは、暮らしに根ざした幅広い商品を取り揃えた小売店を、国内外に94店舗展開しているチェーン店です。同社は店舗スタッフの情報共有に社内イントラネットを活用していましたが、閲覧用の店舗PCで順番待ちが発生し、店舗スタッフの情報共有が思うように進んでいませんでした。

そこで、店舗スタッフに配布していたスマートフォンを活用して、情報共有を図るためにITツール「TUNAG」を導入し、タスク依頼、売り場ごとの共有連絡、商戦計画の一覧化、メディア掲載情報の発信などに活用しました。

これにより、店舗内での進捗状況を共有できるようになり、タスクの完了率が向上しました。また、TUNAGを介してスタッフ同士のコミュニケーションが促進され、スタッフの責任感アップに繋がりました。

多店舗展開を行う企業にとって、情報共有やタスク管理による業務の効率化は、経営基盤の強化につながる重要な課題です。TUNAGの導入により、全店舗の運営の効率化に成功したという事例は、多店舗経営における課題解決の参考になるでしょう。

関連記事:ハンズが取り組む、本部と店舗の「情報共有」と「タスク管理」をスマホアプリで効率化する方法

3.株式会社ポムフード

株式会社ポムフードは、オムライス専門店「ポムの樹」を、全国に94店舗(FC店含む)展開しているチェーン店です。同社ではパート・アルバイトの入社手続きが紙ベースで行われていたため、書類不備や差し戻しに多くの時間を費やしていました。

また、社長の方針やお客様のクレームを、本部から店舗へ電話やメールで連絡していましたが、店舗スタッフに情報がうまく伝わらないという課題も抱えていました。そこで、ポムフードは現場スタッフへの情報共有と入社手続きの効率化を目的として、ITツール「TUNAG」を導入しました。

TUNAGのアプリ上で必要な情報や書類の提出が可能となったことで、書類のやり取りによる無駄な待ち時間がなくなり、パート・アルバイトの入社手続きが効率化されました。



また、同社では、カジュアルな日報「現場なう」というコンテンツを利用し、店舗を超えたコミュニケーションを活性化を実現しています。さらに、社長からの発信に対してアルバイトの方がコメントをするなど、経営層と現場スタッフとのコミュニケーションも生まれるようになりました。

飲食業においては、経営陣、本部、店舗間でのコミュニケーションや情報共有がとても重要です。TUNAGの導入により、入社手続きの効率化やスタッフ間のコミュニケーションが活性化し、組織全体の円滑な運営に貢献したという事例は、飲食業界の課題解決に役立つ手法として参考になるでしょう。

関連記事:パート・アルバイトの入社手続きをペーパーレス化:「ポムの樹」がアプリで実現した、業務効率化&スムーズな情報共有

まとめ

多店舗展開は、店舗型ビジネスを大きく発展させるビジネスモデルです。しかし、このビジネスを成功させるには、本部と店舗のいかに上手く連携できるかが、とても重要な課題です。

多店舗展開には勤務時間と勤務地という時間と空間の壁が存在します。この壁を乗り越えるためには、ヒト、モノ、情報の仕組みを上手に構築して、本部と店舗が情報と考え方を共有し、チェーン店全体が同じ方向に向かって進むことが大切です。

多くの店舗を運営するからこそのメリットとデメリットを理解し、多店舗に必要なノウハウや仕組み作りを進めることが、多店舗展開を成功させるステップになります。

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