強い組織に不可欠な「現場力」を向上させる4つのポイント
現場力は、企業が競争力を維持し成長を続けるための基盤となる重要な要素です。
しかし昨今は、業務外注や非正規社員の増加、急速なグローバル化やIT化による技術の変化、本社と現場のコミュニケーション不足など、現場力を低下させる要因が多様化している現状があります。
多くの企業が現場力を高める必要性を認識しながらも、
- 具体的にどのような施策を実行すべきか分からない
- 本社と現場の連携が取れず、一体感が不足している
- 他社で現場力を高めた事例をもとに、自社で活かせる改善策を探している
といった課題に直面しているのではないでしょうか。
この記事では、現場力が重要視される背景を紐解きながら、現場力を向上させるための具体的なポイントや、実際に現場とのコミュニケーションを活性化させた企業の事例を紹介します。自社の現場力向上のヒントとして、ぜひお役立てください。
現場力が重要視される背景
従来、日本企業は製造業を中心に高い現場力を持ち、日本の産業を支えてきました。昨今、現場力の向上が求められるようになった背景としてはどのようなことが挙げられるのでしょうか。
業務外注や非正規社員の増加
現場力の重要性が浮き彫りになる要因として、業務外注や非正規社員が増加したことなどが挙げられます。
日本では90年代初頭から続く経済の低迷の影響で、多くの企業がコスト削減のために業務の外注や非正規社員の雇用を進めてきました。この影響により、現場で働く社員は減少し、これまで現場を支えてきた世代の退職も重なることで、これまでの技術が受け継がれずに現場力が低下していると考えられています。
グローバル化やIT化による技術の変化
グローバルな市場競争や急速なIT化により、市場の変動が激しさを増しています。このような環境変化に対応するためには、企業内の現場が主体的に行動し、変化に素早く適応できる現場力が不可欠です。
従業員が現場で主体的に行動し、変化に対応できる能力を高めることは、企業の持続的な成長につながります。迅速な意思決定や適応力を備えた現場は、競争力を維持し、新たな機会を迅速に活用することができます。
本社と現場のコミュニケーション不足
上記のような従来からの環境の変化に現場を対応させるには、本社と現場のコミュニケーションが重要です。しかし、本社と現場とのコミュニケーションに課題を抱えている企業が多く、本社での施策の真意が現場へ届いていなかったり、反対に現場の声が本社へ届いていないという事象が発生しがちになります。このような本社と現場のコミュニケーション不足により、外部の変化に対応しきれず、現場力の低下に繋がります。
現場力を向上させる4つのポイント
組織の現場力を高めるためには、具体的にどのような点を押さえておくといいのでしょうか。
ここでは、現場力を向上させるポイントを4つご紹介します。
ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)を現場に届ける
ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)は、会社の方向性や存在意義を示すものです。MVVを定めることで、会社がなんのためにビジネスを行っているのか、どんな目的を果たすために存在しているのかを示すことができます。
MVVを現場に浸透させることは、現場力を向上させるポイントとして極めて重要です。MVVを現場に共有することで、経営と現場の社員それぞれに共通認識が生まれ、どのような行動をすべきか理解できるようになります。その結果、現場の社員は主体的で一貫性のある行動を取ることができます。
関連記事:MVVとは?作り方、企業事例7社、3つの浸透方法を解説
マニュアルやノウハウを共有する
マニュアルやノウハウを共有することは、新入社員を効率的に教育できるだけでなく、既存の社員も改めて業務の見直しができたり、ノウハウを吸収して業務の改善が行われやすくなったりします。
マニュアルやノウハウは、ドキュメントや動画として業務に関連するすべての社員とオンラインで共有することが有効です。口頭での共有は属人的になってしまい業務も可視化されません。マニュアルをいつでも見返すことができる仕組みづくりが重要です。
意見を発言できる環境の構築
現場力を高めるためには、従業員が自由に意見を述べることができる環境を整備することが不可欠です。従業員が自身の考えや提案を気軽に共有できる環境が整うと、新たなアイデアや問題解決策が生まれやすくなります。
こうした環境は、創造性や協力心を育むだけでなく、従業員のモチベーションを向上させ、現場全体の成果に寄与します。
リーダーシップやコミュニケーションスキルの向上にも注力し、意見を尊重する文化を醸成することが重要です。
本部や経営層と現場のコミュニケーション促進
ボトムアップ型の経営を推進し、本部や経営層と現場のコミュニケーションを強化することも重要な要素です。
現場の従業員は、日々の業務や課題に関する貴重な情報を持っています。そのため、経営層が現場の声に耳を傾け、フィードバックを受け入れる姿勢が現場力の向上につながります。
ボトムアップのアプローチによって、現場の意見やアイデアを組織の戦略に反映させることができ、従業員の意欲や自己実現が促進されるでしょう。
関連記事:ボトムアップの意味とは?トップダウンとの違い、メリット・デメリットを2つずつ解説
関連記事:現場の声を集めるために必要な4つの要素
現場力向上に取り組む際の注意点
組織で現場力の向上に取り組む際には、いくつか注意しておくべき点があります。
現場力を高めるには時間がかかる
現場力を向上させるためには、短期的な成果を求めるのではなく、長期的な視点で取り組む必要があります。
従業員のスキルやマインドセットを変革し、新たな行動様式やコミュニケーションを確立するには時間がかかることがあります。徐々に進化させながら、組織全体の文化として根付かせることが大切です。
経営と現場が一体となった持続的な取り組みが必要
現場力向上には、経営陣と現場従業員との連携が欠かせません。単発的な取り組みではなく、経営層と現場が一体となって継続的に取り組むことが成功のカギと言えるでしょう。
経営層が現場の声に耳を傾け、意見交換やフィードバックを行うことで、従業員は自身の役割や貢献の重要性を実感し、現場力向上への意欲が高まります。経営層のリーダーシップと従業員の積極的な参画が連動し、組織全体の変革が促進されます。
現場とのコミュニケーション活性化の事例4社
実際に、企業では現場力向上のためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。現場とのコミュニケーションを活性化させている企業の事例を4社ご紹介します。
株式会社BP
ウェディング事業を中心に幅広いサービスを展開する株式会社BPでは、コミュニケーションツール「TUNAG」を活用して、サンクスカードを中心に従業員の頑張りを褒める取り組みを積極的に行っています。現場の従業員も使いやすいようスマホで運用し、アルバイトがインフルエンサーとなることで、多くの従業員に活用してもらえる工夫をしています。表彰制度にも紐づけ、感謝を伝える行為そのものも評価するようにしています。
また、「ラポール」というホスピタリティの専属スタッフを育成しています。ラポールのスタッフは「当日、お客様に向けてこういう行動を起こせた」「こういうことで困りそうだったからこういう行動をした」というようなホスピタリティの内容を全社に共有しています。
実際の事例が全社で共有されることで、その他のサービスのスタッフが吸収して全体としてのホスピタリティの向上に繋がり、営業部の社員も自社のサービスを自信を持って勧められるようになっています。また、投稿にコメントなどが送られることで、ラポールの人たちもより頑張ることができるなど相乗効果が生まれています。実際に、結婚式場の口コミサイトでは、ラポールの取り組みが書かれ、ランキングが12位から1位になった事例もありました。
関連記事:アルバイト定着率が30%改善、3ヶ月で300名採用:BPが「友達に紹介したくなるバイト先」を作るまで
株式会社木曽路
しゃぶしゃぶ・日本料理の「木曽路」などを運営する株式会社木曽路では、現場で働くパート・アルバイトとの情報共有に課題を感じていました。勤務時間が不規則な従業員が多く、出勤していない間にメニューやルールが変わってしまうということが発生しており、サービスレベルの低下につながってしまう懸念がありました。
会社の公式のコミュニケーションツールとして「TUNAG」を導入し、本社を含む全社の動きがパート・アルバイトの従業員に届くようになりました。各店舗でいい事例があった場合には、TUNAGで共有され、店舗間で刺激を与え合い、特に発信の多い店舗では業績も良好で従業員の意識も高くなっています。
また、冊子のマニュアルだけでなく、所作や動作などのマニュアルを動画や写真で共有することで、教育スピードが早くなり、教育を受ける側にもわかりやすく伝わるツールとなっています。
関連記事:「不規則なシフトでも情報が行き渡る」木曽路が実践する、パート・アルバイトを含めた情報共有
株式会社ポムフード
オムライス専門店「ポムの樹」を展開する株式会社ポムフードでは、全国で店舗を展開していることで、会社の想いや進むべき方向を全従業員で共有できていないことが課題でした。
コミュニケーションツール「TUNAG」を導入し、全従業員が気軽に投稿できる「現場なう」というカジュアルな日報を運用しています。この日報により、店舗を超えたコミュニケーションが促進され、本部としても現場でどんなことが起きているのかを周知することができるようになりました。実際に、コメントでのコミュニケーションが発生しており、本部と店舗、店舗間でのつながりが生まれました。
関連記事:パート・アルバイトの入社手続きをペーパーレス化:「ポムの樹」がアプリで実現した、業務効率化&スムーズな情報共有
株式会社ウインナー美容室
愛知県名古屋市に本店を構え、県内に美容室を4店舗展開している株式会社ウインナー美容室では、各店舗への発信、動画マニュアル、店舗日報などをコミュニケーションツール「TUNAG」で行っています。
店舗日報では、各店舗代表者が営業状況やスタッフの頑張り、お客様の声などを日々投稿しています。また、社長からは、会社の方針の発信と業務外も含めた自由な発信の2つの目的で分けて発信する工夫をして、現場と経営の双方向でのコミュニケーションが行われています。
教育面でもTUNAGを活用しており、接客マニュアルやカット講習の動画を講習前の事前学習として共有し、学習効率を高めています。また、プロジェクトチームで講習の状況などを従業員全員に共有することにより、投稿を見た従業員からの声掛けや互いに刺激がもらえるなどの相乗効果が出ています。
このような取り組みにより、各店舗での従業員の頑張りが可視化されて声掛けが行われたり、若手が情報に触れる機会が増えたことによって成長スピードが向上しました。
関連記事:店舗が離れていても情報はタイムリーに共有、意見を出し合える環境を大切にする - ウインナー美容室のTUNAG活用事例
まとめ
今回は、現場力を高めるポイントや注意点、企業の具体的な事例について解説しました。組織の中で現場力を高めるためには、従業員が主体的に関与し、熱意を養う機会を提供し、その意識が浸透していくような環境を整備する必要があります。
現場力を向上させる際には、前述したポイントを参考にし、長期的な展望を持ちながら継続的な取り組みを推進していくことが重要です。