従業員エンゲージメントとは?向上施策や事例をご紹介
近年、従業員エンゲージメントの向上に取り組む企業も増え、国内でも広く認知されるようになってきました。人材の流動化やワークモチベーションなどの価値観の多様化、リモートワークの普及など、外部環境が目まぐるしく変化する現代において、同じ会社で生産性高く働き続けてもらうためには、従業員エンゲージメントが非常に重要になってきています。
しかし、具体的にどのように従業員エンゲージメントを高めれば良いのか、悩まれている方が多いのではないでしょうか。
本コラムでは、従業員エンゲージメントの意味や向上させるための施策、事例をご紹介させていただきます。
従業員エンゲージメントとは
従業員エンゲージメントとは、「従業員が会社の目指す方向性(企業理念)に共感し、自発的に会社へ貢献したいと思う意欲」のことを指します。言い換えると「従業員と会社間の信頼関係」と言えます。従業員と企業が互いに深い繋がりや信頼関係を持ち、貢献しているか」を表す指標として使われることが多くあります。
従業員エンゲージメントが近年注目されるようになった背景には、人材の流動化や個人の価値観の多様化、終身雇用採用企業の減少に代表される日本型雇用の変化などの働き方の多様化があると見られています。
少子高齢化で労働人口が減少していくなかで、企業の成長を止めないためには、優秀な人材の流出を防ぎ、定着化させる必要があります。そのために社内従業員エンゲージメントを高めることが注目されているのです。
ただ、エンゲージメントは企業にとって指標が異なる曖昧なものなので、自社にとって「エンゲージメントとは何かを定義することが重要です。
そもそもエンゲージメントとは
エンゲージメント(engagement)とは、直訳すると契約、債務、婚約、雇用などの意味を持ちます。
「企業、従業員、ユーザーなどが、お互いにどれくらい企業やサービスに対して深い繋がりを持っているか」を表す指標としてマーケティング用語や経営用語としても用いられます。
例えばTwitterやFacebookなどのSNSサービスの指標として使用する場合は、1ヵ月の間にどれくらい閲覧、投稿、いいねが使われたなどかを測定し数値化した物をベースに解析し、改善策を検討していきます。
従業員満足度との違い
従業員エンゲージメントと似た言葉で従業員満足度(サティスファクション)があります。
こちらはあくまでも企業に対しての満足度であり、給与や福利厚生、組織など企業側から与えられたものに対する満足度です。もちろん、満足度が高い事は離職率の抑止につながりますが、従業員エンゲージメントは従業員側からの貢献も含まれるため、意味合いが異なるのです。
▼関連記事:従業員満足度(ES)向上の事例6選!取り組みと施策も紹介
ロイヤリティとの違い
ロイヤリティ(loyalty)を直訳すると忠誠、忠実などを意味します。
愛社精神や忠誠心などの意味合いで使われますが、従業員から企業へ対して一方通行のものを指します。従業員エンゲージメントは双方向での繋がりを意味する点で、こちらも異なります。
満足度やロイヤリティが高く、従業員が企業側へ満足度が高く離職率が低くても、それが企業の業績には直結しません。
従業員エンゲージメントを向上させるメリット
優秀な人材の流出を防ぐ
「従業員エンゲージメントが高い=会社への貢献度や意識が高い」という点が挙げられます。
優秀な人材は会社への貢献度が高いため、なるべく活躍し続けてもらいたいはずです。しかし、周りの意識が低く自分だけが頑張っている状態では次第に頑張る事が辛くなり転職を考えてしまうことも。
会社全体で従業員エンゲージメントを高め、切磋琢磨して成長し、信頼関係で結ばれている関係であれば、そのようなことが少なくなります。
従業員エンゲージメント向上は、会社の雰囲気にもポジティブな影響を与え、優秀な人材の離職を防ぐ一つの要素となります。
売上向上、顧客満足度の向上
従業員エンゲージメントが高い人材は会社の指示に従って行動するのではなく、自発的に課題発見や解決に積極的に行動する事ができるため、結果として会社の売上貢献にも寄与するといえます。
会社と従業員の信頼関係が強く、ビジョンに共感し、自分自身のミッションに対してもしっかりと目的意識を持って行動する力を持つため、結果的に業績向上につながるメリットがあります。
従業員同士の良好な関係性の構築
従業員エンゲージメントが高い職場では、従業員の心理的安全を確保され、従業員同士の摩擦は少なく、お互いに助け合う関係性を構築する事が多いでしょう。
メンバーが仲間としてチームワークを発揮させるには、従業員エンゲージメントの向上は有用と言えるでしょう。
採用コストの削減
従業員エンゲージメントを図る指標として、自社で働く事やサービス、商品を家族や友人に紹介できるかがキーとなります。リファラル採用が可能となれば、採用コストも削減されます。
従業員エンゲージメントを向上させるための4つのステップ
1.現状の把握
まずはアンケートを実施するなど、現状を把握する事がファーストステップとなります。
その結果を元に従業員が会社に対して、どう思っていて、何をどのようにして改善していくかを検討、実行していきます。
参考記事:エンゲージメントサーベイとは?従業員満足度調査との違いや導入ステップについて
2.課題の抽出
アンケート結果を元に、何が課題として考えられるのかを検討していきます。
例えば、会社の中核を担っている世代が自分の成長性を感じられなくなってきているのであれば、会社側から成長の機会を与えるのも一つです。
部下へのマネジメントを学ばせたり、上級の資格取得に向けてセミナーや研修などの教育機会を設けたり、同期メンバーで勉強会を行うなど、様々な取り組みを行います。
3.課題解決のための施策を実行
問題点が分かり、その解決法を見出したら、次は実行のフェーズとなります。
単発の講習会や社内イベントで終わりにするのではなく、長期での施策を実行します。また、結果を測定するために、どのような測定方法で、何を結果として判断するのかを予め指標となる数値を決めておきます。
4.評価・改善
実行した課題に対しての結果を測定して評価します。
結果として改善傾向が見られないようであれば何が原因だったのかを検討し、改善策をまた検討します。
また改善されていない事例で多く見られるのが、制度設計だけを行なって従業員に浸透していないなどの事案も見受けられます。
参考記事:エンゲージメントとは? 向上施策や具体的なアクション例を解説
従業員エンゲージメントを向上させる施策
自社の従業員エンゲージメントについて従業員エンゲージメントはどのようにすれば高まるのでしょうか。ここでは具体的な施策を4つ紹介します。
経営理念、ビジョンを浸透させる
従業員が企業の方向性を理解し、共感することで、「企業に貢献したい」という強い想いが芽生えます。従業員エンゲージメントを高めるためには、企業としての理念やビジョンを明確にし、「顧客や社会に提供できる価値」を明らかにすることが不可欠です。これにより、従業員の賛同を得やすくなります。しかし、優れたビジョンがあっても浸透していなければ意味がありません。
そのため、Web社内報や、経営陣から自社が大切にしている価値観を共有するなどして、社員一人一人がビジョンを自分の言葉で語れるよう継続して取り組みをすることが重要です。
▼関連記事:理念浸透を促進するためのステップと成功事例を解説!
承認、称賛の文化を作る
従業員が「個人として尊重されている」と感じる環境だと、自社への貢献意欲が一層高まります。上司が部下の頑張りを認め、信頼して権限を委譲することは、従業員エンゲージメントを高める重要なポイントです。例えば、仕事を依頼する際には、「君の○○の実績や○○のスキルを信頼しているから任せるよ」といった期待の言葉をかけることで、従業員も働きがいを感じやすくなります。
さらに、従業員の頑張りを「称賛」することは、その自尊心を高め、さらなる貢献意欲につながります。具体的には、社長賞やMVP、サンクスカードなど、頑張りを従業員一体となって称賛する場を設けることで、従業員のモチベーションを一層高めることができるでしょう。
▼関連記事:「褒める文化」で人材定着率が30%向上!ポイントは「みんなの前で褒める」こと
キャリアアップの機会を提供する
従業員が成長を実感できる職場であると、従業員は「もっと組織のために働きたい」という意欲が高まります。そのため、従業員の成長を支援するキャリア開発の施策を取り入れることが効果的です。例えば、「キャリアデザイン研修」を実施して従業員に今後のキャリア設計を促したり、「管理職研修」や「中堅社員向け研修」など、階層別のOff-JTを手厚くする方法があります。
こうしたキャリア開発支援を充実させることで、従業員は「会社が自分を大事にしてくれている」と感じます。その結果、従業員の帰属意識も高まり、組織全体のエンゲージメントが向上することが期待できるでしょう。
従業員が納得する人事評価制度を設ける
正当に評価されない職場だと、従業員は組織に貢献しようというモチベーションが湧きません。従業員エンゲージメントを向上させるためには、公平で透明性の高い人事制度を導入することが重要です。例えば、成果だけでなく、「企業理念を体現しているか」や「成果に至るまでのプロセス」を評価基準に加える方法があります。これにより、評価への納得度が上がり、従業員の仕事への積極性や意欲が高まります。
▼関連記事:形だけの評価は不満を招く?組織を成長させる鍵は評価制度を納得させる仕組み
従業員エンゲージメント向上のための社内施策事例
従業員エンゲージメント向上に向けて行われた社内施策についての事例をご紹介いたします。
ジェーシービー従業員組合:従業員の意見を吸い上げ、会社に伝える
3,000名以上の従業員を抱えるジェーシービー従業員組合様の従業員エンゲージメント向上に関する事例をご紹介いたします。
企業が進んでいる方向性を全従業員が知る機会を与える事から始めました。これまでのイントラやメールでは、閲覧できる環境や時間に制約があると感じており、営業などで外出が多い従業員への不平等感がありました。
そこでいつでも閲覧ができるスマホを利用したサービスを導入する事を従業員エンゲージメント向上のための第一歩として始めました。
その上で、会社が進んでいる方向性に対して、従業員からの意見を集約したり、世の中の動きに対してどのようなアプローチをしているかなどを明示する事で従業員エンゲージメントの向上にも寄与しました。
従業員エンゲージメント向上に関する事例:「約3,000名の組合員に対して平等に」ジェーシービー従業員組合が “情報を知る環境”を大切にする理由
従業員エンゲージメント向上には長期的な取り組みが必要
働き方改革の一つとしても注目されている「従業員エンゲージメント」
従業員エンゲージメントを向上させる事は、組織の問題点を数値化し、改善させるだけでなく、従業員の意識も変化します。
離職率改善や生産性に課題を感じているのであれば、従業員エンゲージメントについて考えてみるのも有用なのではないでしょうか。
TUNAGが考える“エンゲージメント”の定義
「会社と従業員」および「従業員同士」に相互信頼関係がある状態
TUNAGでは、エンゲージメントとは、「会社と従業員」および「従業員同士」に相互信頼関係がある状態と定義を決めています。
重要なのは、「従業員同士」という横と「会社と従業員」という縦の両方の信頼関係があることです。
そして“エンゲージメントを構築していく序列”にも定義を持っています。
1)会社の理念や方向性(ビジョン)、現状の文化に立脚した「エンゲージメント(信頼関係)」を創り、維持し、拡張すること
2) そうすると、コミュニケーションの増加や、経営への信頼の増加という「状態」が現れ、それにより、従業員満足や会社へのロイヤリティ、離職防止という「結果」が出る
3)そしてこの順番で構築した会社の状態は、たとえ不景気でも負けない強い会社であり、業績や売上向上にも繋がる
図解するとこのようなイメージとなります。
この通り、TUNAGでは明確にエンゲージメントに対してその“定義”と構築する“序列”を持っています。そして自ら定義するエンゲージメントを向上する方法論として『TUNAG』というサービスの提供をしています。
ジャケット買いする感覚で「エンゲージメント向上」に取り組まないために
自社にとっての「エンゲージメント」とは何かを定義すること
エンゲージメントがホットワードになってきています。市場には様々なアプローチ方法のエンゲージメント関連のサービス、ツール、診断がありますし、今後も増え続けていくでしょう。
今回ご紹介した通り、エンゲージメントの概念は各社によって本当に異なります。少なくとも我々と同じ価値観でサービス展開をしている例はまだありません。同じ“エンゲージメント”という冠を掲げたサービスでも千差万別なんです。
だからこそ、エンゲージメント経営を取り入れる際に気をつけて欲しいのは表面的な判断で進めてしまう“ジャケット買い”をしないことです。「使いやすそう」とか、「有名企業が導入しているから」とか、「手軽にできそう」……など、決定に至る際の材料はあると思います。
何度も繰り返しになってしまいますが、エンゲージメント経営というものが一般的になる時代が近い将来待っていると思います。その時に、「エンゲージメント」という言葉の響きだけで飛びつくのは非常に危険です。なぜなら、定義がはっきりしていないものだからです。
公式な定義はありませんが、僕らは自ら定義を定め、その序列、そして価値観、エンゲージメントを高める方法に対して考え抜いて事業を進めていますし、こだわりをもっています。
自社のエンゲージメントを高めたいと考えるのであれば、まずは自社の方向性にフィットするエンゲージメントの定義を考えること、そしてその価値観に合うサービスを見極めることからはじめることがおすすめです。