飲食店のDX成功事例8選!メリットや推進する際のポイントを詳しく解説

デジタル・トランスフォーメーション(DX)が、さまざまな業界で注目されている現代。飲食業界においても多くの企業がDXに取り組み、新たな挑戦をしています。しかし、DXのメリットを理解しつつも、具体的な施策や進め方が分からずに踏み出せない経営者やDX担当者も少なくありません。

この記事では、飲食店でのDXの意味と必要性、そしてDXを成功させた企業の事例を詳しく紹介していきます。

飲食店におけるDXとは?

DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。つまり、デジタル技術の導入による業務プロセスや組織の変容を指します。

経済産業省が発表した「デジタルガバナンス・コード2.0」によると、DXは以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

上記の定義を飲食店に置き換えると、デジタル技術の導入によって組織・顧客双方の満足度の向上に繋がる変化をもたらすことが飲食店におけるDXの定義といえるでしょう。

なぜ、飲食店でDXが求められるのか?

さまざまな業種でDXが推進されている中で、飲食店においてはDX化が急務だといっていいでしょう。飲食業界は、現在多くの深刻な課題に直面しています。それらの課題を解決するための突破口となるのが、デジタル技術の導入による業務改革です。

慢性的な人手不足

モバイルオーダーやAI接客システムによって、オペレーションを効率化し、少人数でも効果的な店舗運営が可能になります。

さらに、シフト管理や予約管理システムを使えば、適切な人員配置ができ、人手不足の影響を軽減できます。こうした取り組みが、持続可能な人材活用を実現します。

必要経費の値上げ(運送コスト増加・仕入れ値の高騰など)

必要経費の値上げ、特に運送コストや仕入れ価格の高騰は、飲食店にとって利益率を圧迫する深刻な課題です。この問題には、DXを活用した効率化が効果的です。

具体的には、コスト管理ツールや価格予測システムを使って、仕入れのタイミングや量を最適化することで、経費増加の影響を最小限に抑えることができます。

人件費高騰

シフト管理システムや業務自動化ツールを導入することで、労働力を最適化し、人件費を抑えることが可能になります。例えば、AIを使った来客予測により、必要な人員配置を計画的に行うことで、無駄な人件費を削減できます。これにより、労働負担の軽減やコスト削減が実現します。

環境問題(SDGs)への対応

フードロス削減やリサイクル可能な食器の導入などの取り組みが求められます。DXを活用することで、発注管理の最適化やフードロスの削減が可能になります。

具体的には、在庫管理システムを導入することで、無駄な仕入れを減らし、食品廃棄を最小限に抑えることができます。また、エネルギー消費のモニタリングで環境負荷の低減にも貢献できます。

外食から中食への行動変容への対応

中食文化への移行が進む中で、デリバリーサービスの需要が急増しています。これにより、飲食店では効率的なオペレーションや注文管理を支えるDX対応が不可欠になっています。

デリバリーやテイクアウト専用メニューの開発に加え、デジタルツールを活用することで、新たな顧客ニーズに迅速に対応でき、売上アップや顧客満足度向上につながります。

このように、飲食店が直面している課題は人に関するものから、市場の変化・社会問題に関するものなど、多岐に渡ります。

飲食店のDX化のメリット

飲食店でDXを推進すると、業務効率化や売上アップが期待できます。グルメ外食創研の2023年の調査では、飲食店の57.7%がデジタルツールを導入し、その82.4%が「何らかの効果」を感じており、半数が売上アップに寄与したと回答しています。具体的なメリットとしては、以下のものが挙げられます。

業務効率化による人手不足解消と人件費削減

DXの導入により、業務の自動化が進みます。例えば、AIを活用した来客予測やモバイルオーダーによって、注文処理や席の管理を効率化できます。これにより、必要な人員数を減らしながら、適切な配置が可能になります。

加えて、シフト管理システムを活用すれば、効率的な労働力配置が実現し、人件費の削減にもつながります。これらの取り組みは、店舗運営の負担を軽減し、持続的な成長を支えます。

顧客情報の取得・蓄積と業務活用

DX導入により、予約情報や注文履歴、来店頻度などの顧客データを効率的に収集・分析できます。このデータを基に、顧客の好みに合わせたメニュー開発やプロモーションが可能になります。

例えば、人気メニューの改良や、特定の顧客層に向けたキャンペーンの実施で、顧客体験の向上やリピート率増加が期待できます。また、来店履歴を利用した個別のフォローアップにより、より効果的なマーケティング戦略が展開できます。

顧客満足度の向上と再来店の促進

キャッシュレス決済やモバイルオーダーの導入で、会計や注文がスムーズになり、待ち時間が短縮されます。これにより、顧客体験が向上し、「また来たい」と思わせる魅力的な店舗環境が整います。

さらに、デリバリーやテイクアウトの対応を充実させることで、店舗に足を運ばなくても利用できる利便性を提供し、再来店意欲を高めることができます。

ヒューマンエラーの軽減

予約や会計の自動化により、ヒューマンエラーの発生が大幅に減少します。これには、注文ミスや会計処理の誤り、レジ締めミスの防止が含まれます。

特に、AIを活用した予約管理システムやPOSシステムの導入により、手作業のミスを減らし、正確な業務が可能になります。これにより無駄なコストが削減され、従業員の負担も軽減されるため、業務効率化がさらに促進されます。

集客力向上と非接触サービスの提供

DXにより、効果的な集客ツールの活用が可能になります。例えば、SNSやデジタル広告を使ったターゲットに合わせたプロモーションで、来店者数を増やすことができます。

さらに、非接触サービスの導入(モバイルオーダー、キャッシュレス決済など)により、安心感のある店舗運営が実現し、感染症対策にも有効です。このような取り組みが、集客力の強化と安全な顧客体験を両立させます。

飲食店DXの成功事例7選

システム導入による業務DXの実現で、課題解決・成果に繋がった飲食企業も多くいます。その具体的な成功事例を7つ紹介します。

【業務連絡】社内の情報共有から申請手続きまで1つのアプリで実現

札幌・仙台・関東を中心に約50店舗の飲食店を運営する株式会社イーストンは、情報共有の抜け漏れや各種申請の煩雑さに課題を感じていました。それらの課題を解決する糸口となったのが、「TUNAG」の導入です。

「TUNAG」の導入により、売上日報・QSC改善報告などの店舗における情報を一元化。それによってスタッフ間の情報共有の抜け漏れがなくなったほか系列店舗間での情報共有も活発になっています。

また、さまざまな申請業務をペーパーレス化し、作業時間を大幅に短縮にも成功しました。

株式会社イーストンの場合は、「TUNAG」導入前と比較して有給の申請件数が5.8倍、申請や集計にかかる作業時間が約90%減少しました。

事例記事はこちら:有給申請のペーパーレス化で約90%の時間削減:申請承認・チャット・掲示板を1つのアプリにまとめたイーストンの事例

【社内教育】Webマニュアルで従業員の教育スピードの向上を実現

株式会社木曽路は関東から九州まで約190店舗のしゃぶしゃぶ店・焼肉店・居酒屋などを運営する企業です。同社では1店舗あたりの従業員数が50~60名ほどいるため情報共有の難しさに課題を感じていました。

そこで、勤務状態が不規則な外食産業で多くの人に情報を共有するため、「TUNAG」を導入しました。「TUNAG」を使ってパート・アルバイト用、社員用に分けて情報を発信することで、全従業員それぞれに必要な情報が届けられるようになりました。情報共有がスムーズになったことで、従業員の「知らない・聞いてない」が減ったり、ホール・調理場の壁がなくなったりして店舗に団結感も生まれています。

さらに、冊子のマニュアルだけでは伝えきれなかった細かな接客技術などを写真・動画を使って共有できるようになり、従業員の教育スピードの向上にも役立てています。

事例記事はこちら「不規則なシフトでも情報が行き渡る」木曽路が実践する、パート・アルバイトを含めた情報共有

【注文】モバイルオーダーの活用で注文数や客単価アップも実現

都内8箇所でビアバーを展開するYONA YONA BEER WORKSは、感染症対策の一環として「トレタO/X」というモバイルオーダーシステムを導入しました。顧客が自身のスマートフォンでオーダーをできるようになっただけでなく、写真や動画を使って商品の魅力をアピールすることで、注文数・客単価アップにも繋げています。

モバイルオーダーシステムを導入すると「顧客との接点が減ってしまうのでは?」という懸念があるかもしれません。しかし、YONA YONA BEER WORKSでは、注文を取る必要がないからこそ、席案内時や料理提供時、食器を下げる際などに、積極的にコミュニケーションをとるようにしています。

詳細はこちら遊び心あふれる注文体験で高まる満足度! 注文数&客単価アップも実現

【決済】多種多様な決済も一台の端末で完結

熊本県阿蘇の観光エリアに所在する阿蘇カフェティッペルは、決済システムのDX化に成功しています。「AIRペイ」という決済ツールを導入することで、クレジットカードや電子マネー、QRコードなどあらゆる決済方法を1台の端末だけで完結できるようになりました。入金サイクルが短いため、資金繰りの面でも問題はありません。

また、軽減税率制度によるイートイン・テイクアウトの税率の変化にも、「AIRレジ」が計算を簡略化してくれています。

このように、決済システムのDX化をおこなうことで、顧客満足度の向上・業務の簡略化に繋げています。

詳細はこちら阿蘇カフェティッペル様 導入事例

【会計】POSレジの導入で会計のヒューマンエラーを回避

株式会社ダイヤモンドダイニングが運営する「京町恋しぐれ 新宿 本館」は、「ユビレジ」というレジシステムを導入することで、注文・会計業務のDX化に成功しています。

レジを手入力しなくなったため、ヒューマンエラーの悩みから解放されて金額ミスはゼロに。さらに、従来のタブレットオーダーからモバイルオーダーに変更することで、タブレットの消毒や充電といった諸業務からも解放されました。

これらの業務簡略化により、1人1人の顧客にしっかりと接する余裕を確保でき、ホスピタリティの高い接客に注力できるようになりました。

詳細はこちらユビレジ導入でお客様とのタッチ数が減った分だけ、先回りした接客を心がけています

【労務管理】シフト作成や勤怠管理をアプリ一つで効率化

広島県で左官業・飲食事業・学習塾事業などをおこなう株式会社中組は、「ジョブカン」という勤怠管理システムを導入することで、業務の効率化に成功しています。従来の紙のタイムカードによる勤怠管理からクラウド管理に移行することで、手間やコストを削減し、修正や計算のミスも防止しています。

また、「ジョブカン」にはシフト作成機能も備えられています。同社では従来の手書きでの提出・エクセルでの作成という流れから、全てクラウド管理に変更しました。勤務時間と担当ポジションが一目でわかる仕様になっているため、管理者側・従業員側共にストレスフリーな環境を作り上げました。

詳細はこちら紙ベースの打刻からクラウド管理へ! ラインシフトの活用で、時間もコストも削減。

【業務連絡】社内SNSで店舗の壁を超えたスムーズな情報共有を実現 

WDI JAPANでは、TUNAG導入により、ブランドを超えた情報共有が可能になり、店舗スタッフが会社全体の動きをより理解するようになりました。通達内容の理解が深まり、社内制度の利用度が向上。

スタッフの満足度と定着率の向上に貢献し、長期的に帰属意識にも良い影響を与えています。これにより、会社全体の一体感が高まるとともに、日常業務の取り組みにも好影響が見られています。

詳細はこちら:「ブランドを超えた社内広報」を実現。カプリチョーザなどを展開するWDI JAPANの社内コミュニケーション事例

【発注】顧客データを元に、仕込みの量や人員数を適正化

ビアレストラン「キリンシティ」をチェーン展開するキリンシティ株式会社は、「TOUCH POINT BI」というツールを導入し、データを元にした来客予測やそれを元にした仕込み量・人員数の適正化に成功しています。

ツール導入以前は、キリンシティも多くの飲食店と同様に、店長やチーフの経験・勘を頼りに来客予測を立てていました。現在は、ツールによって顧客の来店時刻や各商品の出数などをデータ化し、それを元に仕込み量・シフトの調整を行っています。

ツールの導入によって業務が効率化できただけでなく、店舗責任者のマネジメントに対する意識の向上、さらにはスタッフ1人1人の自主性の向上にも繋がっているそうです。

詳細はこちら複数の部署でデータの分析・活用を実施! 会社全体のDXで構造改革に取り組む!

飲食店DXを推進する際に重要なポイント

最後に、飲食店がDXを推進する際に意識すべきポイントを3点お伝えします。

利益以上の投資を行わない

デジタルツールの導入には、初期費用やランニングコストなどの費用がかかります。それらの費用がお店の利益を圧迫してしまうと、元も子もありません。

また、デジタルツールの導入は、一朝一夕ですぐに効果が出るわけではありません。長期的スパンで捉えて継続的に成果を出していくためにも、投資額は無理のない程度に抑えることが大切です。

顧客視点に立った仕組み作りを行う

デジタルツールを導入する際には顧客目線でどう見えているのかを考えることも重要です。その検討を怠り、無計画にDXを推進してしまうと、逆に店舗に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

例えば、モバイルオーダーシステムなどを無計画に導入すると、顧客目線で見たときに「無機質すぎる」という抵抗感を生みかねません。顧客によっては「あの店員さんの接客が好きで、このお店を選んでいる」という方もいる可能性もあります。

顧客の期待を裏切らないためにも、DXによる「デジタル」の部分と、「人」にしかできない・出せない部分のバランスを十分に検討する必要があります。

全従業員がツールを活用できる仕組みを構築する

勤怠管理システムや情報共有ツールを導入する際は特に、全従業員が問題なく活用できるように仕組みを考えたり、研修をおこなったりする必要があります。その仕組みや研修制度の構築方法は、従業員の年齢層や属性によっても変わってくるかもしれません。

例えば、主婦のパートさんが多い店舗の場合は、ツールを使った情報共有などを敬遠してしまう方もいるでしょう。対象となる従業員がツールを使いこなしてもらえるよう、運用ルールの構築やマニュアルの作成、お問い合わせ窓口の開設などの柔軟な対応をする必要があります。

「導入したツールが使われない」という状況に陥らないような仕組みを整えることが重要です。

飲食店DXを推進するならTUNAG

飲食店での業務効率化や情報共有を進めるなら、TUNAGがおすすめです。TUNAGは、スマホひとつで使える多機能なアプリで、スタッフ間のコミュニケーションを円滑にし、必要な情報を迅速に伝えることができます。

また、スマホ対応により現場での利用がしやすく、スタッフの満足度向上や業務効率化に役立ちます。さらに、マニュアルや成功体験の共有がスムーズにできるので、教育の効率が上がり、店舗全体の連携も深まります。

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まとめ | 飲食店のDXを推進するためには

さまざまな課題に直面している飲食店にとって、DXの推進がその課題を解決するための鍵となります。まずは自社・自店が抱えている課題を明確にし、その課題を解決するにはどのようなツールが必要なのかを精査する必要があるでしょう。

冒頭の章で解説したように「デジタル技術の導入によって組織・顧客双方の満足度の向上に繋がる変化をもたらすこと」が飲食店におけるDXの定義です。ツールを用いて業務を簡略化した先にある目的を見失わないよう、注意しながら少しずつ取り組みましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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